喜瀬助教(胸部心臓血管外科学講座)が第59回日本脈管学会総会 基礎研究部門で2年連続の最優秀演題賞を受賞しました

日本脈管学会は脈管(大動脈、末梢動脈、静脈、リンパ管など)に関する、臨床医学(心臓・血管外科、循環器内科、放射線科、形成外科、脳神経外科、臨床検査科など)や基礎医学(病理学、生理学など)での研究を行っている多くの研究者が、それぞれの領域を超えた横断的な議論を行う場として設立された伝統ある学術集会で、毎年採択演題総数は500題を超え、その研究テーマも多方面にわたり活発な討論が繰り広げられています。

総会ではJapanese College of Angiology Award (JCAA) が設けられ、独創的で将来性のある優秀な研究に対し、臨床系、基礎系からそれぞれ最優秀演題、優秀演題、計4演題が公開審査のもとに選考されています。

胸部心臓血管外科学講座(第二外科)の喜瀬勇也助教は昨年度(第58回総会)に引き続き、本年度(第59回総会:会期10月25日~27日)のJCAA基礎研究部門でも最優秀賞を受賞しました。2年連続の受賞であります。

喜瀬助教らは以前より「胸腹部大動脈瘤手術時の脊髄虚血の機序解明およびその予防法の確立」を研究テーマに掲げ、難易度の高い心臓血管外科手術において重篤な術後合併症である本問題に基礎的・実験的な手法を用いて挑んでおり、その研究成果を国内外の学会や学術雑誌で報告しております。

昨年度は胸腹部大動脈瘤手術時の動物モデルを作成し、脊髄灌流圧と脊髄血流量との相関を示し、脊髄循環の生理的環境を保持するための至適体血圧を数値化し報告しました。

本年度は脊髄非虚血および虚血環境下において、ノルアドレナリン投与による脊髄血流増加のメカニズムについて仮説を立て、動物モデルを用いた独創的な方法でそれを証明しました。これまでノルアドレナリン投与は末梢血管収縮による臓器血流の低下(脊髄虚血)を助長する可能性が危惧されていましたが、本研究ではノルアドレナリン投与下の体血管抵抗(全臓器血管抵抗総和)と脊髄血管抵抗(局所臓器血管抵抗)の上昇率をそれぞれ算出し、回帰式を用いた検討から脊髄血管抵抗の上昇率が低いことを証明し、脊髄血流分配が増加する機序を明らかにしました。過去の研究論文で同様の仮説検証を示した報告はなく、その点が大きく評価されました。

審査員には心臓血管外科領域だけでなく、他方面の領域の第一人者も含まれ、これらの研究者からも研究内容について高い評価をいただいた事は特筆すべきことであります。