新任教授のご紹介~医学部保健学科 成人・がん看護学分野 照屋 典子教授~

令和元年6月1日付で、保健学科 成人・老年看護学講座の教授を拝命しました照屋典子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私は、琉球大学医学部保健学科卒業後、琉球大学大学院保健学研究科修士課程へ進学し、大学院修了後は、県立病院、総合病院等で10年間看護師、助産師として勤務いたしました。

平成16年、前任の砂川洋子教授より、母校で看護基礎教育に携わってみないかとのお声かけがご縁で、保健学科 成人・老年看護学講座の助手に着任しました。その後、砂川教授のもと、助教として学部教育や大学院におけるがん看護専門看護師養成、九州がんプロ養成プランによる臨床ナースの継続教育、大学間連携事業における共同教育システムの構築、一般市民への緩和ケアに関する普及啓発等、さまざまな教育、研究、地域貢献活動に関わらせていただき、貴重な経験や学びを得ました。

今の医療現場を取り巻く環境は、急速な少子超高齢化、医療技術の進歩、情報化社会の到来など、私が就職した30年前とは大きく異なり、医療の受け手側である国民のニーズも多様化・複雑化しています。

看護は、あらゆる年代の人々やその家族、地域社会を対象とし、健康の増進、疾病の予防、健康の回復、苦痛の緩和を行い、その人の生涯を通して、最期までその人らしい生が全うできるように援助することを目的としています。どのような健康状態であっても、その人らしい“暮らし”を支えるために、看護職は「医療」と「生活」の視点からマネジメントし、保健・医療・福祉をつなぐ役割も担っています。これまで主流であった“病院で働くナース”から“地域で働くナース”へのパラダイムシフトによって、さまざまな現場で活躍できる看護職の育成が必須であると考えます。とくに、国民の2人に1人が罹患するがんにおいては、治療の複雑化・長期化に伴い、より専門性の高い看護の提供が求められており、島嶼を抱える沖縄県では、がん看護専門看護師のさらなる育成が急務とされています。この先10年、20年後を見据え、 “将来の保健医療分野のリーダーとなる人材育成”及び “質の高いがん看護に寄与し得る専門看護師育成”に取り組んでまいりたいと思います。

また、保健学科では “将来、国際医療の現場で活躍できる人材育成”を掲げております。フィリピン大学やチェンマイ大学等との国際交流協定を締結し、毎年、チェンマイ大学との学生間国際交流も活発に行っております。今後も国際交流や研究活動を通して、グローバルな視点をもつリーダー育成に力を注いでいきたいと思います。微力ではございますが、沖縄の看護、保健医療の質向上及び未来を担う人材育成に貢献できるよう努力する所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 整形外科学講座 西田康太郎 教授~

皆さんこんにちは。令和元年7月に、縁あって琉球大学整形外科学教室の第3代主任教授に就任いたしました西田康太郎と申します。私は1992年に鳥取大学医学部を卒業し、神戸大学整形外科学教室に入局いたしました。研修の後、大学院での基礎研究の延長として1996年から3年半にわたってPittsburgh大学整形外科での留学生活を経験し、2001年から神戸大学整形外科に戻りました。神戸大学では脊椎外科を専門として医師あるいは研究者として研鑽を積んで参りました。このたび、初代茨木邦夫教授、第2代金谷文則教授が築いて来られた教室を引き継がせていただいたことを大変光栄に存じます。

 

整形外科は運動器の治療・研究を行う診療科です。運動器とは、我々の体を自由に動かすために必要な脊椎、四肢骨、関節といった骨格にはじまり、それを動かし支持する筋肉や靭帯と神経系から成り立っています。対象となる疾患は非常に幅広く、小児の発達障害や変形から高齢者の変性疾患まで広い年齢層にわたります。具体的には骨折や捻挫などの外傷やスポーツ障害、骨軟部の腫瘍性疾患から骨粗鬆症、四肢の関節障害から関節リウマチ、頚椎から骨盤に至る脊椎/脊髄障害から末梢神経障害まで実に多様な疾患が含まれます。手術手技に関しても、手の外科や脊椎硬膜内腫瘍などに代表される非常に繊細なmicrosurgeryから、骨接合、人工関節や脊柱変形矯正に代表されるダイナミックな手術まで様々な手術が存在します。高齢社会の到来により、健康上の問題なく日常生活を送れる健康寿命と、実際の平均寿命との乖離が大きな社会問題となっていますが、健康寿命を短くする最も大きな原因が運動器の障害です。このように整形外科のニーズは高まる一方であり、より多くの力を必要としています。

 

私達は運動器の治療を受け持つプロとして専門性を高め、さらに研鑽を積んでいく必要性に駆られています。そのために、まずは目の前の患者さんを治療できるよう、個々の医師の診療能力の向上が不可欠です。また、医師をとりまく環境や協力体制を整備し、チームとして結束できなければ個々の医師の力を発揮することはできません。大学病院としてのもう一つの大きな目標は、目の前にいない患者さんの治療にも貢献することです。個々の医師が直接治療できる患者さんの数はたかが知れています。現時点で目の前にいない患者さんのために、診療や研究から得た知見を可能な限り広くわかりやすい形で発信することが必要です。さらに未来の患者さんのために、新たな治療を開発し、次世代を担う優れた整形外科医を育成することも重要な責務と考えます。

 

日本最南端の沖縄には大いなる可能性を感じています。温暖な気候と美しい自然は多くの人々を惹きつけます。那覇空港には第2滑走路が整備され国際物流のハブ空港、アジアの玄関口としてさらに発展が見込まれています。今やハワイより多くの観光客が訪れるようになりそうで、海外からも多数の観光客が訪れています。観光の話ばかりではありません。高齢社会の中においても沖縄は、人口の自然増加率が国内で唯一増えている稀有な地域でもあり、いろんな意味で大きく成長が見込まれています。大学病院の移転計画や、最先端の医療設備も着実に整いつつあります。まずは沖縄で完結できる最高水準の医療を提供すること、さらに独自性のある医療を展開し最先端を目指すこと、そして世界へ、私たちの挑戦は今始まったばかりです。皆さんどうぞ宜しくお願いいたします。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 衛生学・公衆衛生学講座 中村幸志 教授~

