皮膚科学講座の研究論文が The Journal of Infectious Diseases誌に 掲載されました。

沖縄県ではカポジ肉腫という血管腫瘍が好発します。世界的には幾つかの好発地域、民族が知られていますが、日本国内での発症は非常に稀です。カポジ肉腫は主に高齢者の手足の皮膚に腫瘤が多発する病気で、命を脅かすことはほとんどありませんが、病変が増大すると痛みや歩行障害を来たすことから問題になります。この病気の発症にはヒトヘルペスウイルス8型の感染が関係します。

過去の県内症例の集積から、カポジ肉腫は沖縄の中でも特に宮古諸島出身者に好発することが判明しました。そこで、琉球大学皮膚科学講座では沖縄および宮古諸島にカポジ肉腫が多発する理由を、ヒトヘルペスウイルス8型の感染率、同ウイルス遺伝子、宮古諸島の人々の民族学的特徴の3つの側面から検討しました。その結果、宮古諸島におけるヒトヘルペスウイルス8型の感染率は15.4%と日本の一般集団における感染率の約11倍も高いこと、また沖縄および宮古諸島に分布するヒトヘルペスウイルス8型は世界的にみても独特な進化を遂げており、日本本土由来ウイルスにはみられないウイルス変異を有することが確認されました。今回の研究では、カポジ肉腫発症に関与する遺伝的な特徴までは解明できませんでしたが、これは今後の課題として研究が続けられます。

皮膚科学講座では、上記に述べたカポジ肉腫が沖縄県民に多発する理由についての研究を続けるとともに、県内におけるヒトヘルペスウイルス8型の感染経路の特定、感染予防の必要性の検討など、カポジ肉腫についての研究を更に深め、県民の健康維持に貢献したいと考えています。