法医学

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法医学

講座紹介:

大学の法医学教室の日常業務は、大きく法医実務・教育・研究に分けられます。実務は主として法医解剖で、その他虐待の鑑定なども行っています。教育は学部学生への講義や、法医学を専門として学び始めた大学院生への教育、すなわち新人育成であり、これらに加えて法医学に関する研究を行い、法医実務をより良くしようと日々活動をしています。


法医解剖は、公正な社会秩序の維持・運営という観点から社会の期待が大きいことから、法医学教室の大事な仕事と位置付けて、要請がある時には夜間休日を問わず実施しております。当教室は検視先進県沖縄の法医解剖を一手に引き受けており、昨年(平成29年)は478体の剖検を行ないました。この剖検数は全国の法医学教室の中でもかなり多い方に属します。


大学教員の任務は教育と研究でありますが、その活動を通して蓄積してきた知識や技術を使っての社会貢献は、これまた大切なことです。法医学は社会医学の一つであり、法医学の目的が個人の基本的人権の擁護、社会の安全、福祉の維持に寄与することですので、医学の他の分野以上に、社会に貢献することが大きな意味を持っています。例えば、東日本大震災の折には、当教室の教員や大学院生が率先して警察の検案支援活動に従事しました。一方、社会貢献活動そのものが、法医学の教育と研究に還元されるという面もあり、相当なエネルギーを注いでいる所以でもあります。


当教室では、法医病理学と中毒学が研究の柱です。熱帯・亜熱帯の海に囲まれた沖縄では海洋法医学的研究が求められます。私どもはダイビング関連死亡の法医解剖を多く担当していることから、事故防止につなげるべくこれらの症例を集積して法医学的見地から解析を行ってきました。またダイビング事故症例の剖検例を基に、減圧症の動物実験モデルを作成して、加圧・減圧が生体あるいは死体に与える影響についての研究を進めています。


法医学に興味のある方からのお問い合わせのメールを心よりお待ちいたしております。

スタッフ紹介:

  • 教授:二宮賢司略歴:

    2012年 琉球大学大学院医学研究科特命助教
    2015年 琉球大学大学院医学研究科助教
    2018年 琉球大学大学院医学研究科教授

  • 助教: 深沢真希    
  • 特命助教: 川上由香
  • 助教: 池松夏紀

研究概要:

(1)海洋法医学的研究

沖縄県は熱帯・亜熱帯の海に囲まれていることから多くのマリンスポーツやマリンレジャーが盛んに行われている。マリンレジャーに関連して死亡事故が発生した場合,死因や事故の原因を解明することをひとつの目的として法医解剖が施行される。一方,それら多くの症例を集積して,法医学的見地から解析を行うことで事故防止に寄与することも重要な任務であると考えている。これまで本講座において取り扱ったスキューバダイビング関連の剖検例について検討を行ったところ,近年になって高齢者の初心者ダイバーの死亡事故が増加傾向にあることが明らかになった。また,スクリュー損傷やサメによる損傷についての報告も行っている。一方,減圧症の動物実験モデルを作製して,加圧・減圧が生体あるいは死体現象に与える影響についての研究をすすめている。

(2)局所陰圧負荷に関する法医学的研究

ダムの取水口に上肢を吸引されて死亡した症例を経験し,現在,その死のメカニズムを明らかにするために動物実験モデルを作製して研究を行っている。研究の第一段階としてラットの下肢に強い陰圧を負荷したところ,30分程度の短い陰圧負荷にもかかわらず組織学的に筋細胞に変性が確認された。一般に,虚血による筋変性が組織学的に確認されるのは1時間程度以降であるとされており,虚血モデルに比較して陰圧負荷モデルにおいて早期から組織学的変化が認められた理由として,陰圧そのものが直接的に筋細胞に傷害を与えている可能性が考えられる。今後は,局所への陰圧負荷が循環動態に与える影響について研究をすすめていく。

(3)薬毒物およびその代謝物の定量分析法の開発とその応用

生体試料中の薬毒物を定量的に分析することは,中毒死例における死因の解明や中毒患者に対する治療方針の決定などに関して必要不可欠なものである。これまで,生体試料中の薬毒物やその代謝物の簡易で迅速な定量分析法を開発し,実際例に応用するとともに,それらの体内動態や体内分布について動物実験にて検討を行なってきた。また,代謝や死後分解などによって産生された化合物の生成メカニズムの解明も行ってきた.今後これらのことを継続し,データの蓄積を行なうとともに最新の分析機器である高速液体クロマトグラフ‐質量分析計やガスクロマトグラフ‐質量分析計,キャピラリー電気泳動‐質量分析計などを用いて,より高感度で信頼できる分析法を開発し,実際例に応用することを検討する。

(4)法医病理学的研究

法医学においては,様々な背景を持った症例に対して正確な死因判断を行うための幅広い研究が必要であると同時に,個々の症例について詳細な分析や検討を行うことが求められている。そのために自ら経験した特異な症例について報告することは重要であると考えており,必要に応じて専門家の助言を受けながら積極的に症例報告を行っている。

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