形態病理学分野

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形態病理学分野

講座紹介:

沖縄県は亜熱帯に属する島嶼県である事から、環境因子の違いにより沖縄県の疾患には本土とは異なる特徴があります。特に沖縄県では癌を含む腫瘍性疾患はウイルス感染との関連が強く、本土の腫瘍性疾患とは著明な違いを示しています。形態病理学分野では沖縄県の腫瘍性疾患とウイルス感染の関連について、病理組織学的検討と分子生物学的解析の両面からアプローチし、腫瘍発生のメカニズムの解明に取り組んでいます。当分野の研究の目標は、沖縄県の疾患の特徴を明らかにし県民の健康増進に寄与する事と、研究指導を通じて若い意欲ある学生を優秀な研究者に育てる事です。

スタッフ紹介:

  • 教授:金城貴夫略歴:

    平成6年:琉球大学卒
    平成6~8年:沖縄県立中部病院
    平成8~20年:琉球大学医学部病理学第2講座
    平成20年~:琉球大学医学部保健学科形態病理学分野

  • 助教: 上原佳里奈略歴:

    平成27年:琉球大学医学部保健学科卒
    平成27年~:琉球大学大学院保健学研究科 在学
    平成28年~:琉球大学医学部保健学科形態病理学分野

研究概要:

基礎研究: 形態病理学分野では主に沖縄県の腫瘍性疾患とウイルスとの関連について研究しています。

①沖縄県の肺癌とHPV (human papillomavirus)の関連:沖縄県では過去30年の間に肺癌の組織像が次第に変化しています。以前は扁平上皮癌が最もよく見られる組織型でしたが現在は腺癌の頻度が最多となりました。肺の扁平上皮癌の減少と並行して肺癌組織から検出されるHPVも減少しています。肺癌の組織像とHPV感染の関連性やHPVによる扁平上皮への分化誘導を研究しそのメカニズムを明らかにしています。

②沖縄県の口腔癌とHPVとEBV (Epstein-Barr virus)二重感染の関連:沖縄県の口腔癌の症例からは高頻度にHPVやEBVが検出され、これらウイルスの二重感染が口腔癌発生の原因となりうると考えられました。そこでこの仮説を検証する為にHPVとEBVの遺伝子を正常細胞に発現させたところ、癌化する事を証明し、そのメカニズムを解明しました。異なる種類のウイルスの遺伝子が協調して癌化を誘導する事を初めて明らかにしました。

③沖縄県のカポジ肉腫の臨床像とKSHV (Kaposi sarcoma associated herpesvirus)のK1遺伝子との関連:カポジ肉腫はKSHVにより発生します。カポジ肉腫は臨床像の異なる4つのタイプが知られていますが、沖縄県ではAIDS関連カポジ肉腫よりも古典型カポジ肉腫が多く発生しています。古典型カポジ肉腫はAIDS関連型とは臨床像が異なり、病変は皮膚に限局し自然に消退する事もあります。古典型とAIDS関連型から検出されたKSHVのK1遺伝子は塩基配列に違いがあり、臨床像の違いに関連していると考えられます。この2つのK1遺伝子の腫瘍形成能の違いについて検討を行っています。

④HTLV-I (human T-cell leukemia virus type I)のTax遺伝子の腫瘍形成能と細胞の分化度との関連:沖縄県に多い成人T細胞白血病はHTLV-Iの感染により発生します。HTLV-IのTax遺伝子が発癌に関与すると考えられていますが詳細なメカニズムは分かっていません。成熟(分化)した細胞にTaxを発現させると癌化せずに細胞老化が誘導される事を見出しており、Taxによる癌化は未熟な(未分化な)細胞で誘導されると考えられます。ES細胞や各種の幹細胞を用いてTaxの腫瘍形成能を解析しています。

 

臨床研究: 臨床研究では原則的に琉球大学医学部附属病院で検査や手術の目的で採取された試料を利用させて頂きます。これらの資料は診断・治療後の残余検体ですので患者さんの診療には影響しません。臨床研究で用いられる試料は全て匿名化された上で取り扱われ、個人情報は厳重に管理され保護されます。もしこれらのことについてお尋ねされたい場合や研究への参加を拒否されたい場合には当分野までご連絡下さい。

①「13q14のアレル欠失を有する軟部腫瘍の酸化ストレスに関する研究」
平成27年8月3日 倫理審査承認第 791号(変更1)

終了報告と協力御礼: 

本研究は琉球大学倫理審査委員会での承認を経て、平成27年8月より平成30年4月にかけて個人情報保護を配慮しながら実施されました。

本研究により13q14のアレル欠失を有する腫瘍は酸化ストレスが高く、腫瘍発生に関与する事が示唆されました。

研究成果は第156回保健学研究会と第106回病理学会総会で発表し、また査読制度のある国際的な学術誌「Pathology and Oncology Research」に誌上発表されました。

