新任教授のご紹介~大学院医学研究科 生化学講座 黒柳 秀人教授~


 みなさま、こんにちは。2021年4月1日付で生化学講座の担当になりました黒柳秀人(くろやなぎ ひでひと)です。

私は愛知県の地方都市の出身です。山や田んぼに囲まれた数軒の集落で育ち、へき地の公立小学校、中学校を経て、片道1時間半をかけて公立高校に通っていました。世の中にどういう職業があるのか、自分がどういう仕事に向いているのか分からず、文系も含めすべての学部学科に進学可能な東京大学の理科二類に進みました。そこで出会ったのが、今日まで研究を続けている分子生物学です。

医学科を目指している多くの高校生のみなさんがそうであるように、私も高校では物理と化学を選択肢ました。高校で習った生物に出てくるものといえば、肉眼や顕微鏡で観察したものか目に見えない酵素の類い、いわゆる博物学だと思っていました。しかし、今日の大学で研究する最先端の生物学は、さまざまな原理に基づく機器を駆使し、遺伝情報を操ることで、生命現象を担う分子の形を明らかにし、物理学と化学と統計学の原理で説明しようとする、精巧な実験科学なのです。

生命現象を普遍の原理で説明する、そういう共通の目標があるからこそ、個々の研究者は誰もが納得のいく証明を目指します。そして、その一番の動機は、自分自身が納得できる答えを自分の手で見つけたい、ということなのです。

大学には、万人の疑問に答える研究をする好機が待っています。医師を目指す人も生命科学を志す人も、生命科学が何だかまだ分からない人も、ここにはみなさんの好奇心をかき立てる環境があります。先入観にとらわれず、さまざまなものに反応するアンテナを磨きながら、大学を目指して欲しいと思います。そして、私達の世代には思いもよらない新しい発想をもったみなさんと一緒に研究できる日が来ることを楽しみにしています。

医学部長 就任の挨拶

4 月1 日付けで医学部長・医学研究科長を拝命いたしました、筒井正人でございます。就任にあたり一言ご挨拶を申し上げます。

1. 医学部・医学研究科・病院の移転計画の推進

現在、医学部・医学研究科と病院は、4年後の2025(令和7)年の宜野湾市西普天間地区への移転に向けて、その準備が進められています。病院は建設工事が始まっており、医学部・医学研究科においては施設のヒアリングが進行中で、設計と施工の受注者が8月に決定する予定です。また、これまで病院と一体でCOVID-19 に対応してきた経験をふまえ、医学部・医学研究科においても、密を避けられる広い講義室や学生・職員食堂を検討していただきたいと思っております。皆様の様々な要望を丁寧にくみ上げて、皆様が納得できる施設ができるように尽力いたします。

 

2. 連携強化による保健学科と医学研究科の発展

保健学科と医学研究科の連携の強化は、両者の教育・研究の活性化に資すると思います。今年度から保健学研究科・保健学科の講義を医学研究科と共同で実施することにしました。医学研究科・医学科の講義を保健学科と共同で実施することも計画しています。各種委員会活動については保健学科で負担が大きい場合は医学研究科が担当します。また、西普天間では保健学科の実験室の確保のため機器センターの有効利用を検討いたします。西普天間では保健学科と医学研究科が同じ研究棟で仕事をすることになり物理的にも連携が深まります。その布石として着実に連携を強化していきたいと思います。

 

3. 医学研究科・保健学科の教育の充実

教育面においては、COVID-19 の収束が見込めない中、遠隔による講義が学生の修学や心身に与える影響が危惧されます。その対策として、4月から対面あるいは対面とWEBのハイブリッドの講義を行います。さらに、指導教員、各種委員会、医学教育企画室の活動を中心として一層の学生支援をいたします。今年の国家試験の成績は、保健学科、医学科ともに良かったです。保健学科は、看護師、保健師、助産師の合格率がいずれも100%でした。医学科も、新卒と既卒をあわせて133名が受験し不合格者は6名だけで(合格率95.5%)、全国80大学中19位で、過去10年間で最も良い成績でした。これらの結果は本学部の教育が優れていることを示唆していると思います。

 

4. 医学研究科・保健学科の研究の活性化

研究においては外部資金の獲得が必要不可欠です。そのために、各省庁、沖縄県、大学本部、企業等に頻繁に出向いて交渉し情報を入手したいと思います。臨床系の社会人大学院生は、仕事が忙しく、研究費も十分ではないため、研究がなかなか進まない状況にあります。その支援のため、4月から実験実習機器センターにおいてダイレクトシークエンスやゲノム解析などの研究支援を開始します。今後、研究支援体制をさらに拡充・強化していきます。2016(平成28)年に設立された先端医学研究センターは、令和4年度から始まる第4期中期目標・中期計画期間も引き続き発展するように、そして、全学的・恒久的な組織になるように取り組んでまいります。

 

5. 病院と一体となった医学部・医学研究科の発展

病院は1年前に医学部から独立した組織になりました。それを受けて医学部長の役割は変化し、病院と協調して医学部の管理運営を担うことになりました。そのため、 医学科長の皮膚科学講座 高橋健造教授および副医学部長の消化器・腫瘍外科学講座 高槻光寿教授には、臨床系講座の教授として病院との連携にも力を発揮していただきます。病院との協調性を大切にして医学部・医学研究科・病院が一体となって発展するように尽力して参ります。

 

最後に、『将来に希望を持てる、魅力ある医学部・医学研究科・病院』になるよう誠心誠意努力することをお約束し、私のご挨拶とさせていただきます。

2021年4月1日

琉球大学医学部長・大学院医学研究科長
筒井 正人

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 先進医療創成科学講座 山下 暁朗教授~


 みなさま、初めまして。令和3年度2月1日付けで医学研究科先進医療創成科学講座(Department of Investigative Medicine)に着任いたしました山下暁朗です。

私は医学研究を25年間続けてきましたが、医師ではありません。神戸市の公立高校を卒業し、神奈川県にある日本大学農獣医学部(現:生物資源科学部)で、分子生物学に出会いました。卒業研究を機に、横浜市立大学医学部第二生化学教室(大野茂男教授)に参加し、大学院に進学し、博士(医学)を平成13年に取得しました。テキサス大学のAnn-Bin Shyu研究室に留学後、平成17年からは若手研究者の登竜門の一つである戦略的創造研究推進事業「さきがけ」専任研究者として、研究を行いました。平成22年からは、横浜市立大学医学部の教員となり、10年に渡り分子細胞生物学教育に携わっています。

これまで、海に近いところに住んできましたので、琉球大学での教育と研究生活を楽しみにしています。研究については、数年前からそれまでの研究成果を企業導出しています。純粋な学問としての基礎研究も大好きですが、やはり、中学生・高校生にも「こんな研究をしている」と言うことを分かってもらえるような創薬につながる研究をおこない、新しい医療を創って行こうとしています。

