令和6年(2024年) 医学部長年頭挨拶

皆様、新年明けましておめでとうございます。年頭にあたり、一言、ご挨拶を申し上げます。昨年の医学部・医学研究科の動向を振り返り、今年の抱負を述べさせていただきます。

 

1.人事

昨年、医学部・医学研究科に4名の教授をお迎えしました。昨年1月には、医化学講座に東京大学工学系研究科から鈴木健夫教授をお迎えし、昨年5月には、医学教育企画室に「ポストコロナ時代の医療人材養成拠点形成事業」実施のための特命教授として、沖縄県立中部病院から金城紀与史先生をお迎えしました。そして、昨年7月には、循環器・腎臓・神経内科学講座に、徳島大学から楠瀬賢也教授を、昨年10月には、女性・生殖医学講座に、新潟大学から関根正幸教授をお迎えしました。

 

2.教育

昨年の本学の医師国家試験合格率は、新卒が97.6%(全国82校中20位)、新卒+既卒が95.6%(同17位)で、素晴らしい結果でした。また、昨年の看護師、保健師、助産師の国家試験の合格率はすべて100%で、こちらも大変素晴らしい結果でした。一方、昨年の臨床検査技師の国家試験の合格率は71.4%で、全国平均の合格率を少し下回りました。この点については検討の余地がありそうです。また、文科省による補助金等の公募事業においては、一昨年「ポストコロナ時代の医療人材育成拠点形成事業」に採択され、昨年「質の高い臨床教育・研究の確保事業」に採択されました。医学教育モデル・コア・カリキュラムは、令和4年度に改訂され、令和6年度の入学者から適用されます。臨床実習前OSCEとCBTの共用試験は、令和5年度から公的化されました。また、今年11月には、6年ぶり2回目の医学教育分野別評価を受審する予定です。

 

3.研究

昨年、医学部・医学研究科から沢山の研究成果が発表されました。保健学科国際地域保健学分野の小林潤教授は、Tropical Medicine and Health 2023 (IF 4.3)にEditorとして特集号を企画編集され、その特集号に多国間政策比較やケーススタディー等に関する4報の論文を発表されました。先進医療創成科学講座の山下暁朗教授らの研究グループは、リボソームにおいてタンパク質に翻訳中のmRNAを回収する方法を確立し、タンパク質発現量と密接に相関するmRNA定量法の開発に成功しました(Nucleic Acids Research 2023, IF 14.9)。脳神経外科学講座の石内勝吾教授らの研究グループは、脳悪性腫瘍に対する放射線治療において、高気圧酸素療法とNMDA受容体拮抗薬メマンチン投与を併用すると、放射線治療により引き起こされる正常脳組織の放射線傷害と認知機能低下を予防できることを世界に先駆けて報告されました(Neuro-Oncology 2023, IF 15.9)。医化学講座の鈴木健夫教授らの研究グループは、RNAに糖を付加する糖転移酵素を発見し、その酵素が成長障害に重要な役割を果たしていることを世界で初めて明らかにしました(Cell 2023, IF 64.5)。

 

4.学生の取組

医療系サークルOff the Clockに所属する医学科の2年次と3年次の6名は、第9回全国医学生BLS選手権大会に参加し総合優勝しました。BLSとはBasic Life Support(一次救命処置=心肺蘇生法)のことで、全国医学生BLS選手権大会は心肺蘇生法の知識と技術を競う大会です。琉球大学は参加した35大学(41チーム)の中で第1位になりました。

 

5.移転

皆様のご支援・ご協力のおかげで、医学部と病院の宜野湾市西普天間住宅地区跡地への移転事業は順調に進捗しています。医学部関連の建物は、現在約4割が完成しており、令和6年10月末に竣工する予定で、医学部の開学日は令和7年4月1日の予定です。また、病院関連の建物は、現在約9割が完成しており、令和6年6月末に竣工する予定で、病院の開院日は令和7年1月6日の予定です。

最後に、抱負を述べさせていただきます。私の医学部長・医学研究科長の任期は、ちょうど医学部の移転が完了する令和7年3月末までです。移転事業が成功するように、そして医学部・医学研究科がさらに発展するように、今年も精一杯尽力して参ります。今年が、皆様にとって、健康で幸せな一年になることを衷心より祈念申し上げ、私の年頭のご挨拶とさせていただきます。

 

令和6(2024)年1月4日

琉球大学医学部長
琉球大学大学院医学研究科長
筒井 正人

M6学生の池間瑛人君の論文が琉球医学会誌に採択されました!

(消化器・腫瘍外科学講座)

このたび、M6学生の池間瑛人(いけま えいと)君の症例報告、『胆道閉鎖症術後の難治性胆管炎に対して肝左葉切除を行った1例』が琉球医学会誌に採択されました。臨床実習で担当した症例で、ぜひ自分でまとめてみたい、との希望があり、肝胆膵グループの上里安範先生、大野慎一郎先生の指導で書き上げ、見事に採択されました。

胆道閉鎖症は胆汁性肝硬変に進展して肝移植の適応となることが多い疾患ですが、本症例は比較的肝機能が保たれており、繰り返す胆管炎に対して肝切除を行ったもので、症例によっては肝移植を回避できることが示された貴重な報告です。学生の間に論文を書き上げるのは、それだけでもとても大変だったと思いますが、さらに医師国家試験を控えた忙しい中、頑張ってくれた池間君に我々もとても嬉しく感謝、です。

今後もアカデミックマインドを大切に、まずは国家試験突破、その後の研修、とがんばってください!!