令和元年7月1日付で衛生学・公衆衛生学講座の教授を拝命しました中村幸志(なかむらこうし)と申します。琉球大学の一員に加えていただけたことを大変光栄に思います。

 

私は、自治医科大学を卒業後、郷里の滋賀県の病院や診療所で一般内科を中心にプライマリケアの診療に従事しました。全く想像もしていなかった現在の仕事に向けて歩み出すきっかけは、卒後5年目から勤務した診療所(一人医師)にて「疾病予防」「地域の人々(集団)」「組織的対策」「社会の中の医療」などへの関心が芽生えたことです。これらの言葉と関係がある公衆衛生学を学びたいと思い、勤務の傍ら地元の滋賀医科大学福祉保健医学講座(現公衆衛生学部門)の研究生となり、講座の柱であった循環器系疾患予防の疫学(一般の人集団を観察して、疾病発症率やその関連要因を探り、対策につなげること)を学び始めました。関心が高じて、へき地勤務の義務が明けた後に臨床を辞め、滋賀医科大学に移って本格的に疫学研究に従事しました。学位取得後に豪州The George Institute、金沢医科大学の類似の部門で循環器系疾患予防の疫学研究を深めつつ、公衆衛生学・疫学の教育の研鑽も積みました。直近の所属である北海道大学ではがん、母子、高齢者、基礎系分野との異分野融合の疫学研究にも参画し、研究の幅を広げることができました。いずれの大学でもよき指導者・同僚・研究スタッフにめぐり会えたおかげでここまで成長できたと感謝していますが、疫学研究はチームプレーで成り立っているところにおもしろさを感じています。研究フィールドである地域や事業所で課題を見出して研究に昇華させ、その成果を健康づくり事業などの実践に活かしてきたこともこれまでの活動の特徴です。

 

ご縁あって赴いた沖縄県で、環境・生活習慣と健康との関係に注目した研究と実践を展開し、その過程で公衆衛生を担う医師や他職種を育成し、この方面から「安心して暮らせるまちづくり」に貢献していきます。医学の中にはこのような分野があることを知り、興味を持って一緒に活動していただける仲間が増えることを願っています。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 消化器・腫瘍外科学講座 高槻光寿 教授~

本年7月1日付で消化器・腫瘍外科学(第一外科)の教授を拝命しました高槻光寿と申します。どうぞよろしくお願いします。

私は大分県の佐伯市上浦町という宮崎県との県境、人口2000名ほどの小さな町で生まれ育ちました。高校は佐伯鶴城高校という知る人ぞ知るスポーツの名門校で、広島カープの前監督である野村謙二郎氏が私のふたつ上の先輩で、私の同級生は大分県代表として甲子園ベスト8(!)でした。ちなみに私は柔道部でしたが、、、。沖縄は全くの初めての土地ですが、特に琉大周辺は私の故郷を思わせるような原生林や自然が多く、親近感を覚えております。

大学は長崎大学医学部に進学し、「病気の人を自らの“手”で治したい」という思いから外科医の道を選択しました。当時は現在のようなスーパーローテートによる研修期間はなく、就職と同時に専攻科を決めるシステムであり、移植・消化器外科に入局し、一般消化器外科の修練を積んでおりました。そして医師になって4年目に突然「長崎大学でも生体肝移植を始めるので、京都大学に勉強に行け」と言われ、当時から最も生体肝移植を施行していた京都大学移植外科に派遣され、世界的にも著名な田中紘一先生のもとで非常に厳しい指導をいただきました。当時の京都大学は全国から私のような立場で派遣されている若手医師が大勢おり、多忙ながらもワイワイと楽しく仕事しておりました。その後、おもに肝胆膵外科を専攻し、長崎大学で生体肝移植導入などに関わり、2001年(33歳)より今度は台湾の高雄長庚紀念病院外科に留学して2年間、みっちりと肝臓外科の手術を勉強しました。この施設にはアジアで初めて肝移植を成功させた陳隆肇先生がおられ、日本の医師免許で存分に執刀させていただけました。肝臓のみならずあらゆる手術症例が豊富で、非常に充実した留学生活でした。

長崎に戻ってからは、兼松隆之名誉教授や現在の江口晋教授の指導のもと、自ら手術をこなす一方で後進の育成に努め、臨床・研究・教育の実績が認められ、このたび縁あって琉球大学の指導教員となりました。人生では「よき師」「よき友」に恵まれることが重要です。与えられた環境でベストを尽くせば、自然とよい出会いに恵まれ、充実した人生を送ることができます。全く縁もゆかりもない土地ですが、残りの外科医としての人生を沖縄に捧げるつもりでやってまいりました。ぜひみなさんと沖縄の医療をさらに発展させていきたいと思っています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 システム生理学講座 宮里 実 教授~

初めまして、平成31年4月1日付けでシステム生理学講座の教授を拝命しました宮里実と申します。平成最後、また令和元年、まさしく記念すべき年の就任を大変光栄に思っております。

私は、平成5年に本学医学科を卒業し、ただちに本学(母校)泌尿器科に入局しました。その後、25年にわたり泌尿器科医として臨床の外科医として診療にあたってまいりました。そういう私が、なぜ母校の基礎講座の教授になったか、まずそこから説明したいと思います。研修医時代は東京の小児病院(清瀬小児病院)で過ごしたのですが、そこで生涯の恩師と出会うことになりました。「10年先を見据えて過ごしなさい。」と叩き込まれました。また、こどもの先天性疾患を通して、病態(生理)に基づいて、10年、20年先を見据えて診療にあたる大切さを学びました。その後は、一泌尿器科医として泌尿器科の診療を一心不乱にこなしてきました。その中で、研修医時代に叩き込こまれたことを「座右の銘」として、知らず知らずのうちに「生理学」を追求してきたのだと思います。そのなかで、特に排尿生理に興味を持ちました。2006年から2年間排尿生理、薬理で有名な米国ピッツバーグ大学で遺伝子治療、排尿の新たな創薬開発の研究に携わりました。2009年から2年間東北大学でも臨床研究の幅を広げました。排尿生理を通して神経生理学を学び、25年という月日が過ぎたとき、臨床、研究はパフォーマンスの違いこそあれ、根幹にあるものは不変であるという感覚をもちました。