これから医学科を目指す高校生の皆さんは、高い目標を持って厳しい選抜試験をくぐり抜けてきます。しかし、入学してからが本番です。医師は「自ら学び、考え続ける」必要のある職業です。私の近しい医師で、20年目、40年目の先生であっても、「学ばないというのは、罪である(患者の不利益を生む)」との意識を持って日々の臨床に向かっています。「自ら学び、考え続ける」ことが出来るみなさんは日々成長し、正の連鎖により優れた医師ことが出来ます。私は基礎研究者であり、基礎医学教育を担当します。医学は生命の仕組みを理解するための科学分野でもあります。基礎教育で培う、科学的根拠と科学的思考は、将来、診察結果から医学的判断を行い患者の「未来を変える」治療を行う力の礎となる(でも、学生当時は気がつかなかった)と多くの若手医師が私に語ってくれました。

琉球大学医学部医学科で、皆さんにお会いできることを楽しみにしています。是非、私の研究室に遊びに来てください。歓迎します。

2021年 医学部長年頭の挨拶

皆様、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

昨年はCOVID-19の感染拡大を受けて、教育、研究及び診療への対応に追われたかと思います。その中でも、たくさんの成果が上がりました。その成果と今年の抱負を述べて、皆様に新年の挨拶を申し上げたいと思います。

1.教育面について

活動制限を受けて、オンデマンド型のWebClassを活用した遠隔授業か、ZoomやMicrosoft Teamsを用いた双方向型のいずれかの遠隔授業を実施しました。そのため、オンライン授業等の実施にあたり、学生への連絡、出欠の方法、システムの操作など運用マニュアルを整え、令和2年4月7日に科目担当教員向けの説明会を実施しております。遠隔授業に対応するため、貸出用のWifiルータ等も用意し通信環境が整っていない学生に限り、講義室等を開放して対応しました。

臨床実習が休止された期間の一部は動画コンテンツにより、症例検討を中心としたオンライン実習を実施しました(令和2年5月11日~5月22日)。その後は、病院関係者のご尽力により、臨床実習を続けることができています。医学科は、臨床実習後OSCEが令和2年度から正式実施となりましたが、これも無事終了しました。解剖学実習は、保健学科との合同実習ができなくなりましたが、令和2年12月21日に無事終了しました。

遠隔授業の事例ですが、組織学実習は、概要説明をリモートで行い、実習時間の短縮化を図りました。さらに前半・後半の2グループに分けて定員の50%以下での対面実習を継続し、一方、バーチャルスライド活用を促進しています。試験は、一部の科目については、Web上での試験を実施しました。出題の順序をランダムにする、1問あたりの回答時間を制限する、WEBカメラをオンにして受験させる、出題問題を約400問プールして、その中から25問をランダムに出題など、極力公平性を担保しています。来年度はハイブリッド授業が可能か?検討課題です。

令和3年度入学者選抜においても、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う追試験の実施をはじめ感染防止対策を徹底した入試の実施を行うため、ご協力をお願いしたいと思います。

2.国際交流

国際交流はほぼ止まってしまいました。それでも、保健学研究科では国際化を推進しています。フィリピン大学、チェンマイ大学との学生交流や国費外国人留学生(フィリピン、ラオス、インドネシア)の受入を行なっています。

医学研究科・医学科としては、昨年度は、医科学研究では、昨年度、米国コロラド大学医学部、ハーバード大学医学部、ベルギーサンリュック病院、シンガポール南洋理工大学、台湾チメイ病院に3年次学生を派遣し、令和2年2月末に無事帰国しています。今年度は、海外派遣は中止になりました。台湾との国際交流も中止になっています。

3.研究について

基盤研究Aを始めとする多数の科学研究費補助金を獲得し、また、概算要求事業として、「亜熱帯島嶼の時空間ゲノミクス」、「沖縄県地域医療拠点形成に向けた先端医学研究センターの設置」が走っています。さらに、「沖縄バイオインフォメーションバンク試料解析保管システム」が補正予算で整備されます。また、沖縄県の先端医療実用化推進事業やAMEDの「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発)」、「中央IRB促進事業」、「女性の健康の包括的支援実用化研究事業-Wise」および武田科学振興財団特定研究助成を活用しつつ整備を推進しています。

これらをもとに、多数の論文が出版され、プレスリリースを行ってもらいました。どんどん、アウトリーチも進めていければと思います。

また、クロスアポイントメントとして、2名の特命教授を迎えました。合計4名になりました。先進医療創成科学講座を設置し、令和3年2月1日に教授をお迎えします。また、上原キャンパス事務部に企画・研究推進室を設置し、事務からのバップアップ体制を作りました。

4.医学部及び病院の移転について

令和2年度第3次補正として、54.8億円、令和3年度概算要求として、沖縄健康医療拠点整備経費が措置され、合計約139億円となりました。令和2年度には土地取得を進めていて、合計で約16haの敷地を取得予定です。病院棟は建設が始まり、研究棟・講義実習棟の実施設計を進めます。 この医学部及び病院の移転について、国が目指す国際性と離島の特性を踏まえた沖縄健康医療拠点に相応しいキャンパス整備を目指し、全学を挙げて取り組むため、皆さまのご協力をお願いいたします。

毎年述べていますが、教育、研究、診療環境の整備は、大事であり、ハラスメントの無い教育現場、診療現場を保つことは重要な責務であると考えています。特に医学部・病院、つまり上原キャンパス(上原事業場)は、大学全体の約3分の2の教職員が働く大所帯ですので、働き方改革も行っていく必要があります。

私の任期は今年3月に終了しますので、令和3年度以降の取組は病院長と次期医学部長に引き継ぎます。

最後に、皆様のご多幸と健康を祈念し、また、医学部及び病院の発展を祈願し、年頭の挨拶といたします。

2021(令和3)年1月4日

琉球大学医学部長 石田 肇

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 胸部心臓血管外科学講座 古川 浩二郎教授~


 令和2年(2020年)9月1日付で琉球大学胸部心臓血管外科(第二外科)教授を拝命しました古川浩二郎と申します。皆様、どうぞよろしくお願い致します。

私は、昭和63年(1988年)に佐賀医科大学を卒業後、同大学の胸部心臓血管外科教室に入局し、心臓・血管・肺の外科学を専攻しました。その後、佐賀大学およびその関連病院にて心臓血管外科の臨床研修および研究を一心に行って参りました。そして、この度、伝統ある琉球大学胸部心臓血管外科学教室の一員に加えていただきました。

琉球大学胸部心臓血管外科学教室は、昭和58年(1983年)に開講し、初代 草場 昭 教授、第二代 古謝景春 教授、そして第三代 國吉幸男 教授が作ってこられた素晴らしい教室です。臨床・教育・研究と大学の使命である三本柱が大変バランスよく行われています。その証しとして、現在沖縄で活躍されている多くの人材を輩出しています。そして、その伝統の上に私がこれまで培ってきた事を少しでも積み上げるべく精進していく覚悟です。

