ネアンデルタール人胸郭は、現生人類と比較して、 出生時からその特有の形態を示していることが明らかになった

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フランスのボルドー大学を中心とする国際共同研究チームに、琉球大学の研究者も参画し、ネアンデルタール乳幼児の深く短い胸郭形態は遺伝的に決定されていて、ネアンデルタール人の大きな体を支える高い代謝と関連する可能性があることを明らかにしました。研究成果は、国際学術誌Science Advances (IF 13.116)に2020年10月7日付で掲載されました。

個体発生研究は、絶滅した種の重要な生物学的情報を理解するための手がかりを提供します。現生人類と比較すると、ネアンデルタール成人の胸部はより短く、深く、そして広いことが分かっています。これはネアンデルタール人の体の大きさに関連しており、エネルギーと酸素がより必要であるという仮定に一致しています。これらの違いが出生時にすでに確立されているのか、発育中に後で現れるのかは不明でした。

この疑問を解決するために、仮想復元ツールと幾何学的形態計測を使用して、生まれてから約3歳までのネアンデルタール乳幼児肋骨の3D形態を復元しました。使用したのは、メスマイスカヤ1、ルムスティエ2、デデリエ1、ロックデマルサルの4個体です。

結果は、ネアンデルタール人の比較的深く短い胸郭が、他の種特有の特徴と同様に、出生時にすでに存在していたことを示しています。この形態は、ホモ・エレクトスとの共有原始形質を表している可能性があり、よりエネルギーが必要であることに関連しているかもしれません。

 

図 第一主成分は主に個体発生変異を示し、第二主成分で種間変異を示す。

D. García-Martínez, M. Bastir, A. Gómez-Olivencia, B. Maureille, L. Golovanova, V. Doronichev, T. Akazawa, O. Kondo, H. Ishida, D. Gascho, C. P. E. Zollikofer, M. P. de León, Y. Heuzé
Early development of the Neanderthal ribcage reveals a different body shape at birth compared to modern humans. Science Advances, 6, eabb4377 (2020).