第1回 『幸せな健康長寿復興プロジェクト』セミナー のご案内

AIM が繋ぐ免疫と代謝・循環器疾患
‐病態メカニズムの解明と治療法開発に向けた新しい視点‐

宮崎 徹 博士

東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター
分子病態医科学 教授

AIM (Apoptosis Inhibitor of Macrophage)は、マクロファージが酸化LDL を取り込むことによって生ずる核内受容体LXR/RXR の活性化に伴い産生・分泌され、マクロファージ自身のアポトーシスを抑制する分子として1999 年に発表した。

最近私たちは、AIM の脂肪細胞に対する新しい機能と作用メカニズムの一端を解明した。AIM はCD36 分子を介したエンドサイトーシスにより脂肪細胞内に取り込まれ、細胞質中で脂肪酸合成酵素(FAS)に結合することでその活性を抑制する。その結果、脂肪滴が遊離脂肪酸とグリセロールに分解(lipolysis)され、脂肪細胞の大きさが縮小する。また、FAS の活性低下により脂肪前駆細胞の成熟も抑制する。そのためAIM 欠損(AIM-/-)マウスでは、野生型マウス(AIM+/+)に比べ、高脂肪食(high fatdiet;HFD)負荷によって脂肪細胞のhypertrophy が亢進し、結果的に脂肪組織の重量や体重がより増大するが、精製したAIM タンパクを投与すると体重増加は抑制される。さらに、このAIM の脂肪細胞に対するlipolysis 機能が、慢性炎症の発症、ひいては肥満を引き金とする生活習慣病の疾患連鎖の確立に重要な役割をはたしていることも見出した。

今回の講演では、こうした肥満からインスリン抵抗性獲得に至る過程におけるAIM の重要性に加えて、AIM の免疫機能に対する全く新しい作用について紹介したい。これらの知見を元に、AIM が免疫と様々な疾患の病態メカニズムを繋いでいることを提唱すると共に、AIM 創薬による、メタボリックシンドロームをはじめとする慢性炎症を基盤とした様々な疾患に対する新規治療法開発の可能性を討議したい。

【参考文献】Miyazaki, T. et al. J. Exp. Med. 189:413 (1999); Arai, S. et al. Cell Metab.1: 201 (2005); Kurokawa, J. et al. Cell Metab. 11: 479 (2010); urokawa, J. et al.PNAS in press.

日時:平成23 年7 月20 日(水曜日)午後5時30分~
場所:医学部機器センターセミナー室

7月5日の報道ステーションでも取りあげられたメタボリックシンドローム発症との関係についてもお話しいただける予定です。
多数のご来聴をお待ちしております。

担当:遺伝医学 成富研二、要匡 (内線 1210)