以下に教室の特色をご紹介します。

臨床:通常の心臓血管手術はすべて万遍なく行っており、かつ現在の最先端治療である経カテーテル大動脈弁置換術(症例数は国立大学の中で全国2位)、大動脈ステントグラフト、重症心不全に対する人工心臓治療、低侵襲心臓手術などを精力的に行っています。また、沖縄で患者さんの多いBudd-Chiari症候群に対する外科治療の実績は世界でもトップクラスです。そして、これから私のライフワーク一つである弁形成術(自己弁温存大動脈基部置換術、大動脈弁形成術、僧帽弁形成術)や本邦ではいまだ症例数の少ない肥大型心筋症に対する心筋切除術にも力をいれていきます。

研究:大動脈手術時に稀に合併する脊髄障害はいまだに世界的にも未解決の分野です。その発症のメカニズムを臨床および基礎研究にて解明し、その合併症の予防を目指しています。また、Budd-Chiari症候群の発生メカニズムやより侵襲の少ない外科手術開発も行っています。今後、私が佐賀大学にて経験した再生医療技術を応用し臨床に直結する重症心不全に対する心筋再生や重症虚血肢に対する血管再生などの研究を開始したいと考えています。

教育:大学の三つの使命の内、最も大切なことと考えています。医学生~研修医~専攻医~専門医にいたる医師人生においてシームレスな教育を行い社会に有用な人材を一人でも多く育成していきます。そのために、常にお互いを刺激、高め合える教室作りを目指します。私の教育の理念は、患者の立場に立って考えることができる心を持ちかつグローバルにものを考え(世界レベルの医療知識・技術を習得することにより得られる)、そして常に目の前の患者さんに全力を尽くすという信念をもった医療人を育成することです。

今後の目標は、心臓血管病の患者さんの医療を沖縄で完結するだけでなく、他県からも患者さんや医療関係者が訪れる様な安心・安全かつ先進的な医療を琉球大学にて実現していくことです。その目標に向け医局員一丸となり取り組んで参ります。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 腫瘍病理学講座 和田 直樹教授~


 令和2年8月1日付で琉球大学大学院医学研究科腫瘍病理学講座教授を拝命しました和田直樹と申します。

私は大阪市立大学を卒業後、一貫して病理医としての道を大学(大阪大学・大阪市立大学)および大学の主要関連病院で歩んでまいりました。この度、一貫して病理医として歩んでまいりました経験を琉球大学の指導教員として活かす機会を戴きました。

当講座は病理診断・病理学教育・病理学研究を担います。病理診断は、治療方針の決定や手術の妥当性の評価など、医療の根幹に関わる医行為であり、的確な病理診断は様々な疾患の治療の基本となります。病理診断を通して、医療の質の向上に貢献します。

大学医学部における教育の使命は良い医師を世に送り出すことです。良い医師には患者の病的状態を的確に把握することが求められますので、病態や疾患メカニズムの理解を深める病理学教育を進めます。病理学研究では実際の病理診断で経験する症例に立脚した研究を行うことが可能であり、疾患の予後を予測するためや適切な治療に繋がる特性を把握するために研究を進め、病理診断時に何らかのメッセージを発することができるような研究をしたいと思っております。

初代 伊藤悦男 教授、第2代 吉見直己 教授が築いてこられた腫瘍病理学講座を引き継がせていただいたことを大変光栄に存じます。リレーに例えるとバトンを引き継がせていただいた状況ですが、バトンには熱い情熱を込めていただいておりますので、そのバトンに私の熱意も加えて走らせていただければと存じます。そして、そのバトンを一緒に持って走り続けていく仲間も増やしていきたいと考えております。勿論、走り方は仲間と一緒に冷静な頭脳をもって考えてまいります。私が座右の銘にしている「Cool Head,but Warm Heart」は有名な経済学者のお言葉ですが、病理学にも当てはまります。このスローガンのもと、私は沖縄の地に根ざし発展する病理学の確立に邁進したいと考えております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 顎顔面口腔機能再建学講座 中村 博幸教授~


 令和2年3月1日付で医学部顎顔面口腔機能再建学講座の教授を拝命しました中村博幸と申します。
 伝統ある講座をさらに発展させ、広く沖縄の医療に貢献できるよう努力してまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

生まれは富山県で、大学は九州歯科大学、卒業後は慶応義塾大学、東大医科学研究所、米国スクリプス研究所、英国インペリアルカレッジロンドン、東京医科歯科大学、国立長寿研究所、金沢大学と国内外多施設を移動し、一般的な歯科医とは異なる貴重な経験をさせて頂きました。最終到着地は琉球大学となり、このご縁を大切に沖縄のために懸命に働きたいと思っています。

近年の日本の人口の超高齢化に伴い歯科へのニーズは劇的に変化しています。従来型の歯科医療に加えて、口腔健康から全身健康に寄与する歯科医療、さらに医科と連携しながら急性期、回復期、維持期、在宅介護そして終末期医療をサポートする口腔機能管理ひいては栄養・感染管理に関わる歯科医療が求められています。歯学部のない県では医学部歯科口腔外科が唯一の歯科医療教育機関であり、医学部学生や卒後歯科医師を対象として、歯科保健医療のパラダイムシフトに対応した教育システムを構築することが重要であると考えています。医学部歯科口腔外科は、医師と歯科医師の両方を教育することから、医科歯科連携の推進において最適の場所であり、この利点を最大限に活用したいと思います。

また、沖縄県の永久歯むし歯罹患本数は全国最下位です。その背景には、個人・地域格差による口腔衛生管理不足などが理由であるとされています。また、咬む力や舌などの口腔機能の維持は超高齢社会で満足な生活を過ごすためにも重要です。県民の生活向上のためには、口腔機能を維持できるような環境・仕組みを沖縄県並びに歯科医師会、琉球大学歯科口腔外科、県内病院歯科口腔外科、各関連施設が一体となって推進しなければなりません。今後は、地域医療、行政との連携体制を構築し、対話からニーズを丁寧にもれなく抽出することにより、琉球大学歯科口腔外科に求められている役割を懸命に果たしていきたいと考えています。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

新任教授のご紹介~琉球大学医学部附属病院周産母子センター 銘苅 桂子教授~


 はじめまして。
琉球大学医学部附属病院周産母子センター教授を拝命いたしました、銘苅桂子と申します。

沖縄生まれ、沖縄育ち。中学校は米軍基地の解放地にあり、雨の日は、まだ整備されていない泥だらけの道を通いました。平成11年に琉球大学医学部医学科を卒業し、産婦人科医の門を叩きました。その頃は、子供を持つ女性医師が第一線で働くことはかなり困難でしたし、いわゆる、「24時間働ける」医師でなければ、一人前の研修すら受けられなかった時代です。そのような中で乳児を抱えて研修医となったのですから、無謀としか言いようがありません。それがここまでやってこれたのは、絶対的な家族の支えと、指導医のおかげです。