現役最後は母校、後輩のために過ごしたいという思いもいつしか芽生えておりました。そして、50歳を迎え、男子の本懐を遂げるべく、基礎講座への転身を決意致しました。とはいえ、臨床医であることに変わりはなく、二刀流で新たな生理学の境地を切り開きたいとも思っています。ノーベル医学生理学賞といわれるように、生理学は医学の根幹をなすものです。本学医学部を目指す高校生諸君がこのホームページを見て、何かを感じて頂けたら望外の喜びです。母校の後輩、また縁あって琉球大学へ集った学生、研究者の皆様とともに、医学の進歩に貢献したいと思います。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

平成30年度オープンキャンパスが開催されました


2018年7月14日オープンキャンパスが開催されました。 この続きを読む…

肺高血圧の成因の解明に成功:骨髄の一酸化窒素が関与(薬理学講座)

肺高血圧は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が上昇して右心不全と早期死亡をきたす疾患です。肺高血圧の予後は癌全体の予後と同等かそれよりも悪く当該疾患の克服は喫緊の課題となっています。しかし、その成因は不明な点が多く、有効な治療法はほとんどないのが現状です。私達は、ヒトおよびマウスを用いた研究において、骨髄の一酸化窒素合成酵素(NOSs)系が肺高血圧において重要な保護的役割を果たしていることを見出しました。この結果は、骨髄NOSs系が肺高血圧における新しい治療標的であることを示唆しており、今後 私達の知見を踏まえて 肺高血圧に対する全く新しい治療法が開発されることが期待されます。本研究は、琉球大学、産業医科大学、長崎大学、および東北大学との共同研究です。論文は呼吸器分野のトップジャーナルであるAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicine誌 (インパクトファクター 15.24)(2018年7月15日号)に掲載されました。

【論文タイトル】
  肺高血圧における骨髄一酸化窒素合成酵素系の保護的役割

【著者】
  生越貴明1),筒井正人(責任著者)2,城戸貴志1),坂梨まゆ子2),内藤圭祐1)
小田桂士1), 石本裕士1,3), 山田壮亮4),王克鏞5),豊平由美子6),和泉弘人7)
益崎裕章8),下川宏明9),柳原延章6), 矢寺和博1), 迎 寛1,3)

【所属】
  1)産業医科大学医学部呼吸器内科学
  2)琉球大学大学院医学研究科薬理学
  3)長崎大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器内科学
  4)産業医科大学医学部第二病理学
  5)産業医科大学共同利用研究センター
  6)産業医科大学医学部薬理学
  7)産業医科大学産業生態科学研究所呼吸病態学
  8)琉球大学大学院医学研究科内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座
  9)東北大学大学院医学系研究科循環器内科学

【研究の背景】
  肺高血圧は、心臓から肺に血液を送る肺動脈の血圧が上昇して右心不全と早期死亡をきたす疾患です。肺高血圧は、肺動脈が原因で生じるもの(第1群)、左心疾患によるもの(第2群)、呼吸器疾患/低酸素によるもの(第3群)、血栓によるもの(第4群)、および複合的要因によるもの(第5群)の5群に分類されます。第1群の肺動脈性肺高血圧は難病に指定されているまれな疾患ですが、5群すべてを含めると肺高血圧患者は世界に1億人いることが推定されており肺高血圧は患者数が多い病気です。深刻なことに、肺高血圧の予後は癌全体の予後と同等かそれよりも悪く、当該疾患の克服は喫緊の課題となっています。しかし、その成因が良く分かっていないために治療法の開発が遅々として進まず、有効な治療法はほとんどないのが現状です。

一酸化窒素(NO)はヒト生体内においてNO合成酵素(NOSs)から合成されるガス状生理活性物質です。NOSs系は3つの異なるアイソフォーム(nNOS、iNOS、eNOS)で構成されています。肺を含むほとんどすべての臓器や組織には3つのNOSsがすべて発現しています。過去に、肺高血圧におけるNOSs系の役割がNOSs阻害薬を用いて薬理学的に検討されてきましたが、NOSs阻害薬は様々な非特異的作用を有するために、肺高血圧におけるNOSs系の真の役割は未だ十分に明らかにされていません。また、過去に肺高血圧と骨髄異常に関連があることが報告されていますが、肺高血圧における骨髄NOSs系の役割は全く不明です。

【研究の目的】
  これらの背景を踏まえて、私達は、肺高血圧におけるNOSs系の役割、特に骨髄NOSs系の役割を、私達が独自に開発したtriple n/i/eNOSs欠損マウス(NOSs系完全欠損マウス)を用いて検討しました。

【研究の方法と結果】
  私達は最初に臨床研究を行いました。私達は特発性肺線維症患者においてドップラー心エコーで評価した肺動脈収縮期圧と気管支肺胞洗浄液中NOx濃度(肺のNO産生の指標)が逆相関をすることを見出しました(図1)。この結果は、第3群肺高血圧患者において肺のNO産生が低下していることを示唆する初めての知見です。この臨床の結果を踏まえて、私達は次にマウスを用いた基礎研究を行いました。

野生型、nNOS欠損、iNOS欠損、eNOS欠損、およびtriple NOSs欠損マウスに低酸素暴露を3週間行いました。低酸素暴露はすべてのマウスにおいて肺高血圧(右心室圧上昇、右心室肥大、および肺血管病変形成)を引き起こしましたが、その程度は野生型マウスに比してtriple NOSs欠損マウスで際立って顕著でした(図2,3)。低酸素暴露後のtriple NOSs欠損マウスでは、血中骨髄由来血管平滑筋前駆細胞数の増加を認めました。さらに、緑色蛍光蛋白質(GFP)発現マウスの骨髄を移植したtriple NOSs欠損マウスでは、低酸素暴露後の肺血管病変にGFP陽性細胞を認めました(図4)。重要なことに、野生型マウス骨髄の移植に比してtriple NOSs欠損マウス骨髄の移植は野生型マウスの肺高血圧を悪化させ、逆に、triple NOSs欠損マウス骨髄の移植に比して野生型マウス骨髄の移植はtriple NOSs欠損マウスの肺高血圧を改善させました(図5,6)。野生型マウス骨髄の移植に比してtriple NOSs欠損マウス骨髄の移植は野生型マウスの肺における69個の免疫関連遺伝子および49個の炎症関連遺伝子のmRNA発現レベルを増加させました。このことから、triple NOSs欠損マウス骨髄移植による肺高血圧の増悪には免疫や炎症を介した機序が関与していることが示唆されました(図7)。