当初の研究目的を達成した事により本研究を終了する事としました。

御協力頂いた方々には厚く御礼申し上げます。

②「Mieap不活性化が胃癌の生物学的特性へ及ぼす影響について」
平成27年6月2日 倫理審査承認 第792号

研究の概要:
本研究では琉球大学で手術を受け摘出された胃癌の病理組織標本を用いてミトコンドリアの品質管理に関わるMieap遺伝子について研究を行います。Mieap遺伝子は異常なミトコンドリアが細胞内に蓄積しない様に機能していますが、癌との関連も明らかになって来ました。様々な癌でMieap遺伝子が不活化している事や、動物実験からも癌の進展に関わる事が分かって来ました。しかし、Mieap遺伝子の異常がヒトの癌にどのような役割を果たしているかはまだ分かっていません。そこで胃癌の病理組織標本を用いてMieapの発現と癌の進行度、転移、化学療法への反応性や予後との関連について検討します。
研究の目的・対象・方法などはこちらから御確認いただけます。

 

③「沖縄県の軟骨肉腫におけるIDH変異とHIFシグナルとの関連について」
平成27年7月17日 倫理審査承認 第823号

研究の概要:
本研究では琉球大学で検査や手術で摘出された軟骨肉腫の病理組織標本を用いて軟骨肉腫発生に関わるIDH1とIDH2遺伝子について研究を行います。軟骨肉腫発生の最初のステップとして軟骨細胞のIDH1あるいはIDH2遺伝子に変異が起こると考えられています。脳腫瘍の一種である神経膠腫ではIDH1あるいはIDH2遺伝子の変異の有無が予後に影響する事が明らかになり、治療法の選択にも反映される重要な情報となっています。ところが軟骨肉腫におけるIDH1やIDH2遺伝子変異の臨床的な意義については明らかではありません。そこで軟骨肉腫の病理組織標本を用いてIDH1やIDH2の変異と癌の進行度、転移、化学療法への反応性や予後との関連について検討します。
研究の目的・対象・方法などはこちらから御確認いただけます。

 

④「沖縄県の子宮頸部病変におけるHPV感染について」
平成27年8月13日 倫理審査承認 第832号

研究の概要:
本研究では琉球大学で検査や手術で摘出された子宮頚癌や子宮頚部前癌病変の病理組織標本を用いて子宮頚癌発生に関わるHuman papillomavirus (HPV)について研究を行います。120種あるHPVのうち、癌発生に関わるものはハイリスク型とされています。ハイリスク型はHPV16型や18型が代表的なタイプですが、その他31, 33, 35, 52, 58型等が知られています。これらのハイリスク型HPVは感染当初は細胞質に存在していますが、癌化した細胞ではヒトのDNAに入り込んだ状態となります。約10年前に沖縄県の子宮頸部より検出されるHPVの感染率と型別頻度が報告されています。これによれば子宮頸部前癌病変ではHPV感染率は約76%, 癌病変では約86%と、高率にHPVが検出されている事が報告されています。さらに癌病変に注目すれば欧米ではHPV16と18が主要なタイプであるのに対して、沖縄県ではHPV16が33~42%と最も多い他はHPV33, 58, 18, 52, 31が6~9%で推移しています。この様に沖縄県ではHPV18の感染率は欧米ほど高くなく、その他のタイプが検出される特徴がありますが、その後10年間でウイルスのタイプ別感染頻度がどのように推移したか報告がありません。さらに前述したHPV感染時の存在様式は癌化に重要な働きをしていますが、子宮癌や子宮頚部前癌病変で検討した報告は少なく、沖縄県の症例では未だ検討が行われていません。本研究では沖縄県の子宮頚癌と子宮頚部前癌病変のHPVの感染率、HPVのタイプ、HPVの存在様式を明らかにし、本県の特徴を把握すると共に臨床応用の為の基礎的なデータを提供します。
研究の目的・対象・方法などはこちらから御確認いただけます。

 