私の担当する生殖医療の現場では、不妊に悩むカップルが、出口の見えないトンネルを抜けようと必死に頑張っています。子宮筋腫や子宮内膜症は、辛い月経痛や貧血の原因であり、腹腔鏡手術という小さな傷で摘出することで、劇的に楽になることがあります。一方で、女性の社会進出は、女性の生殖に関わる分野に歪みをきたし、症状は複雑化しています。正解を見極めるには、一人一人の希望に耳を傾け、最新のエビデンスと最良の技術を駆使したテイラーメイド医療が必要です。そして、そういった女性に寄り添い、治療を継続していくために、女性医師は大きな役割を果たしているのです。

女性活躍の推進は医療の現場でも求められています。しかしながら、大学病院という過酷な現場で、育児をしながら女性医師が仕事を継続するのは本当に大変なことです。家族を想うように患者さんを想い、治療に奮闘する彼女たちが、「過酷」を理由に立ち去ることがないよう、医療現場の働き方改革と、教育の両輪で、共に成長していきたいと思います。同時に、生殖医療・産婦人科内視鏡下手術のさらなるレベル向上と良質で満足度の高い医療を提供、そして、沖縄県内における女性研究者・医師のキャリア教育にも尽力して参ります。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

新任教授のご紹介~医学部保健学科 成人・がん看護学分野 照屋 典子教授~

令和元年6月1日付で、保健学科 成人・老年看護学講座の教授を拝命しました照屋典子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私は、琉球大学医学部保健学科卒業後、琉球大学大学院保健学研究科修士課程へ進学し、大学院修了後は、県立病院、総合病院等で10年間看護師、助産師として勤務いたしました。

平成16年、前任の砂川洋子教授より、母校で看護基礎教育に携わってみないかとのお声かけがご縁で、保健学科 成人・老年看護学講座の助手に着任しました。その後、砂川教授のもと、助教として学部教育や大学院におけるがん看護専門看護師養成、九州がんプロ養成プランによる臨床ナースの継続教育、大学間連携事業における共同教育システムの構築、一般市民への緩和ケアに関する普及啓発等、さまざまな教育、研究、地域貢献活動に関わらせていただき、貴重な経験や学びを得ました。

今の医療現場を取り巻く環境は、急速な少子超高齢化、医療技術の進歩、情報化社会の到来など、私が就職した30年前とは大きく異なり、医療の受け手側である国民のニーズも多様化・複雑化しています。

看護は、あらゆる年代の人々やその家族、地域社会を対象とし、健康の増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、その人の生涯を通して、最期までその人らしい生が全うできるように援助することを目的としています。どのような健康状態であっても、その人らしい“暮らし”を支えるために、看護職は「医療」と「生活」の視点からマネジメントし、保健・医療・福祉をつなぐ役割も担っています。これまで主流であった“病院で働くナース”から“地域で働くナース”へのパラダイムシフトによって、さまざまな現場で活躍できる看護職の育成が必須であると考えます。とくに、国民の2人に1人が罹患するがんにおいては、治療の複雑化・長期化に伴い、より専門性の高い看護の提供が求められており、島嶼を抱える沖縄県では、がん看護専門看護師のさらなる育成が急務とされています。この先10年、20年後を見据え、 “将来の保健医療分野のリーダーとなる人材育成”及び “質の高いがん看護に寄与し得る専門看護師育成”に取り組んでまいりたいと思います。

また、保健学科では “将来、国際医療の現場で活躍できる人材育成”を掲げております。フィリピン大学やチェンマイ大学等との国際交流協定を締結し、毎年、チェンマイ大学との学生間国際交流も活発に行っております。今後も国際交流や研究活動を通して、グローバルな視点をもつリーダー育成に力を注いでいきたいと思います。微力ではございますが、沖縄の看護、保健医療の質向上及び未来を担う人材育成に貢献できるよう努力する所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 整形外科学講座 西田康太郎 教授~

皆さんこんにちは。令和元年7月に、縁あって琉球大学整形外科学教室の第3代教授に就任いたしました西田康太郎と申します。私は1992年に鳥取大学医学部を卒業し、神戸大学整形外科学教室に入局いたしました。研修の後、大学院での基礎研究の延長として1996年から3年半にわたってPittsburgh大学整形外科での留学生活を経験し、2001年から神戸大学整形外科に戻りました。神戸大学では脊椎外科を専門として医師あるいは研究者として研鑽を積んで参りました。このたび、初代茨木邦夫教授、第2代金谷文則教授が築いて来られた教室を引き継がせていただいたことを大変光栄に存じます。

 

整形外科は運動器の治療・研究を行う診療科です。運動器とは、我々の体を自由に動かすために必要な脊椎、四肢骨、関節といった骨格にはじまり、それを動かし支持する筋肉や靭帯と神経系から成り立っています。対象となる疾患は非常に幅広く、小児の発達障害や変形から高齢者の変性疾患まで広い年齢層にわたります。具体的には骨折や捻挫などの外傷やスポーツ障害、骨軟部の腫瘍性疾患から骨粗鬆症、四肢の関節障害から関節リウマチ、頚椎から骨盤に至る脊椎/脊髄障害から末梢神経障害まで実に多様な疾患が含まれます。手術手技に関しても、手の外科や脊椎硬膜内腫瘍などに代表される非常に繊細なmicrosurgeryから、骨接合、人工関節や脊柱変形矯正に代表されるダイナミックな手術まで様々な手術が存在します。高齢社会の到来により、健康上の問題なく日常生活を送れる健康寿命と、実際の平均寿命との乖離が大きな社会問題となっていますが、健康寿命を短くする最も大きな原因が運動器の障害です。このように整形外科のニーズは高まる一方であり、より多くの力を必要としています。

 

私達は運動器の治療を受け持つプロとして専門性を高め、さらに研鑽を積んでいく必要性に駆られています。そのために、まずは目の前の患者さんを治療できるよう、個々の医師の診療能力の向上が不可欠です。また、医師をとりまく環境や協力体制を整備し、チームとして結束できなければ個々の医師の力を発揮することはできません。大学病院としてのもう一つの大きな目標は、目の前にいない患者さんの治療にも貢献することです。個々の医師が直接治療できる患者さんの数はたかが知れています。現時点で目の前にいない患者さんのために、診療や研究から得た知見を可能な限り広くわかりやすい形で発信することが必要です。さらに未来の患者さんのために、新たな治療を開発し、次世代を担う優れた整形外科医を育成することも重要な責務と考えます。

 