 

 

(左から)高槻光寿教授、池間瑛人さん

2023年 医学部長年頭の挨拶

皆様、新年明けましておめでとうございます。本年も、どうぞ、宜しくお願い申し上げます。新年を迎えるにあたり、昨年の医学部・医学研究科の活動を振り返り、今年の抱負を述べさせていただきます。

 

1.人事

医学研究科では、昨年4月、人体解剖学講座に木村亮介教授、10月、感染症・呼吸器・消化器内科学講座に山本和子教授をお迎えしました。山本和子教授は医学研究科初の女性教授です。保健学科では、7月、母性看護学講座母性看護・助産学分野に遠藤由美子教授をお迎えしました。上原キャンパス事務部では、4月、文部科学省から加藤善一上原キャンパス事務部長・普天間キャンパス(仮称)準備室長(併)をお迎えしました。また、仲本律雄総務課長、知念芳和企画課長、および池原広和管理課長をお迎えしました。

 

2.教育

昨年の医師国家試験の合格率は、新卒が93.6%(全国平均95.0%、全国81校中第65位)、全体(新卒+既卒)が91.4%(全国平均91.7%、全国81校中第53位)でした。昨年の成績は全国平均を少し下回りましたが、最近10年間は全国平均と同等かそれを上回る良い成績をあげています。保健学科の国家試験の合格率は、看護師は96.7%、保健師は100%、助産師は100%、臨床検査技師は81.3%で、いずれも良い結果でした。これらの成果は、教務委員会、学生生活委員会、医学教育企画室、各教員、および学務課の努力のたまものだと思います。

 

3.研究

昨年、医学研究科・保健学科から沢山の研究成果が発表されました。内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座の仲地講師、岡本助教、益崎教授らの研究グループは、糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬が成人T細胞白血病患者に由来するリンパ球系癌細胞の異常増殖を著明に抑制することを世界で初めて明らかにしました。この知見は、成人T細胞白血病の全く新しい治療法の開発に繋がる画期的成果です(Biomedicine & Pharmacotherapy 2022, IF 7.420)。また、保健学科疫学・健康教育学分野の高倉教授らの研究グループは、コロナ禍の日本人集団において生活領域別の身体活動レベルに社会経済格差が見られるか否かを検討し、コロナ禍では身体活動の社会経済格差が拡大していることを世界で初めて明らかにしました(Public Health 2022, IF 4.984)。

 

4.医学部の取組

昨年、医学部に新型コロナのPCR検査体制を立ち上げました。医学部の学生・教職員およびその家族に無料でPCR検査を提供しています。また、医学部のセキュリティーの強化のために暗証番号式ドアロックを増設、研究支援体制の強化のために先端医学研究センターにMedical DX分野および感染症分野を新設、医学部・病院のロゴマークを作成、教授会のハイブリッド開催を導入しました。

 

5.移転

医学部と病院の宜野湾市西普天間地区への移転事業が国策として進められています。皆様のご支援・ご協力のおかげで、移転事業は順調に進捗しています。現在、病院棟は7階まで建設工事が進んでいます。医学部の開学日および病院の開院日は、2年後の2025(令和7)年初頭を予定しています。

最後に、抱負を述べさせていただきます。私は、本医学部・医学研究科がさらに発展するように、今年も誠心誠意尽力してまいります。教職員の皆様には、自分の仕事に誇りを持って、元気で、楽しく働いていただければ誠に幸甚でございます。新しい年が、皆様にとりまして、明るい夢と希望をもって歩みを進めていくことのできる輝かしい一年になりますことを衷心より祈念申し上げ、私の年頭のご挨拶とさせていただきます。

 

2023(令和5)年1月4日

琉球大学医学部長
琉球大学大学院医学研究科長
筒井 正人

城間恵介先生(臨床研修センター2年目研修医)が第133回循環器学会九州地方コンペティションセッション(研修医セッション)で優秀賞を受賞しました。

2022年12月3日に第113回日本循環器学会九州地方会が開催されました(会長:甲斐久史教授 久留米大学医療センター循環器内科、廣岡良隆教授 国際医療福祉大学大学院)。日循九州地方会は、毎年6月と12月に開催され、九州・沖縄地区の循環器内科、心臓血管外科のみならず救急部やリハビリテーション部、薬剤部、その他基礎研究教室からも多くの参加者が集い、日々の臨床研究・基礎研究での成果が発表される歴史ある学会です。第113回学会はハイブリッド開催にもかかわらず、1000人を超える参加者が集い活発な議論が繰り広げられました。本学会では次世代の循環器診療を担う若い世代に早くから研究意識を高めてほしいとの願いから、初期研修医を対象とした研修医コンペティションセッションが設けられています。今回は27題の研究成果が報告され、審査が行われました。

城間恵介先生は胸部心臓血管外科(第二外科)講座の古川浩二郎教授、喜瀬勇也講師の指導の下、臨床研修で経験した症例報告を行いました。「多発外傷を伴った外傷性冠動脈解離に対して緊急CABGを行った一例」と題した演題では、稀な外傷性冠動脈解離に対して救命のみならず、全身の多発外傷にも配慮し重篤な合併症、後遺症なく退院に導くための治療プロセスを丁寧に説明し、かつ冠動脈解離の発症機序や、冠血行動態の不安定さについても先行論文から得た知識に独自の考察を交えてプレゼンしました。各領域の専門医、指導医からの質問にも的確に答え、深い議論が交わされたのが評価され、厳密な審査の上、上位2人に送られる優秀賞に見事選出、表彰されました。

 

(左から)城間恵介先生、古川浩二郎教授

 

 

(表彰式の様子

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座 山本和子教授~

はじめまして、2022年10月1日付けで大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科)教授を拝命しました、山本和子です。ヒトの重要な臓器である肺・消化管・肝臓、そして新型コロナウイルス感染症など全身感染症を専門とする内科学講座です。医学研究科では女性教授第一号となりますが、それに気負うことなく、琉球大学と沖縄県の医療・教育・研究の発展のため、精一杯尽力する所存です。

私は北九州市生まれ、博多・アメリカ(シカゴ)・佐賀育ちで、1999年に佐賀医科大学医学部を卒業し、国立国際医療研究センター病院の内科で初期研修を行い、医師としての一歩を踏み出しました。同院のエイズ・治療研究開発センターで感染症学の面白さに魅了されました。後期研修は長崎医療センターの消化器内科、肝臓内科で行い、内視鏡治療や超音波・血管内治療に興味をもちました。いずれかを専門とするか迷っていたら、同院の呼吸器内科の先生に人手が足りず短期間手伝ってくれないか、と声をかけられ、修練医として勤めたところ、疾患の幅が広く、感染症を診る機会の多い呼吸器内科を専攻とすることに決めました。私の進路は人と出会うタイミングによって導かれてきたように思います。長崎大学大学院で微生物と薬剤耐性の研究を行い2007年に学位を取得した後、長崎大学第二内科に入局しました。チームリーダーとして診療していた際に、肺感染症の重症化は微生物の病原性や抗菌薬の効果よりも、宿主免疫が重要であることに気が付き、免疫と感染症について深く学ぶために2009年より4年間アメリカ(ボストン)で研究留学を行いました。帰国後は長崎医療センターで感染症内科を立ち上げ、長崎大学第二内科で感染症班初の女性チーフを務めました。2020年よりコロナ診療に奮闘し、複数の介入研究を手掛けていた時に、このご縁をいただきました。