⑤「沖縄県の口腔癌・咽頭癌におけるHPV感染、ポリADPリボース活性と予後との関連について」
平成27年9月2日 倫理審査承認 第841号

研究の概要:
本研究では琉球大学で検査や手術で摘出された口腔癌・咽頭癌の病理組織標本を用いてHuman papillomavirus (HPV)の感染と口腔癌の予後との関連について研究を行います。口腔癌・咽頭癌のHPV感染と予後に関する報告は多数ありますが、殆どの報告はHPVが感染している口腔癌・咽頭癌は感染していないものより、5年生存率、全生存率が良く、例え再発したとしても再発までの期間が長い等、全体的に予後の改善に関与する事が報告されています。HPVの感染が何故予後の改善に関わるかについても様々な検討が行われましたが、そのメカニズムはまだ解明されていません。
ところで私達は、マウスの胚線維芽細胞にHPV16のE6あるいはE7遺伝子を発現させるとE6遺伝子を発現させた時のみ、様々なストレス時に誘導されるPARPの活性が著しく亢進(ポリADPリボシル化)していることを明らかにしました。このE6発現によるポリADPリボシル化の亢進は、細胞の酸化ストレスと関連している事も見出しています。この事から私達は、HPVが感染した癌細胞はE6発現によってすでに酸化ストレスに曝露されており、化学療法や放射線療法はより強力な酸化ストレスを癌細胞に加えることで、細胞死を誘発するのではないかと考えました。今迄述べてきたようにHPVが感染している口腔癌・咽頭癌の予後が良い事が疫学的に明らかにされていますが、分子生物学的なメカニズムについては解明されていません。
本研究では、沖縄県の口腔癌・咽頭癌症例のHPV感染と予後を調べ、さらに病理組織標本を用いてHPV16 E6の発現、ポリADPリボシル化,酸化ストレス等を検討します。これらの検討によりHPVが感染した口腔癌・咽頭癌の予後良好のメカニズムを明らかにしたいと考えています。私達の仮説が証明されれば、口腔癌・咽頭癌の治療戦略に重要な情報となるだけではなく、新たな治療法の開発にもつながる可能性があり、臨床的に有用な発見となる事が期待されます。
研究の目的・対象・方法などはこちらから御確認いただけます。

 

⑥「沖縄県のヒト血管腫瘍の分子病理学的研究」
平成27年9月8日 倫理審査承認 第843号

研究の概要:
血管腫瘍は、皮膚や内臓など全身性に出現し、腫瘍性血管が不規則かつ境界不明瞭に増殖するため良性であっても手術による摘出が困難な場合があります。とりわけ悪性血管腫瘍に分類される血管肉腫は、沖縄県で発生頻度が本土より高い事が知られています。血管肉腫は著しい局所進展による手術困難に加え、生命臓器転移をきたす事や治療法が確立していないため予後不良です。更に血管肉腫は病理診断に苦慮する症例も存在します。これら臨床病理学的問題があるにも拘らず、血管腫瘍をはじめとする非上皮性腫瘍は、上皮性腫瘍に比べて発生頻度が少ないために基礎・臨床研究の展開が世界的に立ち遅れた状況にあります。
国立がん研究センターの常木らは近年、血管内皮細胞の相互作用不全に続くHippo経路の破綻が血管腫瘍を発生させる事を明らかにしました。さらにHippo経路に関わる増殖因子(Survivin)の阻害剤YM155が血管腫瘍細胞の増殖抑制に奏効することを報告し、血管腫瘍研究に新たな突破口を開きました。
本研究課題では、ヒト臨床検体(病理組織標本)を用いて、常木らによりこれまで明らかにされた血管腫瘍発生に関連する分子の発現・局在を検討し、さらに臨床的諸因子との相関について比較検討を行います。
本研究の意義はふたつあります。ひとつは、実験室レベルで明らかにされた血管腫瘍発生のメカニズムを、ヒト病理組織検体において確認することです。この検討を通じて新規治療標的の同定ならびに既に同定した小分子化合物YM155の臨床応用可能性を見出し、次段階の動物を用いた薬剤効果解析に移行することが可能となります。ふたつ目は、病理診断が困難な場合(特に小さな生検材料や、手術断端における腫瘍残存の評価)において、効果的な免疫組織化学的補助診断マーカーの確立を目指すことです。いずれも、臨床に還元しうるリアリティの高い研究です。
研究の目的・対象・方法などはこちらから御確認いただけます。

 

⑦「閉経期女性における子宮頸部細胞の成熟度とその要因に関するケースコントロール研究」
平成29年4月13日 倫理審査承認 第1085号

研究の概要:
女性は一生のうちに内分泌環境が大きく変化します。それに伴い子宮膣部や体部の細胞の形態も変化する事が分かっています。月経周期にある女性では女性ホルモンの影響により子宮膣部の細胞が増殖、分化、剥脱を繰り返しますが、閉経期に入ると女性ホルモン分泌が減少し、月経周期にある女性の細胞像とは異なる細胞像を示すようになります。しかし閉経期の女性であっても子宮膣部細胞診で月経周期女性の細胞像を示す事があります。この原因として肝硬変、子宮内膜増殖症、子宮内膜癌や内分泌療法等が知られており、何らかの内分泌環境の変化が細胞像に反映されている事が示唆されています。本研究では沖縄県の閉経期を迎えた女性のうち、子宮膣部細胞診で月経周期の細胞像を示す症例の頻度とその要因について検討を行います。
研究の目的・対象・方法などはこちらから御確認いただけます。

 

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