日本最南端の沖縄には大いなる可能性を感じています。温暖な気候と美しい自然は多くの人々を惹きつけます。那覇空港には第2滑走路が整備され国際物流のハブ空港、アジアの玄関口としてさらに発展が見込まれています。今やハワイより多くの観光客が訪れるようになりそうで、海外からも多数の観光客が訪れています。観光の話ばかりではありません。高齢社会の中においても沖縄は、人口の自然増加率が国内で唯一増えている稀有な地域でもあり、いろんな意味で大きく成長が見込まれています。大学病院の移転計画や、最先端の医療設備も着実に整いつつあります。まずは沖縄で完結できる最高水準の医療を提供すること、さらに独自性のある医療を展開し最先端を目指すこと、そして世界へ、私たちの挑戦は今始まったばかりです。皆さんどうぞ宜しくお願いいたします。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 衛生学・公衆衛生学講座 中村幸志 教授~

令和元年7月1日付で衛生学・公衆衛生学講座の教授を拝命しました中村幸志(なかむらこうし)と申します。琉球大学の一員に加えていただけたことを大変光栄に思います。

 

私は、自治医科大学を卒業後、郷里の滋賀県の病院や診療所で一般内科を中心にプライマリケアの診療に従事しました。全く想像もしていなかった現在の仕事に向けて歩み出すきっかけは、卒後5年目から勤務した診療所(一人医師)にて「疾病予防」「地域の人々(集団)」「組織的対策」「社会の中の医療」などへの関心が芽生えたことです。これらの言葉と関係がある公衆衛生学を学びたいと思い、勤務の傍ら地元の滋賀医科大学福祉保健医学講座(現公衆衛生学部門)の研究生となり、講座の柱であった循環器系疾患予防の疫学(一般の人集団を観察して、疾病発症率やその関連要因を探り、対策につなげること)を学び始めました。関心が高じて、へき地勤務の義務が明けた後に臨床を辞め、滋賀医科大学に移って本格的に疫学研究に従事しました。学位取得後に豪州The George Institute、金沢医科大学の類似の部門で循環器系疾患予防の疫学研究を深めつつ、公衆衛生学・疫学の教育の研鑽も積みました。直近の所属である北海道大学ではがん、母子、高齢者、基礎系分野との異分野融合の疫学研究にも参画し、研究の幅を広げることができました。いずれの大学でもよき指導者・同僚・研究スタッフにめぐり会えたおかげでここまで成長できたと感謝していますが、疫学研究はチームプレーで成り立っているところにおもしろさを感じています。研究フィールドである地域や事業所で課題を見出して研究に昇華させ、その成果を健康づくり事業などの実践に活かしてきたこともこれまでの活動の特徴です。

 

ご縁あって赴いた沖縄県で、環境・生活習慣と健康との関係に注目した研究と実践を展開し、その過程で公衆衛生を担う医師や他職種を育成し、この方面から「安心して暮らせるまちづくり」に貢献していきます。医学の中にはこのような分野があることを知り、興味を持って一緒に活動していただける仲間が増えることを願っています。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 消化器・腫瘍外科学講座 高槻光寿 教授~

本年7月1日付で消化器・腫瘍外科学(第一外科)の教授を拝命しました高槻光寿と申します。どうぞよろしくお願いします。

私は大分県の佐伯市上浦町という宮崎県との県境、人口2000名ほどの小さな町で生まれ育ちました。高校は佐伯鶴城高校という知る人ぞ知るスポーツの名門校で、広島カープの前監督である野村謙二郎氏が私のふたつ上の先輩で、私の同級生は大分県代表として甲子園ベスト8(!)でした。ちなみに私は柔道部でしたが、、、。沖縄は全くの初めての土地ですが、特に琉大周辺は私の故郷を思わせるような原生林や自然が多く、親近感を覚えております。

大学は長崎大学医学部に進学し、「病気の人を自らの“手”で治したい」という思いから外科医の道を選択しました。当時は現在のようなスーパーローテートによる研修期間はなく、就職と同時に専攻科を決めるシステムであり、移植・消化器外科に入局し、一般消化器外科の修練を積んでおりました。そして医師になって4年目に突然「長崎大学でも生体肝移植を始めるので、京都大学に勉強に行け」と言われ、当時から最も生体肝移植を施行していた京都大学移植外科に派遣され、世界的にも著名な田中紘一先生のもとで非常に厳しい指導をいただきました。当時の京都大学は全国から私のような立場で派遣されている若手医師が大勢おり、多忙ながらもワイワイと楽しく仕事しておりました。その後、おもに肝胆膵外科を専攻し、長崎大学で生体肝移植導入などに関わり、2001年(33歳)より今度は台湾の高雄長庚紀念病院外科に留学して2年間、みっちりと肝臓外科の手術を勉強しました。この施設にはアジアで初めて肝移植を成功させた陳隆肇先生がおられ、日本の医師免許で存分に執刀させていただけました。肝臓のみならずあらゆる手術症例が豊富で、非常に充実した留学生活でした。

長崎に戻ってからは、兼松隆之名誉教授や現在の江口晋教授の指導のもと、自ら手術をこなす一方で後進の育成に努め、臨床・研究・教育の実績が認められ、このたび縁あって琉球大学の指導教員となりました。人生では「よき師」「よき友」に恵まれることが重要です。与えられた環境でベストを尽くせば、自然とよい出会いに恵まれ、充実した人生を送ることができます。全く縁もゆかりもない土地ですが、残りの外科医としての人生を沖縄に捧げるつもりでやってまいりました。ぜひみなさんと沖縄の医療をさらに発展させていきたいと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 システム生理学講座 宮里 実 教授~

初めまして、平成31年4月1日付けでシステム生理学講座の教授を拝命しました宮里実と申します。平成最後、また令和元年、まさしく記念すべき年の就任を大変光栄に思っております。

私は、平成5年に本学医学科を卒業し、ただちに本学(母校)泌尿器科に入局しました。その後、25年にわたり泌尿器科医として臨床の外科医として診療にあたってまいりました。そういう私が、なぜ母校の基礎講座の教授になったか、まずそこから説明したいと思います。研修医時代は東京の小児病院(清瀬小児病院)で過ごしたのですが、そこで生涯の恩師と出会うことになりました。「10年先を見据えて過ごしなさい。」と叩き込まれました。また、こどもの先天性疾患を通して、病態(生理)に基づいて、10年、20年先を見据えて診療にあたる大切さを学びました。その後は、一泌尿器科医として泌尿器科の診療を一心不乱にこなしてきました。その中で、研修医時代に叩き込こまれたことを「座右の銘」として、知らず知らずのうちに「生理学」を追求してきたのだと思います。そのなかで、特に排尿生理に興味を持ちました。2006年から2年間排尿生理、薬理で有名な米国ピッツバーグ大学で遺伝子治療、排尿の新たな創薬開発の研究に携わりました。2009年から2年間東北大学でも臨床研究の幅を広げました。排尿生理を通して神経生理学を学び、25年という月日が過ぎたとき、臨床、研究はパフォーマンスの違いこそあれ、根幹にあるものは不変であるという感覚をもちました。

