2010年度 (財)武田科学振興財団 『特定研究助成(5,000万円)』に益崎教授の研究決定!

2010年度 (財)武田科学振興財団『特定研究助成(5,000万円)』に
「沖縄型食を背景とする肥満2型糖尿病の病態解析と新しい治療医学の創成」が決定!

取材第1回目を飾るのは、琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)の 益崎 裕章 教授です。

内分泌代謝学で、特に糖尿病や肥満症の臨床・教育・研究を専門にする益崎教授は、2010年11月に財団法人武田科学振興財団が主催する「特定研究助成」の研究対象に 自身の研究課題である「沖縄型食を背景とする肥満2型糖尿病の病態解析と新しい治療医学の創成」が選考され、研究助成金5000万円を贈呈されました。今回の取材では、この研究内容に基づいた研究内容や今後の想い等についてお話をお伺いしました。


【沖縄県の肥満現状】
肥満は糖尿病や心筋梗塞 等の発病を誘発することが知られており、特に糖尿病の発症に対して大 きな影響力を持っている とのことです。体重(キログラム)をメートル表示の身長の数字で二回、割り算して得られる体格指数のことをBMIといい、肥満度の国際標準指標として世界中で用いられています。このBMI値が25を超えると肥満と認定されます。
沖縄県は野菜不足やファストフード等のアメリカ型食の影響による高脂肪食の過剰摂取、全国平均の約6% 増の割合で 長年にわたり 脂肪 を多く食べている地域であるそうです。またBMI値25以上の割合が男性約47%、女性26%で男女共に全国1位(2004年度 政府管掌健康保険)と日本の中で最も肥満が進行しています。糖尿病・肥満症の基盤要因には、夜型生活へのシフトや高度の自動車社会、僅かな気温日較差 等も考えられており、最近では、子どもの食生活にも影響が及び、小中学生の肥満児も急増しています。軽度の肥満(BMI25〜30)を来すだけでも糖尿病の発症リスクはなんと7倍にも増大することがわかっているそうです。
益崎教授は、昨年10月に琉球大学に着任し、沖縄県には肥満者が当たり前に存在することにとても驚いたそうです。

【研究内容】
ネズミを用いた実験をしたところ、肉食過剰・野菜不足を模倣した餌を与えたネズミの体は酸性に傾きました。また、酸性化したネズミでは体脂肪が増えやすく、短期間で糖尿病になるそうです。最近話題のゼロカロリー飲料やガム、スナック菓子等に含まれる人工甘味料を与えたネズミは高脂肪食を食べたがるようになり、人工甘味料と高脂肪食を一緒に摂取すると体脂肪がいっそう増加するという実験結果も得られているとのことです。
高脂肪食+人工甘味料はメタボリックシンドロームへと繋がり、若齢時の人工甘味料の曝露と成獣期の人工甘味料の曝露を比べてみると、成獣期では、あまり体重変化に影響はないが、若齢時だと高脂肪食肥満の感受性を高めるという興味深い発見をされています。子供のときの食事の重要性を改めて考えさせる実験結果です。

【今後の展望】
益崎教授は、大脳皮質から視床下部への投射が大きいヒトの場合では、視覚情報や雰囲気、過去の体験や記憶が食行動に大きな影響を与えており、天然には存在しない、人工的に作り出された高脂肪食の旨味や高塩分食の食感がヒトの食欲感知機構を破綻させる危険性に注目しています。
沖縄の肥満対策では、特に子供の頃からの食習慣に対する正しい知識の周知や食育活動が重要であると述べられています。受賞研究課題を琉球大学大学院医学研究科が 一丸となって進め、沖縄の深刻なメタボ社会を改善し、日本全体、東アジアへと その成果を広めていきたい との夢を話してくださいました。また、こうした研究に興味を持ち、琉球大学医学部に入学する学生や研究者・臨床医が増えることを強く期待されています。