【結論】
  本研究では、骨髄NOSs系がマウス低酸素性肺高血圧において重要な保護的役割を果たしていることを初めて明らかにしました(図8)。

【本研究の意義】
  私達は、肺高血圧の仕組みの一端を解明することが出来ました。本研究の結果は、骨髄NOSs系が肺高血圧における重要な治療標的であることを示唆しています。今後、この知見を踏まえて、肺高血圧に対する全く新しい治療法が開発されることが期待されます。

 

【責任著者連絡先】
  琉球大学大学院医学研究科薬理学
  教授  筒井  正人
  〒903-0215  沖縄県中頭郡西原町上原207番地
  Tel: 098-895-1133(直通)
  Fax: 098-895-1411
  E-mail: tsutsui@med.u-ryukyu.ac.jp

【謝辞】
  本研究は、科学研究費若手研究(B)(26860620)、科学研究費基盤研究(C)(16K09519)、沖縄県先端医療実用化推進事業研究費、文部科学省特別経費、および産業医科大学産業医学推進経費の支援を受けました。

新任教授のご紹介~医学部保健学科 国際環境保健学分野 米本孝二教授~

はじめまして。7月1日に保健学科国際環境保健学分野の教授を拝命しました米本と申します。教授就任のご挨拶として、簡単にこれまでの経験と今後の抱負を述べさせて頂きます。

私は2003年に九州大学大学院数理学府にて数理統計学の研究で数理学の博士号を取得後、九州大学が1961年から続けている疫学研究である久山町研究の研究員に採用いただきました。久山町研究室は教育システムがしっかりしており、私も最初は生物統計学や疫学について学ばせて頂き、その後、生物統計手法の研究、疫学研究、ゲノム疫学研究など幅広く経験させて頂きました。そして疫学研究の論文では、医学の博士号も頂きました。久山町研究は一般住民を対象とした観察研究であり、観察研究について非常に多くのことを学ばせていただきました。

2009年に久留米大学バイオ統計センターに異動し、そこではコンサルティングユニットの専任講師として、医学研究のコンサルティングを実施してまいりました。医学系の学会や大きな研究グループからの全国規模の調査の解析も担当しましたし、製薬会社からの依頼で、薬剤割り付けや独立モニタリング委員なども経験しました。もちろん、医学研究者からの統計相談も多数ありました。ここでは治験、臨床試験、臨床研究について多くの経験を積むことができました。

2017年3月に琉球大学医学部先端医学研究センターの特命教授に就任し、生物統計分野の分野長を拝命しました。沖縄バイオインフォメーションバンクや久米島デジタルヘルスプロジェクトに生物統計家として加わるとともに、生物統計・疫学公開講演会も実施してきました。

そしてこの度2018年7月1日付で、琉球大学医学部保健学科国際環境保健学分野の教授を拝命しました。今後も生物統計家として医学研究を支えていくとともに、教育者として優秀な研究者を育て、医学の進歩に貢献していけたらと思っています。何卒よろしくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 法医学講座 二宮 賢司 教授~

皆さん、初めまして。平成30年4月1日から法医学講座教授に就任しました二宮賢司です。この記事の対象は本学医学部を目指す高校生ということですので、そのつもりで少し気楽に、就任に際してのご挨拶を書かせていただきます。

私は大学生になる際に福岡から沖縄に引っ越してきましたが、医学部という半ば職業訓練校の様な学部に入っておきながら、自分が将来どうなるのかあまり真面目に考えてはいませんでした。それから既に約18年が過ぎ、いまだに琉球大学にいます。概ね生まれた子が大学受験をするまでの年月ですね。我ながら驚いています。

さて、法医学関連の古い本を読んでいますと、法医学の知名度があまりに低く、方位学かと勘違いされたなどという笑い話が載っていますが、最近はなぜかドラマなどでたまに取り上げられ、ある程度認知されているのではないかと思います。それらの中で法医学やそれに携わる人間がどのように扱われているのか私は知りませんが、少なくともここ琉球大学で行われている法医実務はよく言えば堅実、有り体に言えば地味なものです。当講座では毎日のように解剖を実施していますが、その中のほんの一部がドラマになりそうなケースで、むしろ事件ではないこと、問題がないことを確認するのが我々の大きな仕事の一つであると言えます。しかしそういった、いわば「平凡な」ケースも勿論人一人を解剖するわけですし、なにがしかの理由があって解剖に至ったわけで、これに対しきちんとした回答を出すのは、その地域の死因究明を担うものとしての責務であると言えます。

上記をまとめると、琉大の法医学教室に入ると地味で面倒な仕事を延々とやらされる、と読解されてしまうでしょうか? 私自身は特に頑強でもなく強靭な意志力の持ち主でもないですが、大学卒業後も、大学院卒業後も琉大に自らの意思で残りました。法医学は中々面白い学問ですし、法医実務も興味深いものです。皆さんがもし法医学に興味がおありなら、あるいはもう少し広く、将来医学の道に進むおつもりなら、当講座のことも頭の片隅に入れておいていただければ幸いです。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科 形成外科学講座 清水雄介教授~

皆様、こんにちは。形成外科学講座の清水雄介と申します。私は東京都出身で平成10年に慶應義塾大学を卒業した後、6年間にわたる形成外科、皮膚科、麻酔科、救急部、一般外科、耳鼻咽喉科研修を行いました。その後5つの病院で形成外科に専心し、平成22年からは慶應義塾大学形成外科のスタッフとして様々な形成外科疾患に対応できる経験を積みました。

平成27年3月に琉球大学医学部附属病院に形成外科が新設され、私が特命教授を拝命して沖縄に赴任することになりました。同院における約3年間の形成外科診療、研究、教育の成果を評価していただいた結果、平成30年4月に形成外科が琉球大学大学院医学研究科の一つとして講座化されることになり、初代主任教授を拝命いたしました。支えてくださった琉球大学の皆様、形成外科学会の皆様、共同研究先の皆様、患者様には心より感謝いたします。