現役最後は母校、後輩のために過ごしたいという思いもいつしか芽生えておりました。そして、50歳を迎え、男子の本懐を遂げるべく、基礎講座への転身を決意致しました。とはいえ、臨床医であることに変わりはなく、二刀流で新たな生理学の境地を切り開きたいとも思っています。ノーベル医学生理学賞といわれるように、生理学は医学の根幹をなすものです。本学医学部を目指す高校生諸君がこのホームページを見て、何かを感じて頂けたら望外の喜びです。母校の後輩、また縁あって琉球大学へ集った学生、研究者の皆様とともに、医学の進歩に貢献したいと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

平成30年度オープンキャンパスが開催されました


2018年7月14日オープンキャンパスが開催されました。 この続きを読む…

肺高血圧の成因の解明に成功:骨髄の一酸化窒素が関与(薬理学講座)

肺高血圧は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が上昇して右心不全と早期死亡をきたす疾患です。肺高血圧の予後は癌全体の予後と同等かそれよりも悪く当該疾患の克服は喫緊の課題となっています。しかし、その成因は不明な点が多く、有効な治療法はほとんどないのが現状です。私達は、ヒトおよびマウスを用いた研究において、骨髄の一酸化窒素合成酵素(NOSs)系が肺高血圧において重要な保護的役割を果たしていることを見出しました。この結果は、骨髄NOSs系が肺高血圧における新しい治療標的であることを示唆しており、今後 私達の知見を踏まえて 肺高血圧に対する全く新しい治療法が開発されることが期待されます。本研究は、琉球大学、産業医科大学、長崎大学、および東北大学との共同研究です。論文は呼吸器分野のトップジャーナルであるAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌 (インパクトファクター 15.24)(2018年7月15日号)に掲載されました。

【論文タイトル】
  肺高血圧における骨髄一酸化窒素合成酵素系の保護的役割

【著者】
  生越貴明1),筒井正人(責任著者)2,城戸貴志1),坂梨まゆ子2),内藤圭祐1)
小田桂士1), 石本裕士1,3), 山田壮亮4),王克鏞5),豊平由美子6),和泉弘人7)
益崎裕章8),下川宏明9),柳原延章6), 矢寺和博1), 迎 寛1,3)

【所属】
  1)産業医科大学医学部呼吸器内科学
  2)琉球大学大学院医学研究科薬理学
  3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学
  4)産業医科大学医学部第二病理学
  5)産業医科大学共同利用研究センター
  6)産業医科大学医学部薬理学
  7)産業医科大学産業生態科学研究所呼吸病態学
  8)琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座
  9)東北大学大学院医学系研究科循環器内科学

【研究の背景】
  肺高血圧は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が上昇して右心不全と早期死亡をきたす疾患です。肺高血圧は、肺動脈が原因で生じるもの(第1群)、左心疾患によるもの(第2群)、呼吸器疾患/低酸素によるもの(第3群)、血栓によるもの(第4群)、および複合的要因によるもの(第5群)の5群に分類されます。第1群の肺動脈性肺高血圧は難病に指定されているまれな疾患ですが、5群すべてを含めると肺高血圧患者は世界に1億人いることが推定されており肺高血圧は患者数が多い病気です。深刻なことに、肺高血圧の予後は癌全体の予後と同等かそれよりも悪く、当該疾患の克服は喫緊の課題となっています。しかし、その成因が良く分かっていないために治療法の開発が遅々として進まず、有効な治療法はほとんどないのが現状です。

一酸化窒素(NO)はヒト生体内においてNO合成酵素(NOSs)から合成されるガス状生理活性物質です。NOSs系は3つの異なるアイソフォーム(nNOS、iNOS、eNOS)で構成されています。肺を含むほとんどすべての臓器や組織には3つのNOSsがすべて発現しています。過去に、肺高血圧におけるNOSs系の役割がNOSs阻害薬を用いて薬理学的に検討されてきましたが、NOSs阻害薬は様々な非特異的作用を有するために、肺高血圧におけるNOSs系の真の役割は未だ十分に明らかにされていません。また、過去に肺高血圧と骨髄異常に関連があることが報告されていますが、肺高血圧における骨髄NOSs系の役割は全く不明です。

【研究の目的】
  これらの背景を踏まえて、私達は、肺高血圧におけるNOSs系の役割、特に骨髄NOSs系の役割を、私達が独自に開発したtriple n/i/eNOSs欠損マウス(NOSs系完全欠損マウス)を用いて検討しました。

【研究の方法と結果】
  私達は最初に臨床研究を行いました。私達は特発性肺線維症患者においてドップラー心エコーで評価した肺動脈収縮期圧と気管支肺胞洗浄液中NOx濃度(肺のNO産生の指標)が逆相関をすることを見出しました(図1)。この結果は、第3群肺高血圧患者において肺のNO産生が低下していることを示唆する初めての知見です。この臨床の結果を踏まえて、私達は次にマウスを用いた基礎研究を行いました。

野生型、nNOS欠損、iNOS欠損、eNOS欠損、およびtriple NOSs欠損マウスに低酸素暴露を3週間行いました。低酸素暴露はすべてのマウスにおいて肺高血圧(右心室圧上昇、右心室肥大、および肺血管病変形成)を引き起こしましたが、その程度は野生型マウスに比してtriple NOSs欠損マウスで際立って顕著でした(図2,3)。低酸素暴露後のtriple NOSs欠損マウスでは、血中骨髄由来血管平滑筋前駆細胞数の増加を認めました。さらに、緑色蛍光蛋白質(GFP)発現マウスの骨髄を移植したtriple NOSs欠損マウスでは、低酸素暴露後の肺血管病変にGFP陽性細胞を認めました(図4)。重要なことに、野生型マウス骨髄の移植に比してtriple NOSs欠損マウス骨髄の移植は野生型マウスの肺高血圧を悪化させ、逆に、triple NOSs欠損マウス骨髄の移植に比して野生型マウス骨髄の移植はtriple NOSs欠損マウスの肺高血圧を改善させました(図5,6)。野生型マウス骨髄の移植に比してtriple NOSs欠損マウス骨髄の移植は野生型マウスの肺における69個の免疫関連遺伝子および49個の炎症関連遺伝子のmRNA発現レベルを増加させました。このことから、triple NOSs欠損マウス骨髄移植による肺高血圧の増悪には免疫や炎症を介した機序が関与していることが示唆されました(図7)。

【結論】
  本研究では、骨髄NOSs系がマウス低酸素性肺高血圧において重要な保護的役割を果たしていることを初めて明らかにしました(図8)。

【本研究の意義】
  私達は、肺高血圧の仕組みの一端を解明することが出来ました。本研究の結果は、骨髄NOSs系が肺高血圧における重要な治療標的であることを示唆しています。今後、この知見を踏まえて、肺高血圧に対する全く新しい治療法が開発されることが期待されます。

