医学科学生の論文がHuman Pathology誌に掲載されました。

琉球大学医学部医学科では、3年次の学生が約3ヶ月の期間、基礎、臨床にまたがる様々なラボにて研究を遂行する「医科学研究」のカリキュラムがあります。幅広い視野を育んでもらうため、海外も含めて学外のラボにおける研修も勧めております。現在、医学科5年次の高山卓也君が韓国ソウルのサムスン病院病理学教室で行なった研究が、Human Pathology誌に掲載されました。Human Pathology誌は学術雑誌の影響力を示すインパクトファクターが3.01と、診断病理学分野では世界上位レベルの雑誌です。

EBウイルスは多くの人が幼少時に感染し、症状がないまま潜伏感染しているウイルスです。稀ですが、このウイルスが原因で、悪性度の高い、「節外性NK/T細胞性リンパ腫」を発症する人がいます。この腫瘍の多くは、その腫瘍細胞の性質からリンパ球の一種であるNK細胞由来の腫瘍であると長く信じられてきましたが、遺伝子も含め詳細に確認した研究はありませんでした。

高山さんとサムスン病院の指導医であるKo Young-Hyeh博士はリンパ球の由来を特定できる蛋白である「TCR」の蛍光免疫染色を世界で初めて行い、驚くべきことに、それまでNK細胞由来と考えられていた症例の多くは、むしろT細胞という、別の種類のリンパ球が由来であることがわかりました。悪性腫瘍の由来となる正常細胞を同定することは診断面、治療面で大きなインパクトを与えます。この研究により節外性NK/T細胞性リンパ腫の病態の理解がさらに進むと思われます。

高山さんは本論文において最も貢献した研究者として筆頭著者となっています。さらに1月26、27日に箱根で開催された第14回日韓リンパ網内系ワークショップ2018では本論文の研究成果について英語で発表を行いました。

図1:蛍光免疫染色の図。EBウイルスを緑色(B)に、T細胞のマーカーであるTCRが赤色(C)に染まっています。両者を重ね合わせると、EBウイルスが感染している腫瘍細胞の多くがT細胞であることがわかります(D)。

 

 

図2:2月に開催された国際学会で、指導医のKo博士、派遣元である細胞病理学講座の加留部謙之輔教授と共に発表ポスターの前で記念撮影。