形成外科は様々な疾患の再建、再生を目指して患者さんに寄り添った治療を行います。形成外科学では従来の常識を破って「新しいモノ、価値」を創りだしていくことが大事だと考えています。外科医として患者様一人一人に向き合うだけでなく、社会全体に良い影響をもたらす仕事をしていくことを目指しています。外科医をしながら起業をすることも可能です。私も平成29年2月、琉球大学1号ベンチャーとなる株式会社Grancellを立上げました。

これまで培ってきた経験を生かし、多くの後輩を育てて琉球大学全体を活性化させ、最終的には沖縄、日本、世界の医療の質の向上に貢献したいと考えています。皆様の厚いご支援とご指導を賜れると幸いに存じます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

新任教授のご紹介~大学院医学研究科眼科学講座 古泉英貴教授~

皆様、初めまして。2017年10月1日付で伝統ある琉球大学大学院医学研究科・医学専攻眼科学講座教授に着任致しました古泉英貴(こいずみひでき)と申します。この度は素晴らしい御縁を頂き、大変光栄であると同時に、重責に身の引き締まる思いです。

眼は10円玉とほぼ同じ、わずか約24ミリの大きさの臓器ですが、人間は外界の情報の80%以上を眼から得ています。「眼は小宇宙」という言葉がありますが、細隙灯顕微鏡で見える角膜や水晶体切片の透き通る美しさ、硝子体手術の際のオーロラのようなまばゆい反射、以前は触れることさえ許されなかった聖域である網膜・・・・・まさに神秘的という以外の言葉が見つかりません。私は眼科医になって良かったと心から思いますし、次に生まれ変わっても眼科医になりたいと思っています。是非とも多くの皆様に、この素晴らしい世界を共有して頂きたいと思います。

私の自己紹介をさせて頂きます。私は生まれも育ちも京都、1998年に京都府立医科大学を卒業した生粋の京男です。その後の大学病院と関連病院での研修の過程で、眼底造影検査を初めとした網脈絡膜循環に強い興味を抱き、以降、網膜硝子体疾患の臨床と研究をライフワークとすることを決意しました。2006年から2年間、米国ニューヨーク、マンハッタンの中心にあるManhattan Eye, Ear and Throat Hospitalにおいて、Dr. Lawrence A. Yannuzziを初めとした世界的大家の薫陶を受け、診療と研究の哲学を深く学んで参りました。2012年からは前職の東京女子医科大学において臨床、教育、研究に約5年間邁進し、この度沖縄の地にやって参りました。私は現在44歳、現職では国内最年少の眼科教授となります。若輩者でまだまだ未熟ではありますが、若さに乗じて何事にも恐れず、皆様の幸せのためにチャレンジし続けたいと思います。

今後の抱負ですが、沖縄の地域医療発展のために全力投球するとともに、これからの未来医療を支える医学生、若手医師の教育には特に力を入れていきたく思います。そして琉球大学が国内外に大きなプレゼンスを示す立場となれるよう、全力で取り組む所存です。どうぞ皆様、何卒宜しくお願い申し上げます。

第二内科の研究成果が Diabetologia(2017年 8月号) に掲載されます。

琉球大学第二内科(内分泌代謝・血液・膠原病内科学講座)の研究成果が糖尿病研究におけるトップ・ジャーナルのひとつ、ヨーロッパ糖尿病学会誌 Diabetologia 2017年 8月号(60:1502-1511, 2017)に掲載されることになり、表紙を飾るカバー・ストーリーにも選ばれました。玄米機能成分 γ-オリザノールが ゲノム修飾 (エピゲノム)に よって“満足できない脳” を “足るを知る脳” に変える新しいメカニズムを解明しました。生活習慣病の根本的解決につながる可能性を拓く画期的成果として注目されます。
  琉球大学第二内科から現在、ハーバード大学ジョスリン糖尿病センターに留学中の小塚 智沙代 医学博士らが中心となって推進した研究成果で、琉球大学 大学院医学研究科の分子解剖学、薬理学、分子細胞生理学講座、成育医療センター(東京)、東京大学との共同研究が実を結びました。


  かつて世界に冠たる健康長寿を誇った沖縄県では、現在、肥満症や糖尿病が蔓延し、65歳までに死亡する割合(早逝率)や腎臓機能の低下に伴う血液透析療法の導入率が47都道府県の中でトップレベルに達しています。動物性脂肪やショ糖(砂糖)の過剰摂取は脳をハッキングし、自らが必要とするエネルギー量や栄養成分を判断できない脳に変えてしまうため、肥満症や糖尿病患者の生活習慣改善の指導は しばしば困難を極め、リバウンドを繰り返す場合が少なくありません。

このような学術的視点を踏まえ、私達は脳科学や分子栄養学を駆使して健康長寿の復興を目指す新しい研究に取り組んでいます。

そのひとつが玄米(米ぬか)の中に含有されている機能成分の研究です。私達は動物性脂肪を与えて肥満させたマウスや培養脳神経細胞を用いた研究から、玄米に特異的かつ高濃度に含有される機能成分であるγ-オリザノール(4種類の分子種から構成される植物ステロールとフェルラ酸のエステル重合体)が食欲中枢である視床下部に作用して小胞体ストレスを緩和する分子シャペロンとして機能し、動物性脂肪に対する強固な嗜好性を緩和するメカニズムを世界で初めて明らかにしました。さらに、γ-オリザノールは膵臓のインスリン産生細胞(β細胞)に働きかけて高血糖を改善する作用や腸内フローラのバランスを改善する効果があることを突き止めました。

今回、私達はさらに研究を深め、γ-オリザノール脳内報酬系に働きかけて食事の美味しさや満腹による幸せ感を受け取るドパミン受容体の機能を高め、“満足できない脳”を“足る を知る脳”に変える機能を持つことを分子レベルで初めて明らかにしました。まず、動物性脂肪の過剰摂取はDNAメチルトランスフェラーゼの作用によって線条体などの脳内報酬系のドパミン受容体遺伝子のプロモーター領域におけるDNAメチル化を亢進させ、結果として遺伝子・タンパク発現を低下させることがわかりました。そして、γ-オリザノールは脳内報酬系においてDNAメチルトランスフェラーゼの阻害剤として機能し、ドパミン受容体遺伝子のプロモーター領域におけるDNAメチル化を減少させ、結果としてドパミン受容体の遺伝子・タンパク発現低下を正常化することが明らかとなりました。