 

【責任著者連絡先】
  琉球大学大学院医学研究科薬理学
  教授  筒井  正人
  〒903-0215  沖縄県中頭郡西原町上原207番地
  Tel: 098-895-1133(直通)
  Fax: 098-895-1411
  E-mail: tsutsui@med.u-ryukyu.ac.jp

【謝辞】
  本研究は、科学研究費若手研究(B)(26860620)、科学研究費基盤研究(C)(16K09519)、沖縄県先端医療実用化推進事業研究費、文部科学省特別経費、および産業医科大学産業医学推進経費の支援を受けました。

新任教授のご紹介~医学部保健学科 国際環境保健学分野 米本孝二教授~

はじめまして。7月1日に保健学科国際環境保健学分野の教授を拝命しました米本と申します。教授就任のご挨拶として、簡単にこれまでの経験と今後の抱負を述べさせて頂きます。

私は2003年に九州大学大学院数理学府にて数理統計学の研究で数理学の博士号を取得後、九州大学が1961年から続けている疫学研究である久山町研究の研究員に採用いただきました。久山町研究室は教育システムがしっかりしており、私も最初は生物統計学や疫学について学ばせて頂き、その後、生物統計手法の研究、疫学研究、ゲノム疫学研究など幅広く経験させて頂きました。そして疫学研究の論文では、医学の博士号も頂きました。久山町研究は一般住民を対象とした観察研究であり、観察研究について非常に多くのことを学ばせていただきました。

2009年に久留米大学バイオ統計センターに異動し、そこではコンサルティングユニットの専任講師として、医学研究のコンサルティングを実施してまいりました。医学系の学会や大きな研究グループからの全国規模の調査の解析も担当しましたし、製薬会社からの依頼で、薬剤割り付けや独立モニタリング委員なども経験しました。もちろん、医学研究者からの統計相談も多数ありました。ここでは治験、臨床試験、臨床研究について多くの経験を積むことができました。

2017年3月に琉球大学医学部先端医学研究センターの特命教授に就任し、生物統計分野の分野長を拝命しました。沖縄バイオインフォメーションバンクや久米島デジタルヘルスプロジェクトに生物統計家として加わるとともに、生物統計・疫学公開講演会も実施してきました。

そしてこの度2018年7月1日付で、琉球大学医学部保健学科国際環境保健学分野の教授を拝命しました。今後も生物統計家として医学研究を支えていくとともに、教育者として優秀な研究者を育て、医学の進歩に貢献していけたらと思っています。何卒よろしくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 法医学講座 二宮 賢司 教授~

皆さん、初めまして。平成30年4月1日から法医学講座教授に就任しました二宮賢司です。この記事の対象は本学医学部を目指す高校生ということですので、そのつもりで少し気楽に、就任に際してのご挨拶を書かせていただきます。

私は大学生になる際に福岡から沖縄に引っ越してきましたが、医学部という半ば職業訓練校の様な学部に入っておきながら、自分が将来どうなるのかあまり真面目に考えてはいませんでした。それから既に約18年が過ぎ、いまだに琉球大学にいます。概ね生まれた子が大学受験をするまでの年月ですね。我ながら驚いています。

さて、法医学関連の古い本を読んでいますと、法医学の知名度があまりに低く、方位学かと勘違いされたなどという笑い話が載っていますが、最近はなぜかドラマなどでたまに取り上げられ、ある程度認知されているのではないかと思います。それらの中で法医学やそれに携わる人間がどのように扱われているのか私は知りませんが、少なくともここ琉球大学で行われている法医実務はよく言えば堅実、有り体に言えば地味なものです。当講座では毎日のように解剖を実施していますが、その中のほんの一部がドラマになりそうなケースで、むしろ事件ではないこと、問題がないことを確認するのが我々の大きな仕事の一つであると言えます。しかしそういった、いわば「平凡な」ケースも勿論人一人を解剖するわけですし、なにがしかの理由があって解剖に至ったわけで、これに対しきちんとした回答を出すのは、その地域の死因究明を担うものとしての責務であると言えます。

上記をまとめると、琉大の法医学教室に入ると地味で面倒な仕事を延々とやらされる、と読解されてしまうでしょうか? 私自身は特に頑強でもなく強靭な意志力の持ち主でもないですが、大学卒業後も、大学院卒業後も琉大に自らの意思で残りました。法医学は中々面白い学問ですし、法医実務も興味深いものです。皆さんがもし法医学に興味がおありなら、あるいはもう少し広く、将来医学の道に進むおつもりなら、当講座のことも頭の片隅に入れておいていただければ幸いです。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 形成外科学講座 清水雄介教授~

皆様、こんにちは。形成外科学講座の清水雄介と申します。私は東京都出身で平成10年に慶應義塾大学を卒業した後、6年間にわたる形成外科、皮膚科、麻酔科、救急部、一般外科、耳鼻咽喉科研修を行いました。その後5つの病院で形成外科に専心し、平成22年からは慶應義塾大学形成外科のスタッフとして様々な形成外科疾患に対応できる経験を積みました。

平成27年3月に琉球大学医学部附属病院に形成外科が新設され、私が特命教授を拝命して沖縄に赴任することになりました。同院における約3年間の形成外科診療、研究、教育の成果を評価していただいた結果、平成30年4月に形成外科が琉球大学大学院医学研究科の一つとして講座化されることになり、初代主任教授を拝命いたしました。支えてくださった琉球大学の皆様、形成外科学会の皆様、共同研究先の皆様、患者様には心より感謝いたします。

形成外科は様々な疾患の再建、再生を目指して患者さんに寄り添った治療を行います。形成外科学では従来の常識を破って「新しいモノ、価値」を創りだしていくことが大事だと考えています。外科医として患者様一人一人に向き合うだけでなく、社会全体に良い影響をもたらす仕事をしていくことを目指しています。外科医をしながら起業をすることも可能です。私も平成29年2月、琉球大学1号ベンチャーとなる株式会社Grancellを立上げました。

これまで培ってきた経験を生かし、多くの後輩を育てて琉球大学全体を活性化させ、最終的には沖縄、日本、世界の医療の質の向上に貢献したいと考えています。皆様の厚いご支援とご指導を賜れると幸いに存じます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科眼科学講座 古泉英貴教授~

皆様、初めまして。2017年10月1日付で伝統ある琉球大学大学院医学研究科・医学専攻眼科学講座教授に着任致しました古泉英貴(こいずみひでき)と申します。この度は素晴らしい御縁を頂き、大変光栄であると同時に、重責に身の引き締まる思いです。

