大嶺教授、JICAと共に『南部スーダン戦略的保健人材育成プロジェクト』に取り組む

妊産婦死亡や乳児死亡が世界最悪の水準にある南部スーダンにて、
大嶺教授、
『南部スーダン戦略的保険人材育成プロジェクト』に同行、
助産師の人材育成に取り組む!


[PHCC(Public Health Care Center )の皆さんと]

琉球大学医学部保健学科母性看護・助産学講座の大嶺 ふじ子教授は、JICAの行うプロジェクト『南部スーダン戦略的保健人材育成プロジェクト』に同行し、妊産婦死亡や乳児死亡が世界最悪の水準にある南部スーダンの調査や助産師の人材育成に取り組んでいます。実際の現地の状況やJICAの取り組み、今後の期待等をお話して下さいました。

【プロジェクト参加のきっかけと南部スーダンの現状】
南部スーダンでは、妊産婦死亡率が出生10万件あたり1,700(2000年)、乳児死亡率は出生1,000件あたり250(2001年)(JICAホームページより)という世界最悪の水準です。また医療に携わる人材も、人口約800万人に対して医師が225人、医療助手が443人、看護師が1,335人と数的に不足しており、教育・研修レベルも十分ではなく質的な面でも不十分です。2009年の調査で、特に求められているのが助産師育成だということが明確になりました。この「保健人材育成プロジェクト」は、当初、琉球大学医学部医学科公衆衛生学分野が担当しておりましたが、2010年度に入りプロジェクトの焦点が助産師育成に絞られてきたのをきっかけに、保健学科母性看護・助産学分野・大嶺教授が担当することになりました。
南部スーダンは、北部と南部で対立しており、1983年以降長い間、内戦状態が続いていました。南北包括平合意が成立した約5年前の2005年にやっと内戦は終わりましたが、まだまだインフラ整備が立ち後れており、世界からも切り離された状況です。公用語には、アラビア語と英語が使用されており、アラビア語を話す人々が多いのですが、識字率が20%で、英語どころかアラビア語の読み書きも困難で、助産師でも十分な教育を受けていない人々が多いのが現状の様です。衛生状態もとても悪く、川のお水でシャワーを浴びると粘膜がかゆくなったり、うがいをすると胃腸炎になったりと、水の面から整備していくことが必要です。内戦が終わった現在でも、首都ジュバでは、至る所に侵入禁止等の線引きが引かれており動ける場所が少ないです。
学校には、寄宿舎が整備されていないため、学生はバスで1,2時間の遠い場所から通っているので、授業に出る学生が少なく授業が成り立ちません。また、生徒の中には男性もいますが、女性が大部分で、入学した学生40人のうち4、5人は妊娠で休学するのが当たり前となっている現状です。助産師を確保しても、生徒の1,2割は妊娠して休学してしまったり、生活が苦しいという家庭の事情で学校に来なくなったりするので、確実に助産師を育成するのはまだまだ難しいとのことです。
南部スーダンには、州立病院や教育病院等約13の病院があります。国内の助産師は約300人以上いますが、正規の教育を受けた助産師は100人足らずで、最高の位置づけにある首都ジュバの教育病院でも、助産師は10人未満で、正規の助産師免許を持っている人は2人しかいません。分娩の80%以上が自宅分娩であるこの国では、病院での出産が受け入れられない理由に、分娩台に乗ることへの抵抗感があるとの指摘があります。保健人材の育成や助産師の能力向上を支援するために、スキルを持った指導者や適切な教育機材などの配置が必要となります。


[新設看護助産学校校長WaWa氏と]

【大嶺教授(JICA)の取り組み】
大嶺授は助産師の資格を持つ在宅ケアの古謝先生、通訳としてアメリカで修士を持った方3人でスーダンを訪れおり、JICAから派遣された現地スタッフと共にプロジェクトを実行しています。スーダンには、各国から色々な援助団体が入り乱れて援助を行っており、日本はJICAが水と教育と保健医療に重点的に取り組んでいます。保健医療の中でも、妊産婦と乳児死亡にターゲットを絞って改善していこうというプロジェクトが昨年から始まり、南部スーダンの戦略的保健人材育成プロジェクトを琉大と締結し、このプロジェクトの一機関として行っていくことになりました。現在は、助産師育成として、大嶺教授の教室だけが関わっていますが、保健人材ということで今後、看護士や技術系の臨床検査技師、レントゲン技師等に拡大する可能性があるので、医学部全体で取り組む価値があるとのことです。内戦で廃校になった首都ジュバでは、JICAの支援により助産看護学校が作られ、助産婦の養成が始まりました。開講に併せて大嶺教授も現地に伺い、養成に必要なテキストやカリキュラム等の支援をしています。色々な援助団体が関わっていますが、ジュバの助産看護学校に関しては、建物の建設や機材の確保等JICAが中心となって支援しています。WHO(世界保健機関)やUNFPA(国連人口基金)が主体となって教科書作りをし、大嶺教授はその出来上がった教科書のチェックや提案等を行っており、今年からカリキュラムにも介入していく予定です。
現在は主に首都ジュバでの支援となっていますが、インフラ整備も進み、もう少し治安も良くなっていくと、次年度以降には地方の都市2、3カ所にも展開出来るのではないかと考えられています。首都ジュバには、3年制の助産師学校があり、日本でいう専門学校のような場所で助産師の養成行っています。対象年齢は18歳以上、教員の資質も上げようと、助産師教員の他、助産実習指導者にあたるであろう病院や保健所にティーチングホスピタル等のTOT(助産師指導者教育)も行っています。

【今後の期待】
今後は、助産師の国家資格制度を確立し、医療水準を上げていく予定です。国家試験を行い、免許取得の水準をあげて、介護助産師を増やして、地域に配置していきたいとのお考えです。お産の9割は自然分娩なので、自然分娩のプロを養成するのが最終の目標になります。自然分娩が出来るようになると、異常と正常の区別がつくようになるので、まずは、正常分娩がわかるようになることで、自宅分娩にも対処出来るようになるのではと期待されています。


[第1回パイロットトレーニング講師の皆さん]


[ジュバ看護助産学校の新入学生徒の皆さん]