今回の研究成果は天然食品成分を活用して、動物性脂肪によってハッキングされた “満足できなくなった脳”を“足るを知る脳”に生まれ変わらせることが出来る可能性を示すものとして画期的です。世界に類を見ない超高齢社会に突入した我が国において大きな社会的問題としてクローズアップされているのが認知機能の低下(コグニ)と依存症(アデイクション)に代表される脳機能異常です。γ-オリザノールなどの玄米機能成分が認知機能障害や種々の依存症の改善に役立つ可能性が期待されており、琉球大学 第二内科ではSIPやNEDOをはじめ複数の国家研究プロジェクトを推進しています。

コメの学名は“オリザ・サテイバ”であり、オリザノールは、まさしく、コメの油という意味です。また、玄米を構成する米ぬかの糠(ぬか)という漢字は米に健康の康と書きます。一方、糠の成分を取り除いて私達が食べている白米には粕(かす:何も残っていない)という漢字が充てられています。無形世界遺産になった和食の素晴らしさを健康科学的に検証する機運が国際的に高まっており、琉球大学 第二内科の一連の研究は自然科学界のトップ・ジャーナルであるネーチャー誌でも紹介されました(2017年3月30日号)。
Diabetologia誌のカバー・ストーリーの説明文は 以下のようにジャーナル誌上で紹介されております。

An overweight man considers which kinds of food to eat. Excess dietary fats strengthen the preference for fatty foods via dysregulation of the brain reward system.
  The cover shows oil droplets containing a variety of foods, including vegetables, brown rice, pizza and desserts.
  In the present issue of Diabetologia, Kozuka et al report that the brown rice-specific bioactive substance γ-oryzanol acts as a potent inhibitor of DNA methyltransferases in brain striatum in mice, thereby attenuating the preference for dietary fat via the epigenetic modulation of the dopamine D2 receptor. The study highlights γ-oryzanol as a promising anti-obesity treatment with a distinct property as an epigenetic modulator in humans.

 

カロリー過多がなくてもメタボを引き起こす食事成分を同定(薬理学講座)

硝酸塩/亜硝酸塩の不足はメタボ、血管不全、突然死を引き起こす

 

メタボリックシンドロームは、心筋梗塞や脳卒中などの致死性動脈硬化性疾患のリスクを増加させます。メタボリックシンドロームの成因にはカロリー過剰摂取、運動不足、遺伝などの関与が知られていますが、その詳細な機序は未だ十分に解明されていません。

 

一酸化窒素(Nitric Oxide: NO)はNO合成酵素から産生されるガス状低分子化合物で、生体の恒常性の維持に重要な役割を果たしています。NOは酸化反応により亜硝酸塩(NO2)および硝酸塩(NO3)に代謝されます。硝酸塩/亜硝酸塩は不活性でこれまで単なるNOの代謝産物としての認識しかありませんでしたが、最近になって硝酸塩が還元反応により亜硝酸塩に次いでNOに変換されるという逆の経路が発見され、NO供与体としての新しい役割が近年注目を集めています。

 

硝酸塩はレタスやほうれん草などの緑葉野菜に多く含有されています。しかし、食事中の硝酸塩/亜硝酸塩が不足すると病気が生じるか否かは不明です。医学研究科薬理学の研究グループは、『食事中の硝酸塩/亜硝酸塩の長期不足はメタボリックシンドロームを引き起こす』という仮説をマウスにおいて検証しました。その結果、低硝酸塩/亜硝酸塩食を3か月投与したマウスでは、有意な内臓脂肪蓄積、高脂血症、耐糖能異常が誘発され、18か月投与したマウスでは、有意な体重増加、高血圧、インスリン抵抗性、血管内皮機能不全が認められ、22か月投与したマウスでは、急性心筋梗塞死を含む有意な心血管死が惹起されました(図1~4)。

上記の異常は、内皮型NO合成酵素発現の低下、アディポネクチンの低下、並びに腸内細菌叢の異常と有意に関連しており、これらの機序を介してメタボリックシンドローム、血管内皮機能不全、および心血管死が引き起こされていることが示唆されました。

 

本研究の成果はDiabetologia誌(インパクトファクター6.2)に平成29年3月28日にオンライン出版されました。論文のURLはこちらです。https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00125-017-4259-6

 

本論文の筆頭著者は薬理学の大学院生の喜名美香先生(歯科口腔外科)と坂梨まゆ子助教(equally contributed authors)で、責任著者は筒井正人教授です。本研究は、医学研究科の歯科口腔外科、第2内科、第3内科、分子細胞生理学、先進ゲノム検査医学との共同研究です。

 

論文の印刷版はDiabetologia誌の6月号に掲載される予定ですが、本論文の図が6月号の表紙に採用されました(図5)。本研究は「医療NEWS」「日本の研究.com」「大学ジャーナル」「m3.com」を含む多くのWEBサイトで紹介されています。「医療NEWS」では閲覧数が第1位になりました。

TNFSF15が細菌叢を介してクローン病のリスクを高めていることを発見

北里大学医学部解剖学研究室の中込滋樹博士研究員(現:Trinity College Dublin, Assistant Professor)(共同筆頭著者)及び太田博樹准教授、琉球大学医学部附属病院第一内科の(故)知念寛医員(共同筆頭著者)、光学医療診療部金城福則前部長、外間昭部長、伊良波淳医員、統計数理研究所の間野修平准教授、琉球大学大学院医学研究科感染症・呼吸器・消化器内科学講座の藤田次郎教授、人体解剖学講座の石田肇教授及び木村亮介准教授を中心として東京大学などで構成される共同研究グループは、沖縄のクローン病患者においてTumour Necrosis Factor Superfamily Member 15 (TNFSF15)における遺伝的変異が細菌叢の構成を変化させることにより、クローン病の発症リスクを高めていることを明らかにしました。本研究成果は国際専門誌「Human Genetics」にオンライン掲載されています。

