細胞病理学講座の研究論文がLeukemia誌に掲載されました。

加留部謙之輔教授(細胞病理学講座)らの論文「Integrating genomic alterations in diffuse large B-cell lymphoma identifies new relevant pathways and potential therapeutic targets」がLeukemia誌に掲載されました。Leukemia誌は学術雑誌の影響力を示すインパクトファクターが11.7と、血液学分野で世界トップレベルの雑誌です。

血液のがんである悪性リンパ腫は、近年発症頻度の増加が著しく、沖縄県でも毎年多くの患者さんが発症しています。その中でも、最も頻度が高い「びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)」は、抗がん剤による治療で約6割の患者さんに治癒が望めます。しかし、この「治る」6割の症例と「治らない」4割の症例の違いを規定するメカニズムは何か、未だによくわかっていません。そこで、加留部教授は留学先のスペイン・バルセロナ大学においてDLBCL250例に対して重要な遺伝子に的を絞ってそれらの異常をあぶり出す「ターゲットシークエンス」を行い、抗がん剤の効果、生存期間などの臨床的指標と比較しました。帰国後も解析を続け、その結果、治りにくい症例に「NOTCH経路」という細胞内分子経路に関連する遺伝子異常が特徴的に見出されることがわかりました。

これまでの診断法では、この異常を見出すことはできず、NOTCH経路異常を有する患者さんも他の患者さんと同様の標準治療を受け、結果不幸な転帰をたどられることも多かったと思われます。遺伝子異常を詳細に解析することはこのような「治りにくい」症例を見極め、標準治療よりも強い治療を行うなどの選択肢を増やすことにつながります。また新規治療薬開発の端緒にもなります。一方で、日常診療時における網羅的遺伝子解析はいまだ一般的ではありません。細胞病理学講座では、今回の研究のようにがんの遺伝子異常を調べ、より正確な診断と新規治療法の開発につながるような研究を行っています。最終的には日常診療に還元し、がんの診断を遺伝子レベルで行えるような体制を整えることを目標にします。