赴任してまだ日は浅いですが、沖縄県に1つの医学部で、3つの内科のうち1つを主宰する重責を感じています。沖縄はそのユニークな地理、歴史、生活習慣から、他にない学問を育む可能性を秘めています。またアジアのハブとなりつつあることから、日本に先駆けて新しい感染症が流入し、ダイナミックに医療へ影響を及ぼします。若人が夢を持って集い、リサーチマインド、国際感覚、ダイバーシティ感覚を身につけ、伸び伸びと育む教室を目指します。いつでも気軽に声をかけてください。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

新任教授のご紹介~保健学科 母子看護学講座 遠藤由美子教授~

2022年7月1日付けで保健学科 母性看護・助産学分野の教授を拝命しました、遠藤由美子(えんどうゆみこ)と申します。
 私は、周りを海に囲まれた自然豊かなうるま市の離島で高校まで過ごしました。1990年に琉球大学医学部保健学科を卒業した後、那覇市立病院で看護師、助産師業務に従事しました。その後、ご縁があり東北の地、山形大学医学部看護学科で13年間看護教育に携わり、2010年より母校での教育研究に携わっております。
 皆さんは母性看護学や助産学という分野について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?妊娠、出産、育児をする女性を思い浮かべると思いますが、その時期だけでなく、女性の一生や育児にかかわるご家族も支援の対象としています。
 その中で、私は卵巣機能の低下がはじまる中年期以降の女性とその家族を対象とした研究を中心に行ってきました。女性の場合、約50歳で迎える閉経の前から様々な健康問題が現れやすくなります。日本人女性の平均寿命が90歳にせまる今、閉経後の期間をいかに健康的に、生活の質を落とさずに過ごすことができるかが重要になります。これまでの研究では、日常生活で取り入れやすい軽い運動が更年期症状だけでなく気分の改善につながることや、孫の育児にかかわることで適切な身体活動量が保たれ、生活の質もよいことがわかりました。
 女性は定期的に月経を経験するという性周期があることで、個人によっては周期的に体調の変化を感じ、体調の変化が勉強や仕事、家事、育児に影響することがあります。最近注目されているプレコンセプションケアは、女性やカップルを対象に妊娠前の時期に適切な知識・情報を提供して、将来の妊娠のためのヘルスケアを行うことを指しますが、近年の晩婚化、晩産化、少子化の中では、妊娠期以外の時期の健康管理も大切です。当分野では、生涯を通じた女性の健康支援について、今後研究を深めていきたいと考えています。
 また、沖縄県の母子保健の変わらぬ課題として、低出生体重児の出生率が高いことがあげられます。低出生体重になる原因は様々ですが、妊娠前の適正体重の維持や妊娠中の適切な生活習慣など、予防できることもあります。当分野では、沖縄県の若者の性の健康をよりよいものにしていくためのプレコンセプションケアについて研究を始めています。研究テーマに関心がある方は、どうぞお声かけください。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 人体解剖学講座 木村亮介教授~


 2022年4月1日付で人体解剖学講座の教授を拝命しました木村亮介です。琉球大学に赴任したのは2009年で、その頃1歳だった長女も中学校を卒業する歳になりました。今後とも、公私共々どうぞ末永く宜しくお願い致します。

 医学部教育では、主に肉眼解剖学を担当します。琉球大学医学部では、現在、解剖学実習は1年次の後期に行われています。医学部生にとって、解剖学実習は基礎医学学習のハイライトの一つであり、貴重な体験です。ご献体された方々の尊いご遺志に感謝しながら、厳しくも楽しい解剖学実習となるよう努めて参ります。
 研究の方は、自然人類学を専門として、ゲノムと表現型の両面から、ヒトの進化や多様性について研究しています。現生人類は、約20万年前にアフリカで誕生し、約5万年前からユーラシア大陸に拡散しました。さらに、ベーリング海峡を渡り、約1万2千年前には南アメリカ大陸の南端まで到達します。それまでの人類が進出できなかった極寒の地や島嶼地域にも、現生人類は進出することができました。そして、それぞれの地域の環境に適応するべく、身体的な特徴を発達させていきました。このようにして生まれたヒトの多様性を理解することは、ヒトが如何に様々な環境を克服してきたのかを知ることに繋がり、それは今後の医療のヒントになります。まさに温故知新です。新型コロナウィルスが猛威をふるっていますが、病原体への適応の歴史もヒトのゲノムに刻み込まれている可能性があるのです。

琉球列島では、約3万年前の更新世人骨が出土しています。その人たちは、どこからどうやって来たのでしょうか。現在の沖縄の人々との繋がりはあるのでしょうか。人類の進化と拡散に思いを馳せながら、日々、教育と研究をおこなっています。興味のある方は、気軽に遊びに来てください。

医学部・琉大病院ロゴマークについて(令和4年4月~)

 

(デザイナーより)
「デイゴ」と琉球の頭文字「R」をモチーフにデザインしました。デイゴは沖縄県の花であり、また、花言葉には「生命力」が含まれ、医療機関の象徴としてふさわしいものと考えました。花びらの一枚において、裏と表がひるがえっているのは、「継続」を象徴しており、途切れることなく研究と医療行為が繰り返される大学病院の存在をイメージしております。また、上向きの雄しべによって、沖縄の華やかさ、生命の力強さを表現しました。

オレンジ色のデイゴマークをオリジナルとし、医学部・病院それぞれにカラーバリエーションを全7色、文字配列は全5種類ございます。

下記Zipファイルよりダウンロードいただけます。

医学部ロゴマークダウンロード.zip
琉大病院ロゴマークダウンロード.zip

 

                   担当:企画課企画係
Eメール:kkikaku@acs.u-ryukyu.ac.jp

2022年 医学部長年頭の挨拶

皆様、新年明けましておめでとうございます。

新年を迎えるにあたり、昨年の医学部・医学研究科の活動を振り返り、今年の抱負を述べさせていただきます。

1. 医学部創立40周年

本医学部は1979(昭和54)年に設置され、2年後の1981(昭和56)年から学生の受け入れを開始しました。学部創立は学生の受け入れ時から数えるそうで、今年度は医学部創立40周年にあたります。
 これまでに医学部が輩出した卒業生数は医学科3,487名、保健学科2,392名におよびます。保健学科は医学科よりも歴史が古く、前身の琉球大学保健学部が1969(昭和44)年から学生の受け入れを始めていて、それを含めると保健学科の卒業生数は2831名です。本学部の卒業生は、沖縄県の医師数および臨床検査技師数の約4割を、そして、沖縄県内看護系3大学(琉球大、県立看護大、名桜大)の教員数の約7割を占めるまでになっています。