クローン病は遺伝性が高く、消化管において慢性的な炎症が生じる疾患です。そして、その発症には、腸内におけるヒトの免疫システムと腸内細菌叢の相互作用が重要な役割を果たしていると考えられています。これまで、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphisms; SNPs)【注①】を遺伝マーカーとして疾患に関連する遺伝的変異を同定する全ゲノム関連解析がヨーロッパ人におけるクローン病患者と健常者を対象に広く行われてきました。その結果、200個以上の遺伝的変異がクローン病の発症に関連することが報告されています。その多くが免疫機能に関係する遺伝子、あるいはその近傍に位置していることから、腸内で共生する細菌に対して、ヒトの免疫反応を調節する遺伝子が機能しなくなることにより、免疫システムの恒常性が崩れ、腸内において炎症が引き起こされていると考えられています。本研究では、クローン病におけるヒトの遺伝子と細菌の相互作用を明らかにすることにより、予防及び治療における新たなバイオマーカーを同定することを目指しています。

本研究グループは、琉球大学医学部附属病院においてクローン病患者、クローン病と同じ炎症性腸疾患に分類されている潰瘍性大腸炎患者、健常者からヒトのゲノムDNAと口腔内細菌叢のDNAを採取しました。そして、本研究では試料提供者の負担をできるだけ軽減するために、血液や糞便ではなく唾液を用いました。また、口腔内における細菌組成は腸内においても反映されていることがこれまでの研究から示されています。そこで、本州においてクローン病に関連することが報告されているTNFSF15【注②】に着目し、口腔内における細菌叢を手がかりに疾患における遺伝子と細菌の相互作用を検証しました。TNFSF15における6個のSNPsに関して患者と健常者で頻度を比較したところ、クローン病患者ではSNPサイトにおける一方の塩基(アレル)が健常者と比べて約10%ほど高い頻度で存在しており、沖縄におけるクローン病においてもその発症リスクを高めていることが明らかになりました【図①】。その一方で、潰瘍性大腸炎患者における頻度は健常者とほとんど変わらず、TNFSF15は炎症性腸疾患の中でもクローン病にのみ関連することが示されました。本研究グループは、2014年に口腔内細菌叢がクローン病患者と健常者で異なることを明らかにしました【文献①】。特に、Prevotellaと呼ばれる細菌群【注③】がクローン病患者において有意に高く存在することを示しました。そこで、本研究においてTNFSF15Prevotellaとの関連性を調べたところ、TNFSF15のリスクアレルをもつことにより、Prevotellaの量が増加することが明らかになりました【図①】。一方,TNFSF15の発症リスクはPrevotellaの量によって異なり、Prevotellaの量が少ない場合は発症リスクがほとんどなくなることが示されました【図①】。

本研究における成果は、たとえTNFSF15のリスクアレルをもっていたとしても、細菌組成を制御することによってクローン病の発症リスクを軽減させることができることを示唆しており、臨床的にも重要な知見であるといえます。

【論文原題】
Confounding effects of microbiome on the susceptibility of TNFSF15 to Crohn’s disease in the Ryukyu Islands

【発表雑誌名】
Human Genetics, Springer (DOI: 10.1007/s00439-017-1764-0)

【注意①】DNA配列において遺伝的変異が起こった結果、2つの異なる塩基(例:グアニンとチミン;G/T)が集団中に多型として存在することを示しています。
【注意②】TNFSF15は免疫システムにおいてリガンドとして受容体に結合することにより、細菌感染に対する免疫反応を活性化させることが知られています。
【注意③】Prevotellaは腸内細菌叢において代表的な細菌属の1つです。腸内の上皮細胞は粘膜を保護するためにムチンと呼ばれる糖タンパク質を生成し粘液を構成しますが、Prevotellaはこのムチンを分解する能力をもつことが知られています。そのため、Prevotellaの量が増加することによってムチンの分解が促進され、上皮細胞が腸内細菌叢にさらされることにより、慢性的な炎症が引き起こされている可能性があります。

【参考文献①】
タイトル:Dysbiosis of salivary microbiota in inflammatory bowel disease and its association with oral immunological biomarkers.
著者:Said HS, Suda W, Nakagome S, Chinen H, Oshima K, Kim S, Kimura R, Iraha A, Ishida H, Fujita J, Mano S, Morita H, Dohi T, Oota H, Hattori M.
発表年, 掲載誌, 巻及びページ:2014年, DNA Research, 21(1):15–25.

【図①】

「アフリカの子ども達に笑顔を!」-アフリカ・エチオピア連邦共和国で第6次口唇口蓋裂無償医療援助活動に参加しました-

2017年2月6日(月)から14日(火)までに琉球大学医学部附属病院医師らが、アフリカ・エチオピア連邦共和国(エチオピア国)のブタジラ市グラルベット病院を訪れ、口唇口蓋裂患者に無償援助手術を行いました。

今回の活動には、顎顔面口腔機能再建学講座の西原一秀准教授と坂元結歯科医師、麻酔科の西啓亨助教らが参加しました。琉球大学では、2015年から日本口唇口蓋裂協会の要請を受けてこれまでに計3回、延べ8名の医師の派遣を行ってきました。

エチオピア国は国連開発計画による多次元貧困指数で発展途上国として報告されており、近年は目覚ましい発展を遂げていますが、未だ地方農村では水道、電気が通じていない家が多く見られます。日本では口唇口蓋裂患者は生後3か月頃に口唇形成手術が行われます。しかし、エチオピア国では、インフラが整備されてない経済的貧困な地方では成人した高年齢の未手術患者が手術を希望して毎回受診されます。また、地方病院であるグラルベット病院では、麻酔器材等は未だに古い器械が使用され、手術中は何回も停電を繰り返して手術が中断するなど病院内の医療環境、整備は不充分な状況です。

今回の医師団団長を務めた本学西原一秀准教授は「エチオピア国の活動は、琉球大学医学部ならびに口唇口蓋裂協会の関係各位のご協力とご支援で行われており、とても感謝しています。今後もこの活動を継続し、医療・教育分野でエチオピア国の医療技術向上・発展に寄与できれば幸いです。また、一人でも多くの患者の手術を行い、患者さんと家族の笑顔を取り戻したいです。」と述べています。

 

大学院生の久保田陽秋先生が日本心脈管作動物質学会研究奨励賞を受賞しました!

