【研究成果】糖尿病治療薬による血液がん抑制効果の可能性 ~SGLT2阻害剤が超難治性の血液悪性腫瘍の増殖を抑える~

九州・沖縄地方における発症率が高い成人T細胞白血病(Adult T cell Leukemia. ATL)は進行が非常に早く、未だ決定的治療法がない超難治性の血液がんです。
琉球大学大学院医学研究科 内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座(第二内科)の仲地佐和子博士(血液グループリーダー)、岡本士毅博士(研究グループリーダー)、益崎裕章教授らの研究チームは がん細胞がブドウ糖(グルコース)を貪欲に要求する現象に注目した新しいがん治療戦略概念, Metabolic Oncologyを提唱し、糖尿病治療薬を活用する新しいATL治療法の可能性を見出しました。

研究グループは腎臓の近位尿細管に局在するブドウ糖トランスポーターのひとつ、sodium glucose cotransporter 2(SGLT2)が急性増殖期のATL細胞にも多量に発現していることを発見しました。そこで、尿糖排泄を促進し血糖値を下げる糖尿病治療薬として汎用されているSGLT2阻害剤を急性期のATL細胞に作用させると、がん細胞の細胞増殖周期が止まり、がん細胞の増殖が50%以上も抑制出来ることがわかりました。糖尿病治療薬を巧みに活用して、糖尿病とは直接の関係がないものの、進行の早い超悪性ATL細胞の増殖を遅らせるというユニークな治療法の樹立が期待できます。

本研究成果は2022年3月31日に国際医学誌Biomedicine and Pharmacotherapy (インパクトファクター:6.53点)にオンライン掲載されました。
 

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<論文情報>
論文タイトル:Impact of anti-diabetic sodium glucose cotransporter 2 inhibitors on tumor growth of intractable hematological malignancy in humans
「ヒト難治性血液悪性腫瘍の増殖抑制に対するSGLT2阻害剤のインパクト」
雑誌名:Biomedicine & Pharmacotherapy
著 者︓Sawako Nakachi、Shiki Okamoto、Keita Tamaki、Ikumi Nomura、
Mamiko Tomihama、Yukiko Nishi、Takuya Fukushima、Yuetsu Tanaka、
Satoko Morishima、Minako Imamura、Shiro Maeda、Masato Tsutsui、
Masayuki Matsushita、Hiroaki Masuzaki
DOI番号︓https://doi.org/10.1016/j.biopha.2022.112864
アブストラクトURL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0753332222002530?via%3Dihub