2. 人事

医学研究科では、昨年4月、生化学講座に黒柳秀人教授を、救急医学講座に梅村武寛教授をお迎えしました。また、昨年7月、放射線診断治療学講座に西江昭弘教授をお迎えしました。保健学科では、戦略的ポスト再配分において2つのポストを獲得し、今年4月、在宅・慢性期看護学分野に関口浩至准教授をお迎えする予定です。また、病態検査学講座に助教を採用する予定です。
 上原キャンパス事務部においては、昨年4月、鈴木極学務課長、仲本律雄企画課長、崎山英樹管理課長、および仲里隆司医事課長をお迎えしました。

3. 教育

昨年の医学科の医師国家試験の合格率は過去10年間で最も良い成績でした。新卒と既卒を合わせた合格率は95.5%で、全国80大学中19位でした。また、保健学科においても、看護師、保健師、助産師の国家試験の合格率はすべて100%でした(新卒のみ、既卒は受験者なし)。臨床検査技師の国家試験の合格率も全国平均とほぼ同等の77.8%でした(新卒のみ)。素晴らしい結果です。

4. 研究

昨年は医学部・医学研究科において沢山の研究成果が発表されました。先進ゲノム検査医学講座の前田士郎教授、松波雅俊助教らの研究グループは、沖縄県、内閣府、および文科省の支援を受けて、宮古諸島の住民が3つの異なる遺伝集団に分類されることをゲノム解析によって明らかにしました。狭い地域の住民において複数の遺伝集団が存在することを示した世界初の成果です(Mol Biol Evol 2021, IF 16.240)。
ゲノム解析によって明らかになった宮古諸島の人々の由来(本学公式HP)

また、形成外科学講座の清水雄介教授らは、沖縄県およびAMEDの支援を受けて、ヒト組織を企業に提供する審査体制(産業利用倫理審査委員会)を学内に構築しました。日本初の成果です。このことにより日本における再生医療等製品の開発が飛躍的に進展することが期待されます。
製薬企業へのヒト組織提供  日本初の「琉球大学産業利用倫理審査委員会」による承認  難病に対する再生医療等製品の開発加速へ(本学公式HP)

5. 地域貢献

千原キャンパスにおいて昨年8月と9月に行われたCOVID-19ワクチン接種では、医学部・医学研究科・病院から延べ296名を派遣し支援を行いました。近隣の大学もワクチン接種の対象でしたが、接種を受けた沖縄国際大学、キリスト教学院大学、および沖縄県立芸術大学からは感謝の言葉をいただいております。また、沖縄県新型コロナウイルス感染症対策本部や専門家会議への参画、沖縄県COVID-19ワクチン接種の支援、並びに保健所業務の支援などを行いました。

6. 移転

医学部と病院の宜野湾市西普天間地区への移転計画は順調に進捗しています。医学部の開学日および病院の開院日は、3年後の2025(令和7)年初頭を予定しています。病院棟は建設工事が進行中で、医学部棟は今年8月頃から建設工事が始まる予定です。

最後に、抱負を述べさせていただきます。私は、本医学部・医学研究科がさらに発展するように、今年も誠心誠意尽力してまいります。教職員の皆様には、自分の職場に誇りを持って、元気で、楽しく働いていただければ幸甚でございます。新しい年が皆様にとりまして輝かしい一年になりますことを衷心より祈念申し上げ、私の新年のご挨拶とさせていただきます。

2022(令和4)年1月4日
琉球大学医学部長
琉球大学大学院医学研究科長
筒井 正人

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 放射線診断治療学講座 西江 昭弘教授~


 はじめまして、2021年7月1日より大学院医学研究科 放射線診断治療学講座の教授を拝命しました、西江昭弘です。

皆さんは、放射線医療をどのように理解されているでしょうか? 放射線医療は大きく画像診断(単純X線、CT、MRI、核医学検査)、Interventional Radiology(血管造影や経皮的穿刺による治療)、放射線治療の3つの分野に分かれます。ほとんどの診療科の診断から治療に関わり、臨床医から相談を受けることも多いため、放射線科医は時にDr.’s Doctorとも呼ばれる診療を陰から支えるサポーター的存在と言えます。しかし、中には放射線科内で診断から治療まで完結する患者さんもおられ、また緊急血管造影で救命に携わったり、手術の困難ながん患者さんに放射線治療を行ったりなど、第一線での役割もあります。幅広い知識や思考、技術の習得が求められますが、やりがいも非常に大きく、また、画像診断、放射線治療機器の開発は日進月歩の勢いで進んでおり、決して飽きることがありません。
 琉球大学でもその進歩に並行するように、基礎的、技術的、臨床的な側面から多岐に渡った最先端の研究を行っており、当教室オリジナルの教育システム、各科とのカンファレンスや直接指導を通じて、診療・研究・教育が三位一体となった放射線医療を実践しています。

当教室は、常日頃から互いを気遣い、助け合えるアットホームな教室です。その強みを大事にしながら、診療・研究・教育上の問題点を積極的に抽出し自ら解決していける教室づくりを心掛けていきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 救急医学講座 梅村 武寛教授~


 皆さま、はじめまして。2021年4月1日より琉球大学救急医学講座教授を務めています梅村武寛です。

皆さまは、救急医学と聞いてどのような事を考えますか。以下に私の経歴を記し、自分の考えを述べてみようと思います。

私は、1995年に熊本大学医学部を卒業後、同大学の整形外科教室で医師の一歩を踏み出しました。その研修中に整形外科の最若手医師であることから四肢・脊椎外傷の初期対応から手術までを行うことはもちろんですが、多発外傷の診療時では各診療科(脳外科、外科等)の手術助手を務めたり、産科の緊急帝王切開の助手を務めたり、はたまた急性冠症候群(心筋梗塞)で循環器内科の助手をしたり、様々な経験をしてきました。当時、確固たる自分の将来を描いていたわけではなく、ただただ目の前の患者さんに全力で対峙するのみでした。いったい自分がどのような医師になるべきなのかを自問した際に、外傷に限らず重篤な患者さんを目の前で失わない様にしたい、全身管理と生命維持を確実に行えるようになりたい、そう考えて2002年から福岡大学病院救命救急センターで救急医としての研修を始めました。救急医として重症多発外傷の整形外科的手術を行い、その全身管理を学びながら救急・集中治療領域の研鑽を積みました。病院前救護教育(救急救命士養成校の講師)や、災害医療(東日本大震災など)に関わりだしたのもこの時です。2014年には沖縄に赴任し、前任地の救命救急センターで沖縄県内と県外式の各々の特徴を取り入れた救急医療体制を構築しました。昨今の新型コロナ感染症対策では、県庁内で行政や警察・消防・海上保安庁・自衛隊と協働してきました。