平成29年2月10日(金)・11日(土)、琉球大学医学部において第46回日本心脈管作動物質学会が開催されました。

そのYIAセッション(若手研究者奨励賞)において、薬理学の大学院生の久保田陽秋先生は、『脳梗塞における一酸化窒素合成酵素(NOSs)の有害な作用:性差およびテストステロンの関与』に関する口頭発表を行いました。10人のYIA候補者が発表し、8名の審査員により審査が行われ、1名の最優秀賞および2名の優秀賞が選出されました。

その結果、久保田先生は、見事に研究奨励賞優秀賞を受賞しました。久保田先生は麻酔科学の医師で、薬理学において研究を行い、『マウスの脳梗塞におけるNOSsの有害な作用がオスにのみ認められ、その機序にはテストステロンが一部に関与している』ことを世界で初めて明らかにしました。

本研究の結果から、NOSs系の抑制が男性の脳梗塞における新規治療戦略になり得る可能性が示唆されました。本研究は、麻酔科学 垣花学教授、須加原一博副学長・理事を含めた本研究科の先生方との共同研究です。

表彰式の様子

(写真右から)今回受賞された久保田先生、学会長の本学医学研究科薬理学講座 筒井教授

 

新任教授のご紹介~大学院医学研究科育成医学講座 中西浩一教授~

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皆さん、初めまして、平成29年2月1日から育成医学(小児科)講座教授に就任しました中西浩一です。大阪出身で、平成元年に神戸大学を卒業し、すぐに神戸大学小児科に入局しました。米国留学の後、2000年から和歌山県立医科大学小児科に赴任し、以降、和歌山で勤務していました。

専門はこどもさんの腎臓病です。皆さんはこれまでに学校検尿を受けてきたと思いますが、あれってどうしてするのかなと考えたことは有りませんか。簡単に言うと腎臓病をみつけるためなのですが、その中でも腎炎と呼ばれる病気の発見に効果があります。腎炎は初期には何の症状も有りませんが、放置しておくと少しずつ腎臓の機能が悪くなり、経過が悪ければ透析や腎臓移植が必要になってしまいます。けれども、検尿をすれば血尿や蛋白尿の有無がわかり、腎炎を発見することができます。その他、原因不明ですが突然尿に大量に蛋白が漏れ出るネフローゼ症候群と呼ばれる病気もこどもさんにしばしばみられます。私はこれらの病気の治療を主にしてきました。

医学部やその附属病院の大事な役割の一つは医師を育てることです。私はこれまで、多くの医師を育てると共に自分も多くのことを学ばせてもらいました。今後も、大学教員としての様々な経験を活かして、対話を重視した医学教育を実践していきたいと思います。

大学の使命として研究は最重要です。患者さんの診療に従事する医師(臨床医)であっても研究することは無駄ではありません。常にリサーチマインドを持って診療にあたり、そこから生じた問題や疑問を解決する研究をしていくことが重要です。

私の座右の銘は「随処作主(ずいしょにしゅとなる)」です。自分が所属する組織のために何が必要なのか、何が大事なのかをよく考えて、問題解決のために一生懸命努力することが重要だと理解しています。少し言い方を変えると、厳しい環境でも与えられた状況を受け入れ、主体性を持って前向きに行動することの大切さを表しているのではないかと思います。今後、沖縄県の小児医療ならびに琉球大学のさらなる発展のため医局員と力を合わせ精一杯頑張っていきますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。

細胞病理学講座の論文がBlood誌に掲載されました!

川崎桂輔さん(琉球大学医学部附属病院 総合臨床研修・教育センター 研修医)と加留部謙之輔教授(細胞病理学講座)らの論文「Peripheral T-cell lymphoma with EBV-infected “anaplastic” B cell proliferation confined to sinuses 」がBlood誌に掲載されました。Blood誌は学術雑誌の影響力を示すインパクトファクターが11.84と、血液学分野で世界トップの雑誌です。
 血液のがんである悪性リンパ腫においては、しばしばEBウイルスに感染した細胞が増殖します。細胞病理学講座では、長嶺千賀子技術専門職員らによりEBウイルスの効率的な検出法である「EBER-ISH」を確立しており、同ウイルスの病態への関与について詳細な解析を行っています。今回の論文ではEBウイルス感染細胞に関して、世界で初めてとなる特徴的な形態学的増殖パターンを報告しました。
 川崎さんは2015年から琉球大学医学部附属病院に研修医として勤務しており、病理診断科の研修期間中に当該症例の病理組織診断に携わりました。「研修医の間にこのような症例に出会えたことは貴重な経験でした。琉球大学附属病院には教育的な症例、稀な症例が集まります。現在、2本目の症例報告の準備もしています。」と、川崎さんは意欲的に語っています。

(写真手前)論文のゲラ版をもつ川崎さんと、(写真後方右)今回の報告において重要な役割を果たしたEBER-ISHの写真をもつ長嶺さん。細胞病理学講座にて。

医学研究科修士課程合同審査会及び学位論文発表会を開催しました

平成29年2月9日(木)、10日(金)に医学研究科修士課程の合同審査会及び学位論文発表会が開催されました。

2日間で6名の修了予定者がこれまでの研究について発表を行い、審査員や教員から厳しい質問を受けましたが、それぞれについて的確に答え、活発な議論となりました。

審査会と学位論文発表会を合同で行うことが初めての試みでしたが、2日間で48名の参加があり、盛況でした。

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フィリピン大学公衆衛生学校との教員人事交流

平成29年1月16日、フィリピン共和国のマリアン・F・テレサ・C・ロンボイ氏(写真左)が本学医学部特命助教として1年の任期で着任しました。3年間の間に3人の教官がフィリピン大学から来られる予定で一人目の赴任になります。

れはフィリピン大学マニラ校公衆衛生学校と琉球大学医学部保健学科との学部間協定に基づくもので、ロンボイ助教は今後「ラオス、フィリピン、ベトナムにおける院内感染症モニタリングシステムの確立および感染制御ネットワークの基盤構築」プロジェクトにかかる研究に従事していきます。

保健学研究科のさらなる国際化のキャパシティー強化に研究・教育両面からの貢献が期待されます。特に環境保健の専門性も多いに生かしていただきたいと考えています。

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(写真左から)マリアン・F・テレサ・C・ロンボイ助教、松下医学部長