2019年度 就任の挨拶

この度は医学部長に信任していただき、誠にありがとうございます。今後2年もよろしくお願いいたします。大屋祐輔理事・附属病院長、医学部・医学研究科執行部とともに、医学部・医学研究科・保健学研究科の発展に寄与する所存です。

1.医学部及び同附属病院の移転について
平成31年度概算要求として内閣府から、沖縄健康医療拠点整備経費約59億円が措置されました。一昨年の10月から、基本設計に入り、医学部及び同附属病院移転整備基本設計が終了し、本年度から本格的に実施設計に着手しています。平成30年3月に、宜野湾市土地開発公社による琉大用地の先行取得が完了し、平成31年度より、買い戻し手続きを開始します。2025年を目処に、医学部及び同附属病院を宜野湾市(平成27年3月に返還されたキャンプ瑞慶覧(西普天間住宅地区))に移転することを目指しております。この医学部及び同附属病院の移転について、国が目指す国際性と離島の特性を踏まえた沖縄健康医療拠点に相応しいキャンパス整備を目指し、全学を挙げて取り組むため、皆さまのご協力をお願いいたします。

2.教育面について
医学科は、一昨年の12月に、日本医学教育評価機構(JACME)による外部評価を受審し、昨年11月1日付けで評価基準に適合しているとして認定されました。認定期は、2018年11月1日から2025年10月31日までとなります。本評価におきまして、改善の提言を受けた事項については、組織的に見直すとともに、教職員及び学生へフィードバックしていき、皆様とともに、毎年良い教育プログラムとなるよう改善につとめてまいりたいと思います。また、医学科6年次に係る共用試験臨床参加型臨床実習後OSCE(POST CC OSCE)をこの秋に開始します。この3月の医師国家試験合格率が全国平均をかなり上回り、皆様及び学生さんの努力の賜物であり、たいへんにおめでたいことです。医科学研究では、海外・県外に飛び出す学生も多く、優秀な発表をしており、今年度の発表も素晴らしいものがありました。
保健学科はクオーター制が定着し、それを利用して保健学科学生を公的資金で2週間の短期留学に送り出しています。また、遠隔授業・招聘授業による単位互換の開始を行なっています。今後は、附属病院看護部との協力体制の構築を図りたいと思います。
大学院および人材育成については、文部科学省補助金事業として、「臨床研究マネジメント人材育成」、多様な新ニーズに対応する「がん専門医療人材(がんプロフェッショナル)」養成プラン、実践力と研究力を備えた法医学者育成事業が進められています。その結果、定員を充足する大学院生を迎えることができました。保健学研究科では公衆衛生学コースの設置を考えていきたいと思います。

3.国際交流
保健学研究科では国際化を推進しています。フィリピン大学、チェンマイ大学との学生交流や国費外国人留学生(フィリピン、ラオス、インドネシア)の受入を行なっています。2月には、フィリピン大学、ラオス国保健省、台北医学大学、インドネシア・アイルランガ大学、マタラム大学との国際シンポジウムを開催しました。延生大学から客員教授を招聘しています。
医学研究科・医学科としては、昨年の9月にシンガポールの南洋理工大学から副学部長らが琉球大学を訪問し、来年度から臨床実習での交流が始まります。また、東京理科大学、台北医学大学と共催で昨年3月に第3回国際バイオメディカル・インタフェース・シンポジウムを沖縄で開催し、今年3月には第4回を台湾新竹市の国立交通大学で行い、育成医学の中西教授が発表されています。

4.研究について
基盤研究Aを始めとする多数の科学研究費補助金を獲得し、また、概算要求事業として、「亜熱帯島嶼の時空間ゲノミクス」、「沖縄県地域医療拠点形成に向けた先端医学研究センターの設置」が走っています。さらに、「沖縄バイオインフォメーションバンク冷蔵試料管理システム」が整備されました。また、沖縄県の先端医療実用化推進事業やAMEDの「難治性疾患実用化研究事業」「臨床研究・治験推進研究事業」AMED「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業」、武田科学振興財団特定研究助成を活用しつつ整備を推進しています。今年度運営費交付金の一部を、産学連携等研究収入、寄附金などの教員一人当たりの額により、増減されています。医学部及び同附属病院の獲得額が一番多いのですが、皆様のますますのご尽力をお願いしたいところです。これらの外部資金の獲得等をもとに、クロスアポイントメント、人事交流を盛んにして、研究の底上げが必要になります。すでに、千葉大学からクロスアポイントメントで特命教授を採用し研究が始まっています。
昨年の優れた研究業績として、Blood, Cell Reports(内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座、いづれも筆頭著者), American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine(薬理学講座、責任著者), Diabetes, Circulation(先進ゲノム検査医学講座、共著者), Science(人体解剖学講座、共著者)などがありました。今年度もまた、素晴らしい雑誌への掲載をお願いいたします。

昨年も述べましたが、教育、研究、診療環境の整備は、大事です。ハラスメントの無い教育現場、診療現場を保つことは重要な責務であると考えています。最後ではございますが、皆様のご多幸と健康を祈念し、また、医学部及び同附属病院の発展を祈願します

 

平成31年4月2日
琉球大学医学部長・医学研究科長 石田 肇