ガーナでのブルーリ潰瘍やハンセン病に対する医療介入の活動開始報告
皮膚病態制御学講座の大学院生の大嶺卓也と申します。ガーナでの皮膚科診療活動についてご紹介します。
私の所属する皮膚病態制御学講座では、本年より日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて、帝京大学、国立感染症研究所、杏林大学形成外科と共同で、西アフリカでの「顧みられない熱帯病」の調査・研究を開始しました。
「顧みられない熱帯病」とは、「人類の中で制圧しなければならない熱帯病」の中でも、先進国の対応が不十分な18の疾患をWHOが提唱し支援を求めている疾患群です。我々はブルーリ潰瘍という抗酸菌感染症に重点を置いて臨床協力しています。
今回開始時の派遣では、ガーナ政府やWHO、日本大使館やJICAなど行政側担当官との面談や、野口英世記念研究所やパスツール研究所との連携連絡とともに、医療者サイドである現地の実際のブルーリ潰瘍クリニック等を訪問し、実際の患者の診察を行い、ガーナでの現状の把握に努めました。
このブルーリ潰瘍は、抗酸菌の一種であるマイコバクテリウム・アルサランスによる感染症で、菌が産生するマイコラクトンという抗炎症性の毒素により、大きな皮膚潰瘍を生じます。治療には抗菌薬の長期投与に加えて、植皮手術を含めた総合的な創傷治療が必要となります。
都市部より離れた僻地の集落では、マンパワーや医療資源が限られており、定期的な通院が行えない患者さんも多くいました。我々のプロジェクトでは、このような現状において、現地で自立し、持続可能な安価な診断アルゴリズムの提唱、日本からの遠隔診療によるアドバイス可能なデバイスの開発とともに、最適化した治療プロトコールの提案やなどを求められており、今後の4年間の研究期間を見据えチーム内で議論しているところです。
当プロジェクト以外にも、琉球大学皮膚病態制御学講座では、琉球列島に特有な皮膚疾患や熱帯・亜熱帯地域に起因する皮膚疾患の診療や研究を多く行っております。
皮膚科医になった頃は、まさかこんなに沖縄の離島や世界中を飛び回る生活を送るとは思っていませんでした。