以上の様に救急医学は、医学の各領域だけにとどまらず、医療外の領域とも協働し、多種多様な考え方、行動が求められることが特徴だと考えます。また社会との関わりが多く、医療だけに限らない様々な物事を俯瞰的にとらえることが求められる分野でもあります。

皆さまが当大学で学び、ここ沖縄県全体を俯瞰的に眺めることができる救急医を育成することをこれからの目標とし頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 生化学講座 黒柳 秀人教授~


 みなさま、こんにちは。2021年4月1日付で生化学講座の担当になりました黒柳秀人(くろやなぎ ひでひと)です。

私は愛知県の地方都市の出身です。山や田んぼに囲まれた数軒の集落で育ち、へき地の公立小学校、中学校を経て、片道1時間半をかけて公立高校に通っていました。世の中にどういう職業があるのか、自分がどういう仕事に向いているのか分からず、文系も含めすべての学部学科に進学可能な東京大学の理科二類に進みました。そこで出会ったのが、今日まで研究を続けている分子生物学です。

医学科を目指している多くの高校生のみなさんがそうであるように、私も高校では物理と化学を選択肢しました。高校で習った生物に出てくるものといえば、肉眼や顕微鏡で観察したものか目に見えない酵素の類い、いわゆる博物学だと思っていました。しかし、今日の大学で研究する最先端の生物学は、さまざまな原理に基づく機器を駆使し、遺伝情報を操ることで、生命現象を担う分子の形を明らかにし、物理学と化学と統計学の原理で説明しようとする、精巧な実験科学なのです。

生命現象を普遍の原理で説明する、そういう共通の目標があるからこそ、個々の研究者は誰もが納得のいく証明を目指します。そして、その一番の動機は、自分自身が納得できる答えを自分の手で見つけたい、ということなのです。

大学には、万人の疑問に答える研究をする好機が待っています。医師を目指す人も生命科学を志す人も、生命科学が何だかまだ分からない人も、ここにはみなさんの好奇心をかき立てる環境があります。先入観にとらわれず、さまざまなものに反応するアンテナを磨きながら、大学を目指して欲しいと思います。そして、私達の世代には思いもよらない新しい発想をもったみなさんと一緒に研究できる日が来ることを楽しみにしています。

医学部長 就任の挨拶

4 月1 日付けで医学部長・医学研究科長を拝命いたしました、筒井正人でございます。就任にあたり一言ご挨拶を申し上げます。

1. 医学部・医学研究科・病院の移転計画の推進

現在、医学部・医学研究科と病院は、4年後の2025(令和7)年の宜野湾市西普天間地区への移転に向けて、その準備が進められています。病院は建設工事が始まっており、医学部・医学研究科においては施設のヒアリングが進行中で、設計と施工の受注者が8月に決定する予定です。また、これまで病院と一体でCOVID-19 に対応してきた経験をふまえ、医学部・医学研究科においても、密を避けられる広い講義室や学生・職員食堂を検討していただきたいと思っております。皆様の様々な要望を丁寧にくみ上げて、皆様が納得できる施設ができるように尽力いたします。

 

2. 連携強化による保健学科と医学研究科の発展

保健学科と医学研究科の連携の強化は、両者の教育・研究の活性化に資すると思います。今年度から保健学研究科・保健学科の講義を医学研究科と共同で実施することにしました。医学研究科・医学科の講義を保健学科と共同で実施することも計画しています。各種委員会活動については保健学科で負担が大きい場合は医学研究科が担当します。また、西普天間では保健学科の実験室の確保のため機器センターの有効利用を検討いたします。西普天間では保健学科と医学研究科が同じ研究棟で仕事をすることになり物理的にも連携が深まります。その布石として着実に連携を強化していきたいと思います。

 

3. 医学研究科・保健学科の教育の充実

教育面においては、COVID-19 の収束が見込めない中、遠隔による講義が学生の修学や心身に与える影響が危惧されます。その対策として、4月から対面あるいは対面とWEBのハイブリッドの講義を行います。さらに、指導教員、各種委員会、医学教育企画室の活動を中心として一層の学生支援をいたします。今年の国家試験の成績は、保健学科、医学科ともに良かったです。保健学科は、看護師、保健師、助産師の合格率がいずれも100%でした。医学科も、新卒と既卒をあわせて133名が受験し不合格者は6名だけで(合格率95.5%)、全国80大学中19位で、過去10年間で最も良い成績でした。これらの結果は本学部の教育が優れていることを示唆していると思います。

 

4. 医学研究科・保健学科の研究の活性化

研究においては外部資金の獲得が必要不可欠です。そのために、各省庁、沖縄県、大学本部、企業等に頻繁に出向いて交渉し情報を入手したいと思います。臨床系の社会人大学院生は、仕事が忙しく、研究費も十分ではないため、研究がなかなか進まない状況にあります。その支援のため、4月から実験実習機器センターにおいてダイレクトシークエンスやゲノム解析などの研究支援を開始します。今後、研究支援体制をさらに拡充・強化していきます。2016(平成28)年に設立された先端医学研究センターは、令和4年度から始まる第4期中期目標・中期計画期間も引き続き発展するように、そして、全学的・恒久的な組織になるように取り組んでまいります。

 

5. 病院と一体となった医学部・医学研究科の発展

病院は1年前に医学部から独立した組織になりました。それを受けて医学部長の役割は変化し、病院と協調して医学部の管理運営を担うことになりました。そのため、 医学科長の皮膚科学講座 高橋健造教授および副医学部長の消化器・腫瘍外科学講座 高槻光寿教授には、臨床系講座の教授として病院との連携にも力を発揮していただきます。病院との協調性を大切にして医学部・医学研究科・病院が一体となって発展するように尽力して参ります。

 

