精神病態医学・薬理学 合同セミナーのご案内

抗うつ薬による海馬歯状回の機能制御

- 脱成熟化現象に着目して -
久留米大学 医学部 薬理学
西 昭徳 教授

日時9月14日(金)午後5時~

会場臨床研究棟1階 大学院セミナー室

【講演要旨】
抗うつ薬作用機序の全容は未だ解明されておらず、その効果は十分ではない。最近、CaMKIIαHKOマウスで見出された未成熟歯状回(成熟顆粒細胞マーカーの発現低下と機能的未熟性を特徴とする)は、精神疾患の中間表現型として注目されている(Mol Brain 1:6,2008)。さらに、抗うつ薬SSRIの代表的薬物であるフルオキセチンの慢性投与により歯状回の未成熟化が誘導されることが明らかとなり、「フルオキセチンによる脱成熟歯状回の誘導」として報告されている(PNAS 107:8434-9,2010)。この結果は、抗うつ薬の作用機序に、歯状回での神経新生に加え、脱成熟歯状回の誘導が重要であることを示唆している。我々は、脱成熟歯状回ではドーパミンD1受容体の発現が増加することに着目し、ドーパミンD1受容体シグナルの機能的役割を検討している。本セミナーでは、抗うつ薬により誘導される歯状回成熟顆粒細胞の脱成熟化現象について概説し、ドーパミンD1受容体を中心とした最近の研究成果を紹介する。