【研究成果】共同研究による解明「もやもや病のリスク遺伝子RNF213の遺伝的特徴と拡散経路の推定」

もやもや病は東アジアの人類集団で有病率が高い脳血管障害である。この疾患にはRNF213遺伝子にあるリスク変異R4810Kが存在し、このリスク変異は東アジアでのみ観察される。日本では約9割の患者がこのリスク変異を持つという共通性がある一方で、その症状は多様である。

東京大学大学院理学系研究科の太田博樹教授と小金渕佳江助教(前琉球大学医学部先端医学研究センター特命助教)を中心とする共同チーム(北里大学、琉球大学、佐賀大学、統計数理研究所)は、もやもや病患者のRNF213遺伝子の配列をもとに集団遺伝学解析を行った。

その結果、リスク変異を持つRNF213遺伝子が互いにほぼ同じ配列で、このリスク変異が比較的最近、東アジアで誕生し、リスク変異は先史時代に東アジアの大陸部で誕生し、おそらく縄文時代晩期頃(約3千年前)に起こった渡来(大陸から列島への移住)に伴って列島内に広がったと示唆された。

もやもや病の症状の多様性が高いにもかかわらず、患者のRNF213配列が均質であったことは、症状の多様性が環境要因の影響によることを示唆する。またこのリスク変異の分布は人類の移住史と関連する。このような集団遺伝学的分析は、もやもや病の病態の理解に貢献する。

本研究は、文部科学省及び日本学術振興会の研究助成補助金、24370099、17H03738、17H05132、19H04526、19H05350(研究代表者:太田博樹)、16H06408(研究代表者:石田肇)(琉球大学大学院医学研究科人体解剖学講座教授)、24300109(研究代表者:間野修平)の支援を受けて行われた。
 

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<発表雑誌>
雑誌名:Annals of Human Genetics
論文タイトル︓An analysis of the demographic history of the risk allele R4810K in RNF213 of moyamoya disease
著者名︓Kae Koganebuchi, Kimitoshi Sato, Kiyotaka Fujii, Toshihiro Kumabe, Kuniaki Haneji, Takashi Toma, Hajime Ishida, Keiichiro Joh, Hidenobu Soejima, Shuhei Mano,Motoyuki Ogawa, Hiroki Oota*
DOI番号︓10.1111/ahg.12424
URL:https://doi.org/10.1111/ahg.12424

東京大学大学院理学系研究科・理学部HP