最後に、『将来に希望を持てる、魅力ある医学部・医学研究科・病院』になるよう誠心誠意努力することをお約束し、私のご挨拶とさせていただきます。

2021年4月1日

琉球大学医学部長・大学院医学研究科長
筒井 正人

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 先進医療創成科学講座 山下 暁朗教授~


 みなさま、初めまして。令和3年度2月1日付けで医学研究科先進医療創成科学講座(Department of Investigative Medicine)に着任いたしました山下暁朗です。

私は医学研究を25年間続けてきましたが、医師ではありません。神戸市の公立高校を卒業し、神奈川県にある日本大学農獣医学部(現:生物資源科学部)で、分子生物学に出会いました。卒業研究を機に、横浜市立大学医学部第二生化学教室(大野茂男教授)に参加し、大学院に進学し、博士(医学)を平成13年に取得しました。テキサス大学のAnn-Bin Shyu研究室に留学後、平成17年からは若手研究者の登竜門の一つである戦略的創造研究推進事業「さきがけ」専任研究者として、研究を行いました。平成22年からは、横浜市立大学医学部の教員となり、10年に渡り分子細胞生物学教育に携わっています。

これまで、海に近いところに住んできましたので、琉球大学での教育と研究生活を楽しみにしています。研究については、数年前からそれまでの研究成果を企業導出しています。純粋な学問としての基礎研究も大好きですが、やはり、中学生・高校生にも「こんな研究をしている」と言うことを分かってもらえるような創薬につながる研究をおこない、新しい医療を創って行こうとしています。

これから医学科を目指す高校生の皆さんは、高い目標を持って厳しい選抜試験をくぐり抜けてきます。しかし、入学してからが本番です。医師は「自ら学び、考え続ける」必要のある職業です。私の近しい医師で、20年目、40年目の先生であっても、「学ばないというのは、罪である(患者の不利益を生む)」との意識を持って日々の臨床に向かっています。「自ら学び、考え続ける」ことが出来るみなさんは日々成長し、正の連鎖により優れた医師ことが出来ます。私は基礎研究者であり、基礎医学教育を担当します。医学は生命の仕組みを理解するための科学分野でもあります。基礎教育で培う、科学的根拠と科学的思考は、将来、診察結果から医学的判断を行い患者の「未来を変える」治療を行う力の礎となる(でも、学生当時は気がつかなかった)と多くの若手医師が私に語ってくれました。

琉球大学医学部医学科で、皆さんにお会いできることを楽しみにしています。是非、私の研究室に遊びに来てください。歓迎します。

2021年 医学部長年頭の挨拶

皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

昨年はCOVID-19の感染拡大を受けて、教育、研究及び診療への対応に追われたかと思います。その中でも、たくさんの成果が上がりました。その成果と今年の抱負を述べて、皆様に新年の挨拶を申し上げたいと思います。

1.教育面について

活動制限を受けて、オンデマンド型のWebClassを活用した遠隔授業か、ZoomやMicrosoft Teamsを用いた双方向型のいずれかの遠隔授業を実施しました。そのため、オンライン授業等の実施にあたり、学生への連絡、出欠の方法、システムの操作など運用マニュアルを整え、令和2年4月7日に科目担当教員向けの説明会を実施しております。遠隔授業に対応するため、貸出用のWifiルータ等も用意し通信環境が整っていない学生に限り、講義室等を開放して対応しました。

臨床実習が休止された期間の一部は動画コンテンツにより、症例検討を中心としたオンライン実習を実施しました(令和2年5月11日~5月22日)。その後は、病院関係者のご尽力により、臨床実習を続けることができています。医学科は、臨床実習後OSCEが令和2年度から正式実施となりましたが、これも無事終了しました。解剖学実習は、保健学科との合同実習ができなくなりましたが、令和2年12月21日に無事終了しました。

遠隔授業の事例ですが、組織学実習は、概要説明をリモートで行い、実習時間の短縮化を図りました。さらに前半・後半の2グループに分けて定員の50%以下での対面実習を継続し、一方、バーチャルスライド活用を促進しています。試験は、一部の科目については、Web上での試験を実施しました。出題の順序をランダムにする、1問あたりの回答時間を制限する、WEBカメラをオンにして受験させる、出題問題を約400問プールして、その中から25問をランダムに出題など、極力公平性を担保しています。来年度はハイブリッド授業が可能か?検討課題です。

令和3年度入学者選抜においても、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う追試験の実施をはじめ感染防止対策を徹底した入試の実施を行うため、ご協力をお願いしたいと思います。

2.国際交流

国際交流はほぼ止まってしまいました。それでも、保健学研究科では国際化を推進しています。フィリピン大学、チェンマイ大学との学生交流や国費外国人留学生(フィリピン、ラオス、インドネシア)の受入を行なっています。

医学研究科・医学科としては、昨年度は、医科学研究では、昨年度、米国コロラド大学医学部、ハーバード大学医学部、ベルギーサンリュック病院、シンガポール南洋理工大学、台湾チメイ病院に3年次学生を派遣し、令和2年2月末に無事帰国しています。今年度は、海外派遣は中止になりました。台湾との国際交流も中止になっています。

3.研究について

基盤研究Aを始めとする多数の科学研究費補助金を獲得し、また、概算要求事業として、「亜熱帯島嶼の時空間ゲノミクス」、「沖縄県地域医療拠点形成に向けた先端医学研究センターの設置」が走っています。さらに、「沖縄バイオインフォメーションバンク試料解析保管システム」が補正予算で整備されます。また、沖縄県の先端医療実用化推進事業やAMEDの「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発)」、「中央IRB促進事業」、「女性の健康の包括的支援実用化研究事業-Wise」および武田科学振興財団特定研究助成を活用しつつ整備を推進しています。

これらをもとに、多数の論文が出版され、プレスリリースを行ってもらいました。どんどん、アウトリーチも進めていければと思います。

また、クロスアポイントメントとして、2名の特命教授を迎えました。合計4名になりました。先進医療創成科学講座を設置し、令和3年2月1日に教授をお迎えします。また、上原キャンパス事務部に企画・研究推進室を設置し、事務からのバップアップ体制を作りました。

