研究概要

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研究概要:

(1)海洋法医学的研究

沖縄県は熱帯・亜熱帯の海に囲まれていることから多くのマリンスポーツやマリンレジャーが盛んに行われている。マリンレジャーに関連して死亡事故が発生した場合,死因や事故の原因を解明することをひとつの目的として法医解剖が施行される。一方,それら多くの症例を集積して,法医学的見地から解析を行うことで事故防止に寄与することも重要な任務であると考えている。これまで本講座において取り扱ったスキューバダイビング関連の剖検例について検討を行ったところ,近年になって高齢者の初心者ダイバーの死亡事故が増加傾向にあることが明らかになった。また,スクリュー損傷やサメによる損傷についての報告も行っている。一方,減圧症の動物実験モデルを作製して,加圧・減圧が生体あるいは死体現象に与える影響についての研究をすすめている。

(2)局所陰圧負荷に関する法医学的研究

ダムの取水口に上肢を吸引されて死亡した症例を経験し,現在,その死のメカニズムを明らかにするために動物実験モデルを作製して研究を行っている。研究の第一段階としてラットの下肢に強い陰圧を負荷したところ,30分程度の短い陰圧負荷にもかかわらず組織学的に筋細胞に変性が確認された。一般に,虚血による筋変性が組織学的に確認されるのは1時間程度以降であるとされており,虚血モデルに比較して陰圧負荷モデルにおいて早期から組織学的変化が認められた理由として,陰圧そのものが直接的に筋細胞に傷害を与えている可能性が考えられる。今後は,局所への陰圧負荷が循環動態に与える影響について研究をすすめていく。

(3)薬毒物およびその代謝物の定量分析法の開発とその応用

生体試料中の薬毒物を定量的に分析することは,中毒死例における死因の解明や中毒患者に対する治療方針の決定などに関して必要不可欠なものである。これまで,生体試料中の薬毒物やその代謝物の簡易で迅速な定量分析法を開発し,実際例に応用するとともに,それらの体内動態や体内分布について動物実験にて検討を行なってきた。また,代謝や死後分解などによって産生された化合物の生成メカニズムの解明も行ってきた.今後これらのことを継続し,データの蓄積を行なうとともに最新の分析機器である高速液体クロマトグラフ‐質量分析計やガスクロマトグラフ‐質量分析計,キャピラリー電気泳動‐質量分析計などを用いて,より高感度で信頼できる分析法を開発し,実際例に応用することを検討する。

(4)法医病理学的研究

法医学においては,様々な背景を持った症例に対して正確な死因判断を行うための幅広い研究が必要であると同時に,個々の症例について詳細な分析や検討を行うことが求められている。そのために自ら経験した特異な症例について報告することは重要であると考えており,必要に応じて専門家の助言を受けながら積極的に症例報告を行っている。


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