眼は10円玉とほぼ同じ、わずか約24ミリの大きさの臓器ですが、人間は外界の情報の80%以上を眼から得ています。「眼は小宇宙」という言葉がありますが、細隙灯顕微鏡で見える角膜や水晶体切片の透き通る美しさ、硝子体手術の際のオーロラのようなまばゆい反射、以前は触れることさえ許されなかった聖域である網膜・・・・・まさに神秘的という以外の言葉が見つかりません。私は眼科医になって良かったと心から思いますし、次に生まれ変わっても眼科医になりたいと思っています。是非とも多くの皆様に、この素晴らしい世界を共有して頂きたいと思います。

私の自己紹介をさせて頂きます。私は生まれも育ちも京都、1998年に京都府立医科大学を卒業した生粋の京男です。その後の大学病院と関連病院での研修の過程で、眼底造影検査を初めとした網脈絡膜循環に強い興味を抱き、以降、網膜硝子体疾患の臨床と研究をライフワークとすることを決意しました。2006年から2年間、米国ニューヨーク、マンハッタンの中心にあるManhattan Eye, Ear and Throat Hospitalにおいて、Dr. Lawrence A. Yannuzziを初めとした世界的大家の薫陶を受け、診療と研究の哲学を深く学んで参りました。2012年からは前職の東京女子医科大学において臨床、教育、研究に約5年間邁進し、この度沖縄の地にやって参りました。私は現在44歳、現職では国内最年少の眼科教授となります。若輩者でまだまだ未熟ではありますが、若さに乗じて何事にも恐れず、皆様の幸せのためにチャレンジし続けたいと思います。

今後の抱負ですが、沖縄の地域医療発展のために全力投球するとともに、これからの未来医療を支える医学生、若手医師の教育には特に力を入れていきたく思います。そして琉球大学が国内外に大きなプレゼンスを示す立場となれるよう、全力で取り組む所存です。どうぞ皆様、何卒宜しくお願い申し上げます。

第二内科の研究成果が Diabetologia(2017年 8月号) に掲載されます。

琉球大学第二内科(内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)の研究成果が糖尿病研究におけるトップ・ジャーナルのひとつ、ヨーロッパ糖尿病学会誌 Diabetologia 2017年 8月号(60:1502-1511, 2017)に掲載されることになり、表紙を飾るカバー・ストーリーにも選ばれました。玄米機能成分 γ-オリザノールが ゲノム修飾 (エピゲノム)に よって“満足できない脳” を “足るを知る脳” に変える新しいメカニズムを解明しました。生活習慣病の根本的解決につながる可能性を拓く画期的成果として注目されます。
  琉球大学第二内科から現在、ハーバード大学ジョスリン糖尿病センターに留学中の小塚 智沙代 医学博士らが中心となって推進した研究成果で、琉球大学 大学院医学研究科の分子解剖学、薬理学、分子細胞生理学講座、成育医療センター(東京)、東京大学との共同研究が実を結びました。


  かつて世界に冠たる健康長寿を誇った沖縄県では、現在、肥満症や糖尿病が蔓延し、65歳までに死亡する割合(早逝率)や腎臓機能の低下に伴う血液透析療法の導入率が47都道府県の中でトップレベルに達しています。動物性脂肪やショ糖(砂糖)の過剰摂取は脳をハッキングし、自らが必要とするエネルギー量や栄養成分を判断できない脳に変えてしまうため、肥満症や糖尿病患者の生活習慣改善の指導は しばしば困難を極め、リバウンドを繰り返す場合が少なくありません。

このような学術的視点を踏まえ、私達は脳科学や分子栄養学を駆使して健康長寿の復興を目指す新しい研究に取り組んでいます。

そのひとつが玄米(米ぬか)の中に含有されている機能成分の研究です。私達は動物性脂肪を与えて肥満させたマウスや培養脳神経細胞を用いた研究から、玄米に特異的かつ高濃度に含有される機能成分であるγ-オリザノール(4種類の分子種から構成される植物ステロールとフェルラ酸のエステル重合体)が食欲中枢である視床下部に作用して小胞体ストレスを緩和する分子シャペロンとして機能し、動物性脂肪に対する強固な嗜好性を緩和するメカニズムを世界で初めて明らかにしました。さらに、γ-オリザノールは膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)に働きかけて高血糖を改善する作用や腸内フローラのバランスを改善する効果があることを突き止めました。

今回、私達はさらに研究を深め、γ-オリザノール脳内報酬系に働きかけて食事の美味しさや満腹による幸せ感を受け取るドパミン受容体の機能を高め、“満足できない脳”を“足る を知る脳”に変える機能を持つことを分子レベルで初めて明らかにしました。まず、動物性脂肪の過剰摂取はDNAメチルトランスフェラーゼの作用によって線条体などの脳内報酬系のドパミン受容体遺伝子のプロモーター領域におけるDNAメチル化を亢進させ、結果として遺伝子・タンパク発現を低下させることがわかりました。そして、γ-オリザノールは脳内報酬系においてDNAメチルトランスフェラーゼの阻害剤として機能し、ドパミン受容体遺伝子のプロモーター領域におけるDNAメチル化を減少させ、結果としてドパミン受容体の遺伝子・タンパク発現低下を正常化することが明らかとなりました。

今回の研究成果は天然食品成分を活用して、動物性脂肪によってハッキングされた “満足できなくなった脳”を“足るを知る脳”に生まれ変わらせることが出来る可能性を示すものとして画期的です。世界に類を見ない超高齢社会に突入した我が国において大きな社会的問題としてクローズアップされているのが認知機能の低下(コグニ)と依存症(アデイクション)に代表される脳機能異常です。γ-オリザノールなどの玄米機能成分が認知機能障害や種々の依存症の改善に役立つ可能性が期待されており、琉球大学 第二内科ではSIPやNEDOをはじめ複数の国家研究プロジェクトを推進しています。

コメの学名は“オリザ・サテイバ”であり、オリザノールは、まさしく、コメの油という意味です。また、玄米を構成する米ぬかの糠(ぬか)という漢字は米に健康の康と書きます。一方、糠の成分を取り除いて私達が食べている白米には粕(かす:何も残っていない)という漢字が充てられています。無形世界遺産になった和食の素晴らしさを健康科学的に検証する機運が国際的に高まっており、琉球大学 第二内科の一連の研究は自然科学界のトップ・ジャーナルであるネーチャー誌でも紹介されました(2017年3月30日号)。
Diabetologia誌のカバー・ストーリーの説明文は 以下のようにジャーナル誌上で紹介されております。

An overweight man considers which kinds of food to eat. Excess dietary fats strengthen the preference for fatty foods via dysregulation of the brain reward system.
  The cover shows oil droplets containing a variety of foods, including vegetables, brown rice, pizza and desserts.
  In the present issue of Diabetologia, Kozuka et al report that the brown rice-specific bioactive substance γ-oryzanol acts as a potent inhibitor of DNA methyltransferases in brain striatum in mice, thereby attenuating the preference for dietary fat via the epigenetic modulation of the dopamine D2 receptor. The study highlights γ-oryzanol as a promising anti-obesity treatment with a distinct property as an epigenetic modulator in humans.