4.医学部及び病院の移転について

令和2年度第3次補正として、54.8億円、令和3年度概算要求として、沖縄健康医療拠点整備経費が措置され、合計約139億円となりました。令和2年度には土地取得を進めていて、合計で約16haの敷地を取得予定です。病院棟は建設が始まり、研究棟・講義実習棟の実施設計を進めます。 この医学部及び病院の移転について、国が目指す国際性と離島の特性を踏まえた沖縄健康医療拠点に相応しいキャンパス整備を目指し、全学を挙げて取り組むため、皆さまのご協力をお願いいたします。

毎年述べていますが、教育、研究、診療環境の整備は、大事であり、ハラスメントの無い教育現場、診療現場を保つことは重要な責務であると考えています。特に医学部・病院、つまり上原キャンパス(上原事業場)は、大学全体の約3分の2の教職員が働く大所帯ですので、働き方改革も行っていく必要があります。

私の任期は今年3月に終了しますので、令和3年度以降の取組は病院長と次期医学部長に引き継ぎます。

最後に、皆様のご多幸と健康を祈念し、また、医学部及び病院の発展を祈願し、年頭の挨拶といたします。

2021(令和3)年1月4日

琉球大学医学部長 石田 肇

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 胸部心臓血管外科学講座 古川 浩二郎教授~


 令和2年(2020年)9月1日付で琉球大学胸部心臓血管外科(第二外科)教授を拝命しました古川浩二郎と申します。皆様、どうぞよろしくお願い致します。

私は、昭和63年(1988年)に佐賀医科大学を卒業後、同大学の胸部心臓血管外科教室に入局し、心臓・血管・肺の外科学を専攻しました。その後、佐賀大学およびその関連病院にて心臓血管外科の臨床研修および研究を一心に行って参りました。そして、この度、伝統ある琉球大学胸部心臓血管外科学教室の一員に加えていただきました。

琉球大学胸部心臓血管外科学教室は、昭和58年(1983年)に開講し、初代 草場 昭 教授、第二代 古謝景春 教授、そして第三代 國吉幸男 教授が作ってこられた素晴らしい教室です。臨床・教育・研究と大学の使命である三本柱が大変バランスよく行われています。その証しとして、現在沖縄で活躍されている多くの人材を輩出しています。そして、その伝統の上に私がこれまで培ってきた事を少しでも積み上げるべく精進していく覚悟です。

以下に教室の特色をご紹介します。

臨床:通常の心臓血管手術はすべて万遍なく行っており、かつ現在の最先端治療である経カテーテル大動脈弁置換術(症例数は国立大学の中で全国2位)、大動脈ステントグラフト、重症心不全に対する人工心臓治療、低侵襲心臓手術などを精力的に行っています。また、沖縄で患者さんの多いBudd-Chiari症候群に対する外科治療の実績は世界でもトップクラスです。そして、これから私のライフワーク一つである弁形成術(自己弁温存大動脈基部置換術、大動脈弁形成術、僧帽弁形成術)や本邦ではいまだ症例数の少ない肥大型心筋症に対する心筋切除術にも力をいれていきます。

研究:大動脈手術時に稀に合併する脊髄障害はいまだに世界的にも未解決の分野です。その発症のメカニズムを臨床および基礎研究にて解明し、その合併症の予防を目指しています。また、Budd-Chiari症候群の発生メカニズムやより侵襲の少ない外科手術開発も行っています。今後、私が佐賀大学にて経験した再生医療技術を応用し臨床に直結する重症心不全に対する心筋再生や重症虚血肢に対する血管再生などの研究を開始したいと考えています。

教育:大学の三つの使命の内、最も大切なことと考えています。医学生~研修医~専攻医~専門医にいたる医師人生においてシームレスな教育を行い社会に有用な人材を一人でも多く育成していきます。そのために、常にお互いを刺激、高め合える教室作りを目指します。私の教育の理念は、患者の立場に立って考えることができる心を持ちかつグローバルにものを考え(世界レベルの医療知識・技術を習得することにより得られる)、そして常に目の前の患者さんに全力を尽くすという信念をもった医療人を育成することです。

今後の目標は、心臓血管病の患者さんの医療を沖縄で完結するだけでなく、他県からも患者さんや医療関係者が訪れる様な安心・安全かつ先進的な医療を琉球大学にて実現していくことです。その目標に向け医局員一丸となり取り組んで参ります。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 腫瘍病理学講座 和田 直樹教授~


 令和2年8月1日付で琉球大学大学院医学研究科腫瘍病理学講座教授を拝命しました和田直樹と申します。

私は大阪市立大学を卒業後、一貫して病理医としての道を大学(大阪大学・大阪市立大学)および大学の主要関連病院で歩んでまいりました。この度、一貫して病理医として歩んでまいりました経験を琉球大学の指導教員として活かす機会を戴きました。

当講座は病理診断・病理学教育・病理学研究を担います。病理診断は、治療方針の決定や手術の妥当性の評価など、医療の根幹に関わる医行為であり、的確な病理診断は様々な疾患の治療の基本となります。病理診断を通して、医療の質の向上に貢献します。

大学医学部における教育の使命は良い医師を世に送り出すことです。良い医師には患者の病的状態を的確に把握することが求められますので、病態や疾患メカニズムの理解を深める病理学教育を進めます。病理学研究では実際の病理診断で経験する症例に立脚した研究を行うことが可能であり、疾患の予後を予測するためや適切な治療に繋がる特性を把握するために研究を進め、病理診断時に何らかのメッセージを発することができるような研究をしたいと思っております。

初代 伊藤悦男 教授、第2代 吉見直己 教授が築いてこられた腫瘍病理学講座を引き継がせていただいたことを大変光栄に存じます。リレーに例えるとバトンを引き継がせていただいた状況ですが、バトンには熱い情熱を込めていただいておりますので、そのバトンに私の熱意も加えて走らせていただければと存じます。そして、そのバトンを一緒に持って走り続けていく仲間も増やしていきたいと考えております。勿論、走り方は仲間と一緒に冷静な頭脳をもって考えてまいります。私が座右の銘にしている「Cool Head,but Warm Heart」は有名な経済学者のお言葉ですが、病理学にも当てはまります。このスローガンのもと、私は沖縄の地に根ざし発展する病理学の確立に邁進したいと考えております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 顎顔面口腔機能再建学講座 中村 博幸教授~


 令和2年3月1日付で医学部顎顔面口腔機能再建学講座の教授を拝命しました中村博幸と申します。
 伝統ある講座をさらに発展させ、広く沖縄の医療に貢献できるよう努力してまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

生まれは富山県で、大学は九州歯科大学、卒業後は慶応義塾大学、東大医科学研究所、米国スクリプス研究所、英国インペリアルカレッジロンドン、東京医科歯科大学、国立長寿研究所、金沢大学と国内外多施設を移動し、一般的な歯科医とは異なる貴重な経験をさせて頂きました。最終到着地は琉球大学となり、このご縁を大切に沖縄のために懸命に働きたいと思っています。

近年の日本の人口の超高齢化に伴い歯科へのニーズは劇的に変化しています。従来型の歯科医療に加えて、口腔健康から全身健康に寄与する歯科医療、さらに医科と連携しながら急性期、回復期、維持期、在宅介護そして終末期医療をサポートする口腔機能管理ひいては栄養・感染管理に関わる歯科医療が求められています。歯学部のない県では医学部歯科口腔外科が唯一の歯科医療教育機関であり、医学部学生や卒後歯科医師を対象として、歯科保健医療のパラダイムシフトに対応した教育システムを構築することが重要であると考えています。医学部歯科口腔外科は、医師と歯科医師の両方を教育することから、医科歯科連携の推進において最適の場所であり、この利点を最大限に活用したいと思います。

また、沖縄県の永久歯むし歯罹患本数は全国最下位です。その背景には、個人・地域格差による口腔衛生管理不足などが理由であるとされています。また、咬む力や舌などの口腔機能の維持は超高齢社会で満足な生活を過ごすためにも重要です。県民の生活向上のためには、口腔機能を維持できるような環境・仕組みを沖縄県並びに歯科医師会、琉球大学歯科口腔外科、県内病院歯科口腔外科、各関連施設が一体となって推進しなければなりません。今後は、地域医療、行政との連携体制を構築し、対話からニーズを丁寧にもれなく抽出することにより、琉球大学歯科口腔外科に求められている役割を懸命に果たしていきたいと考えています。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

新任教授のご紹介~琉球大学医学部附属病院周産母子センター 銘苅 桂子教授~


 はじめまして。
琉球大学医学部附属病院周産母子センター教授を拝命いたしました、銘苅桂子と申します。

沖縄生まれ、沖縄育ち。中学校は米軍基地の解放地にあり、雨の日は、まだ整備されていない泥だらけの道を通いました。平成11年に琉球大学医学部医学科を卒業し、産婦人科医の門を叩きました。その頃は、子供を持つ女性医師が第一線で働くことはかなり困難でしたし、いわゆる、「24時間働ける」医師でなければ、一人前の研修すら受けられなかった時代です。そのような中で乳児を抱えて研修医となったのですから、無謀としか言いようがありません。それがここまでやってこれたのは、絶対的な家族の支えと、指導医のおかげです。

私の担当する生殖医療の現場では、不妊に悩むカップルが、出口の見えないトンネルを抜けようと必死に頑張っています。子宮筋腫や子宮内膜症は、辛い月経痛や貧血の原因であり、腹腔鏡手術という小さな傷で摘出することで、劇的に楽になることがあります。一方で、女性の社会進出は、女性の生殖に関わる分野に歪みをきたし、症状は複雑化しています。正解を見極めるには、一人一人の希望に耳を傾け、最新のエビデンスと最良の技術を駆使したテイラーメイド医療が必要です。そして、そういった女性に寄り添い、治療を継続していくために、女性医師は大きな役割を果たしているのです。

女性活躍の推進は医療の現場でも求められています。しかしながら、大学病院という過酷な現場で、育児をしながら女性医師が仕事を継続するのは本当に大変なことです。家族を想うように患者さんを想い、治療に奮闘する彼女たちが、「過酷」を理由に立ち去ることがないよう、医療現場の働き方改革と、教育の両輪で、共に成長していきたいと思います。同時に、生殖医療・産婦人科内視鏡下手術のさらなるレベル向上と良質で満足度の高い医療を提供、そして、沖縄県内における女性研究者・医師のキャリア教育にも尽力して参ります。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

新任教授のご紹介~医学部保健学科 成人・がん看護学分野 照屋 典子教授~

令和元年6月1日付で、保健学科 成人・老年看護学講座の教授を拝命しました照屋典子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私は、琉球大学医学部保健学科卒業後、琉球大学大学院保健学研究科修士課程へ進学し、大学院修了後は、県立病院、総合病院等で10年間看護師、助産師として勤務いたしました。

平成16年、前任の砂川洋子教授より、母校で看護基礎教育に携わってみないかとのお声かけがご縁で、保健学科 成人・老年看護学講座の助手に着任しました。その後、砂川教授のもと、助教として学部教育や大学院におけるがん看護専門看護師養成、九州がんプロ養成プランによる臨床ナースの継続教育、大学間連携事業における共同教育システムの構築、一般市民への緩和ケアに関する普及啓発等、さまざまな教育、研究、地域貢献活動に関わらせていただき、貴重な経験や学びを得ました。

今の医療現場を取り巻く環境は、急速な少子超高齢化、医療技術の進歩、情報化社会の到来など、私が就職した30年前とは大きく異なり、医療の受け手側である国民のニーズも多様化・複雑化しています。

看護は、あらゆる年代の人々やその家族、地域社会を対象とし、健康の増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、その人の生涯を通して、最期までその人らしい生が全うできるように援助することを目的としています。どのような健康状態であっても、その人らしい“暮らし”を支えるために、看護職は「医療」と「生活」の視点からマネジメントし、保健・医療・福祉をつなぐ役割も担っています。これまで主流であった“病院で働くナース”から“地域で働くナース”へのパラダイムシフトによって、さまざまな現場で活躍できる看護職の育成が必須であると考えます。とくに、国民の2人に1人が罹患するがんにおいては、治療の複雑化・長期化に伴い、より専門性の高い看護の提供が求められており、島嶼を抱える沖縄県では、がん看護専門看護師のさらなる育成が急務とされています。この先10年、20年後を見据え、 “将来の保健医療分野のリーダーとなる人材育成”及び “質の高いがん看護に寄与し得る専門看護師育成”に取り組んでまいりたいと思います。

また、保健学科では “将来、国際医療の現場で活躍できる人材育成”を掲げております。フィリピン大学やチェンマイ大学等との国際交流協定を締結し、毎年、チェンマイ大学との学生間国際交流も活発に行っております。今後も国際交流や研究活動を通して、グローバルな視点をもつリーダー育成に力を注いでいきたいと思います。微力ではございますが、沖縄の看護、保健医療の質向上及び未来を担う人材育成に貢献できるよう努力する所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。